第16話





 四月八日、灌仏会かんぶつえ

 

 お釈迦様が生まれたこの日を新暦で祝うのは日本人だけのようだが、訪れた寺には思いのほか人影もまばらで、それでも今年はタイミングが良かったのだろう小さな薄桃色の花びらが石盥いしだらい水面みなもに慎ましやかに浮かんでいる。

 なんだか微笑ましかった。日本人は本当にこの花が好きだ。


 桜前線は義理堅く期待を裏切らない。本当に今日は暖かくて、お日様は久しく忘れていたぬるま湯みたいな萱草色かんぞういろ天光てんこうを届けてくれる。

 余りの陽気に、静乃しずのの口元から天真爛漫、あくびが漏れた。



 梯子はしご酒ならぬ梯子寺。観光がてら足を伸ばし先ほどよりも大きめの寺に行く。

 そこには人がそこそこにいて、名も知らぬ大輪の赤花がたくさん手向けられていた。

 なんという花だろう? 名前を知りたいが皆なかなかに忙しそうで、和尚さんの講話を聞いて知らずに帰ろうと思う。美しければそれでいい。



 帰り際、川沿いを眺めながら長々と歩く。流石に汗ばんで、化繊のブラウスがペトペト肌に纏わり付き、デザインはお気に入りだが早く脱いでしまいたい。

 Amazonアマゾンで買ったペットキャリーも思いのほか重くて、持ち運ぶのに難儀した。

 ああ、早く家に帰りたい。それでも2時間ほど時間を潰すべく、この辺りには一軒しかない、小さな喫茶店に入った。

 とても朗らかな奥さんがやっている店の、いつもとは違うテーブルに座る。

 奥さんは、誰に対しても、朗らかだった。


 自宅に辿り着き、鍵を開け玄関に立つと据えた匂いと混在する懐かしい香り。

 そして思わぬプレゼントがあった。期待していなかっただけにとても嬉しい。

 目盛りを見れば灯油がほぼ満杯になっている。(やったぁ、お風呂に入れる)


 そのままその場で真っ裸になり、着ていた洋服は丸めて投げた。

 お湯が貯まるまでは少々寒いが、もう身につけてはいたくない。



 (ざばーーん)

 湯船に浸かり、透明のお湯を掬い、先ほどの喫茶店の状況を思い出す。

 もしも気付かれてしまったのなら、私は奥さんを殺していただろうか? いや、恐らくそうはしなかったろう。殺すには明確な根拠がいる。衝動、それが私の中に存在していたとしてもそれが理由もなく自分の都合だけで発動されたのなら、その衝動はやがてきっと自分に跳ね返ってくる。我が身への殺人衝動、つまり、自殺という形で。


 奥さんの挙動からして今回も完璧だと言える。身長は2センチほど嵩上げしたが、一月の間、毎日通った店で同一人物だとは認識されなかった。


 湯上がり、プシュ いつもの自販機で買って置いたいつものジュースで喉を潤す。見回せば、一階の部屋はどこも酷い有様だった。

 でも幸いなことに男達に変態趣味はなかったのだろう。目的はあくまで消えた人間を探すことであってタンスも引き出されてはいるが手を入れた形跡はない。

 下着は洗って仕舞われた……そのときのまま。


 ピンクのTバックを選び身につける間も、観察を続ける。

 テレビが粉々と言うよりも、綺麗に分解されていた。

 人を探していたヤクザたちが、これほど念入りにテレビを壊す事由はない。

 なぜ「物がなくて寒々しいから」と、強固に主張したのかも納得ができた。






 理解した……ここに戻ってきた甲斐があった。






 思い出の中の金属の板、あんな物に意味はない。少なくとも私は興味がない。

 重要なのは、  ”それ以外、何も埋まっていなかった” と言う事実。




 下着姿のまま階段をあがる。この家の階段は急な上に、二度も折れ曲がっていて、まさか福島名物栄螺堂さざえどうを気取ったワケでもあるまいに、……まともな庭さえない奇妙な作りで、不動産屋の言い値半分でも高い買い物だったのかもしれない。  

