第89話 四章 過去を読み取る者
エマは深いため息をつく。
灰皿にある吸い殻にも手を伸ばした。
ヴィジョンを用いて思念を読み取る。
湿った空気。
地下。
男は鎖に繋いだエレーナを見下ろしていた。
憐れなエレーナは涙に濡れている。
他の半獣人の居場所を知っているのかと男は尋ねた。
エレーナが恐怖に震えながらも知らないと答えた。
男はエレーナを殴り、毛をむしり、愉悦に顔をゆがめながら他の半獣人(デパエワール)の居場所を吐くよう脅し続ける。
男は煙草を灰皿に落とす。
言いたくないなら言わなくてもいいと言った。
ただ、言うまで拷問は止めないと言った。
最後まで口を割らなくても、楽しめればそれで良いのだと。
それからもエマは机に置かれたいくつかの物から思念を読み取った。
壁にかけられたままの帽子を最後に椅子に大きく寄りかかる。
「エレーナが見えたわ。
拷問にかけられてひどくおびえていたわ。
でもそれが逃げる前だったのかあとだったのかはわからない。
他の子の行方も。
とにかく、ハンターの普段の行動は読み取れたわ。
後は本人の口から吐かせましょう」
ラファエルは目を丸くした。
「えっ?
ハンターに会うの?」
「奴は放っておいてはいけない類の輩よ。
自分の犯した殺人を私たちになすりつけて報酬を得ている。
彼にとって殺人は快楽なの。
半獣人というのは格好の隠れ蓑(スケープゴート)なのよ」
「でもどうやって?」
「難しいことではないわ。
言ったでしょ。
行動パターンは読み取ったって」
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