第59話 三章 懺悔

「マリーさん、

マリアンヌさんの羽を……売りました」


「どこに?」


「町外れの質屋です」


「何度行った?

 幾らで売れた?」


「憶えてません。

十回以上は行きました。

値段はまちまちです。

最初は安かった。

でも何度か通ううちに高値で買い取ってくれるようになって……」


「一番高くて幾らで売れた?」


「四百フランくらい」


支配人(ミステル)や男たちの目の色が変わった。


「これで母さんにお金を送って貰えますか?」


「おい、ニセ女優(エトワール)をすぐに連れてこい」


 支配人(ミステル)は厳しい声に戻って男に声を掛けた。


「やめっ、マリアンヌさんは悪くないから。

 悪いのは僕だから、どうかやめてくださいっ」


「それで飛べなかったのか、あの小娘め。儂を舐めおって」


「僕がいけなかったんです」


必死に取りすがろうとするラファエルを支配人(ミステル)は突き飛ばした。


椅子ごと床にひっくり返る。


「お前も商品を台無しにしおって」


支配人(ミステル)はラファエルを何度も蹴りつける。


「ごめんなさいっ、ごめんなさい!

 お願いしますっ。マリアンヌさんには何もしないで下さいっ」


「うるせえ」


男がラファエルの後頭部を蹴り上げた。


まともに受けてラファエルは意識が飛んだ。

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