 元は取ったけれども……それにしても重い。


 二階には物が殆どない。お陰でほぼ荒らされてもいない。洋服も無事。

 カーテンが剥がされた空間は広く感じられ、月光差し込むその部屋の畳の上、どどーん。大の字に寝そべった。

 カリリッ……


 真新しいパッケージを破り、新品のスマートフォンを取り出す。

 12時間連絡がなければ、使っている通信機器はすべて捨てろと男は言った。

 ……その通り、九州に旅行に行くカップルのバックにそれを忍ばせた。


 新着メールなし……

 次のアドレスは打ち合わせ済み。男は連絡ができない状態にある。(あらら)


 優秀な男だったから勿体なくはあるが、そもそも私に近づいたのは何か目論見があったようで……最後まで付き合う必要はない。

 カリリッ……


 気付けば指に血が滲むまで畳を掘っていた。ウンザリする。非力で弱い癖に、後先考えずに行動する。大陸の気性か? こんな性格が、昔から嫌いだった。 






「静乃、でておいで」

 ペットキャリーの封印を解き猫に話しかけた。静乃は物憂げにゆっくりと這いだし前足を突っ張って大きく伸びをしてから昼間と同じように天衣無縫てんいむほう、大きなあくびをする。そして私を無視して、窓に向かい月を眺めた。

 私は窓をそっと開ける。

 あの男が居ない今、私に何かあれば静乃の世話をする人間は居ない。だから、寂しいが、まあ仕方が無い。



 静乃は窓の細道に体を差し入れ、「にゃぁ」一鳴きしてひさしの上に飛び乗った。

 

 茶色や水色に侵食されていた領域線に、休暇を終えたグリーンが帰ってゆく。









 猫とは愛らしい生き物でいて、けろりとして冷徹。

 ずっと一緒に過ごしていたのに、愛着の片鱗さえみせなかった。

 すがすがしいがやはり寂しい。涙がちょっぴり出そうになった。



 さて…………。

 山林健一の事務所で資料を読み込んでも、不思議なことだらけ。

 そもそもなぜ世間では、連続殺人鬼、リー麗華リーホァの話題で持ちきりになっているのか?…………おかしい。


 

 なぜ? 週刊誌ごときが……



 警察が不破弓絵から橘梨花、さらには李麗華へと繋ぐことが出来たのは、私があえて痕跡を残したからだ。工作はそこまで。だからそれ以上の情報があるはずもない。整形手術は万全と慎重を期してのぞみ、不破弓絵と繋がるとは考えられなかった。ではなぜそれが、最初に暴かれた?


 それよりなにより、自分には隣のおじいちゃんを殺した記憶がない。もう一人の私だろうか? だとしてもそれほど重要なことを私に黙っているはずがない。

 しかもこの件に関しては週刊誌の飛ばし記事ではなく、警察の正式発表。

 わけがわらない。謎が多い。わけがわからない。なぞだ。なぞなぞだ。

 ゴォオオーーー

 

 


 六枚もの指名手配写真。警察の分析能力など、いい加減なものだ。

 変態医者は8年前、手ずから作った顔を忘れていた。髪色と演技だけで、男は直ぐ騙される。私は顔を次々に変えたのではない。毎回、元に戻していたのだ。

 出会ったときのままの顔……あの人と会うために。



 柳沢省吾と知り合ったのは、彼が外務省大阪分室にいた頃だった。

 育ちの良い人だから、このままずっと居られるとは思っていなかった。父親に反発しながらその父親が敷いたレールに従っている、その弱さが好きだった。

 人が良くて脳天気で、私の我がままに嫌な顔を一度も見せたことはなかった。

 マンションを私だけの為にリノベーションしてくれたときはプロポーズされるより嬉しかった……


 世間にはなんの興味も持たない、なにもかもに無関心で、自分のことはなにも話さない女。ただ一人の政治家に興味がある、妙ちきりんな栗色髪の女。

 佐藤豊が出ているテレビだけ食い入るように見つめる私を、彼は面白がった。

 …………だから仕事上、知り得た秘密を私に漏らした。


 時が動き出した。私の中で眠っていた時が。

 ただその為に、彼は自身を罰してしまった。


 拷問の最中、彼のことを口走った。私にもまだそんな感情が残っていたのかと驚き、秘密と愛情の吐露は、激しい痛みと屈辱の中で、快楽にかわった。

 

 私はいつも行動を起こしてから後悔をする。私が喋らなければ彼が死ぬことはなかったのか? 親もない下半身の汚れた女に、彼の輝く未来を奪うことなど、許されるはずがなかった。

 ゴォオオーーー





 だとしても私は、その殺人衝動を、まだ自分に向けるわけにはゆかない。

 佐藤豊。おじちゃんを守ること。それは私の一つの贖罪。生きている意味。


 例え私が死んだとしても、保険はかけてある。

 その為に手紙と一緒に、髪の毛を送ったのだ。

 







  今はまだ、桜の季節。

              







           ”” 味覚 ””    








 そのときを待てばよい。もう少しだけ待てばよい。








 ああ、もうひとりの私がやってきた。






         Happy birthday to you  


  Happy birthday to you


    Happy Birthday  dear 省吾



  Happy Birthday   灯油~♪





 ゴォオオォォォォオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――













「パパばっかりずるいやっ!」

 乱暴にドアを閉める息子を怒るでもなく、靖彦は曖昧な独り笑みを浮かべた。


 長期の休みは海外よりも福島に行きたがる、そんなお爺ちゃん子だ。父親だけ何日も帰省していたのだから、むくれるのも無理はなかった。 

 靖彦はでも、追いかけはしなかった。今はそれどころではない。


 リーホァ ”捕捉” の報告が部下から届いた。




 勝利、とまではいかないが、これで圧倒的優位に立ったと確信する。

 恐らくこの一連の全体像をもっとも掌握しているのは、わが警務じんじだ。

 粘り強く、実に粘り強く待った。息を潜め、耐え抜いた部下を抱きしめ褒めたかった。……そうだ、これが我々のやり方だ。


 刑事達は猟犬のように獲物を追う。時に命さえ省みない。実に勇敢だ。しかし、彼らの情熱が発揮されるのは、自らの信念に基づく対象にのみである。

 警備もそう。命令されれば何時間でも行進を続ける。彼らもまた、守る対象の為ならば命を張る。そこに後悔など微塵もない。己の矜持のうえでならば……


 彼らは謂わば、こらえ性のない炭鉱夫なのだ。

 稼ぎは良いが、穴から這い出せば、有り金ぜんぶ、酒と博打で使い果たす。


 組織はそれでは賄えない。情熱が霧散する空しい対象だろうと、命令があろうがなかろうが、徒労に終わるべきことを強く望み、粘り強く絶えず平静に、休むことなく、来る日も来る日も、厭うことなくドブさらいをする。組織にはそんな人間が、絶対に必要なのだ。


 警務はエリートだから、管理するのではない。その日々の屈辱の対価として、情熱を曲げる勇気をして、管理し鳥瞰することを許された組織なのだ。


 父はそのことを一番よく知っているはずだった。


 幼い頃、父はどこか冷たい存在だった。孫を溺愛する今の姿を見るたび、淡い嫉妬を覚えるほどに。ただ同じ立場になり、今ならば理解することができる。

 父は張り詰めていた。何者にも隙を見せられないプレッシャーの中で……


 そんな人間が上層部への報告を怠った。一人の男に狂わされた。甘い。




 一般の国民に警察庁警備局は何かと尋ねたら、機動隊だと答えるだろう。誰もそこに日本の公安部門、その99%が含まれているとは考えもしない。

 国家体制を脅かす事案、スパイ、国際テロリズム、右翼、左翼、市民団体、宗教、暴力団、社会主義、共産、セクト、マスコミ、一般政党、中央省庁、自衛隊etc.etc.etc.etc.etc.etc. ――さらには、同僚の公安警察官そのものを――

 必要とあらば、彼らはそのすべてを丸裸にする。事件性に関わりなく、事件に対応するのでもなく………………事件化するのだ。


 彼らに狙われたら誰であろうと逃れられない。どのような組織も、秘密を隠し通せない。想像できるだろうか? そんな組織を唯一人の人間が牛耳る怖さを。



 ひぐらしという男を知れば、警察の人間なら誰しも一度は惚れるだろう。

 彼の捜査記録は一つの美しい物語だ。気持ちはよく分かる。自分もそう。

 だがそれは、一種の熱病。目先の正義感に踊っては、この国は守れない。


 

 あなたは、警務は何もしなかったと言った……違う! 動けなかったわけでも、警視庁公安部に汚染されたのでもない! 私の命令で動かなかったのだ!  

 ……たとえあなたが殺されたとしても……


 グラスの中はいつのまにか空だった。いつからか思考は自分自身を説得しようと試みている。バーボンを注ぐが、氷は残り僅かで、取りに行く気力はない。

 もっと強くならなければ……本当に大切なものは守れない。




 あなたを徹底的に利用する。


 あなたは年老いた。武闘派だと思われがちではあるが、本来は沈着な頭脳派のあなたが何をしようと企んだとしても、死人になって警視総監の拉致など正気の沙汰ではない。だが……その提案に敢えて乗った。今の自分にはどうすることもできない事象があるからだ………………モンスターの処遇。


 日本の警察において、警備部門と統合統治されていない公安部門、その唯一の例外、首都を管轄する警視庁公安部。彼らには特権が与えられている。

 殺人を犯したであろう彼を誰がどう裁く? 彼は間違いなく命令で動いた。では警視庁に引き渡すのか? 無駄だ。そのトップである警視総監でさえ、その実態は知らされていない。氷山の一角、目に見える部分の下に、どれだけの規模で、どこから資金が流れ、なんの目的で動いているのか……誰にもわからない。

 ならば、殺すか?  


 だから、総監を警備するSPの手配だけはやった……但し、そこまで。

 どのような方法にせよ、少なくとも官僚には思いもつかない叩き上げのIdeeイデーがそこにあるはずだ。そしてそれは警察官僚のあずかり知らぬ、こと。

 万が一、失敗すれば…………あなたに全責任を負って貰う!









氷はやはり取りに行くことにした。正しいと信じながら慚愧に押しつぶされそうだった。これではいけない。自分は警察官僚として、この国を守らねばならぬ。

 Smokyスモーキー-flavorフレイバーが鼻を突く。部屋に鍵をかけた。これほどに酔っているところを家族にも見せるわけにはいかない。



 かつて生涯定住することなく山間部を流浪する集団がいた。現在その認識は、適当に翻訳された海外小説みたいに曖昧に過ぎて、彼らが単なる非定住民であったのか、犯罪者集団であったのか、もはや検証の余地がない。そのような集団は全国各地にいたようで、最初に存在が文献に出てくるのは江戸時代後期、今の広島県北部地域。

 山の民、山窩と呼ばれたその集団は1920~40年代、日本の近代化と共にその存在ごと近隣の集落に吸収されていった。有識者は誰も口にしない、日本の歴史上に残されたミステリー。


 集団は独自の言語と難字なんじを持ち、狩猟や木の実などの採集、竹細工などの加工物を米などと交換することで生きていた。その行動範囲は広く、聞けばおよそ信じられない程の距離、だったと言う。

 様々な切れ切れの逸話はあるが、その全容は今も知れない。ただ判ったのは、秋田の飛び地にその集団が囲われ、呪われた村が作られたという、現実。

 当時の軍部、政府中枢、財閥の思惑、可能性はあるが特定は出来ない。


 最低限度の日本語のコミュニケ―ション能力すらない人間を集めて、隔離し、恐らくは徹底的なスパイ教育、もしくは過剰なる戦闘員教育が行われた。

 まだ無限の可能性を秘めた子供達にである。


 佐藤豊……御手洗和夫……リー・リーホァの養父母がそこに含まれる。


 新興宗教の教祖である伊佐見功の話によれば、その中の一人が中国人の実子として海を渡った。まだ中国が国民党によって支配されていた時代である。

       (混乱している。もう一度繰り返そう)

 一人の優秀な少年がいた。彼は特別に先んじて海を渡った。程なく、その村は見捨てられることとなる。戦後、権力を握っていた政府関係者、軍人達の多くは戦犯として裁かれることになるが、それとの因果関係もまた憶測でしかない。


 白川拓馬。それが即ち、麗華の父   リー学良シュエリャン



 暖房が効きすぎたのか、話の組み立てが思うようにゆかない。

 グラスの水滴の汗が、靖彦の心中を体現している。



 わからない……不破芳男が精神科医から入手したマークは中国国民党の党旗、青天白日満地紅旗せいてんはくじつまんちこうき

 国民党は1949年、内戦に敗れ台湾に逃げ延び遷都するまで中国本土を支配していた。その後、中国は共産党が支配することとなる。

 所謂、ふたつの中国。

 

 中国国籍の貿易商として日本に来た学良が、国民党を崇拝していたとすれば、それは……台湾からのスパイ。幼いリーホァの記憶に残る程それが身近にあったのならばその信憑性は高いと、推測される。



 つまり、学良シュエリャン殺害で一番可能性があるのは……共産党からの刺客。

 即ち、二十年前の殺害事件に佐藤豊の関与はなかったのではないか?



 わからない……ならどうして佐藤は要塞に立て籠もる? なぜ機動隊に守らせている? まさか或る意味、被差別集団だった過去を奴は恐れているのか? だからあんな寄せ書きのプレートを奪還しようと? なぜだ? 何を恐れている?






 家族はみな眠ったのだろう、静けさが痛いくらいだ。そっと窓を開け、冷たい空気に心を触れさせる。この事件を掌握しているつもりが、混乱するばかり。

 しかし切り札はリーホァだけではない。ここからが、警務の本領発揮だ。


 ……ファイルの中に一匹の人物が居る。

 勤続年数25年。仕事ぶりは優秀で、上司、部下、同僚の信望、ともに厚く、家庭も円満である。この人物は福島県警、副本部長の依頼を受け呉市にある精神科医を同僚と調査訪問した後も長期間に渡り独自調査を続けている。刑事部への一切の報告無しで……そして、


 靖彦はファイルのページを捲った。


 呉署からの有志と偽り、架空の金品を村上喜一郎氏に手渡したうえで、李麗華の養父母殺害事件の捜査状況において嘘の情報を流した。呉市に公安警察の網が掛かり危険であると初期段階で同氏に進言し信じ込ませたのもこの人物である。


「なめんじゃねぇぞ、糞が」

 靖彦はファイルを叩きつけた。


 既にこの人物の動向は中国管区警察局によって徹底的にマークされている。

 鼻の穴に指を突っ込んだ回数まで、こちらに報告が入る。

 識別した銀行口座に動きはないから金は直接、依頼者から受け取っている。

 次にこの人物が動いたら、そこが突破口になる。これが……警務の仕事だ。



 靖彦はまっすぐな心の平静を取り戻そうとしていた。

 目の前の仕事に邁進することで、迷いを断ち切ろうとしていた。だが、




 (ピ―――――ン)部下からの報告メールが届く。






――――――――――――――――――――――――




 報告。

 ○○○、○○○○○○○、○○。○○○○○




――――――――――――――――――――――――






 靖彦は驚愕し、だが既に泥酔していた。だから叫び声にしかならなかった。



「あああぁあああの人の、ああああああああaあああっあああああぅあああぁsあぁぁぁぁぁああああああ村上喜一郎のぁあああああああああaああああああ狙いはぁああああぁああこれだったのか?ああああああひぐらしをあああああヒグラシをああああまくぁあああああああ甘く見ていたっ!ぁぁぁあああああああああああああぁぁぁあああああぁあああぁぁぁっぁああああああああああっっ」


 

 


 

 

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