主人公である『運び屋』ヴィクターが、都市アグアノスを拠点として野を越え山を越え、依頼された荷を人々や場所に紆余曲折を経て運んでいく物語です。
単純かと思いきやそうではない。護衛や出会いによって繋がる、『縁』というものを強く感じさせられるのです。
人々ってこうやって繋がっていくんだな、とか、こんな出会いも起きるんだ、という些細ながらも大事な部分を思い出させてくれました。
そこにはきっとヴィクターのもつ豪運もあるのでしょうが、しかし物語はかくあるべし、と思わされます。
ヴィクターを中心に広がる繋がりもさることながら、背景に描かれる世界観も秀逸です。
文化があり、国があり、住まう土地があり、そしてそれらはゴブリンやオークといったファンタジーならではの種族にも存在している。そんな当たり前をやはり再認識させてくれました。
その他にも加護といった要素もチラリと見受けられ、興味深くて仕方ありません。
広大な世界とその世界を歩いて縁を広げるヴィクターの旅路、オススメです。
運び屋の物語、というのが数え切れないほどの魅力を生み出すことに成功していて、すごく面白い作品です。
エルフなどが登場し、剣や槍などを持つタイプのファンタジーですが、主題はあくまで荷物を運ぶこと。
主人公が運び屋であることの最大の魅力は、その時々で味方が変わること。
荷物を運ぶのでどんどん移動していきます。
移動する先で協力してくれる人がいて、だけどその人たちはずっと付いてきてくれるわけじゃない。
だからまた次の場所で新しい誰かと出会う。
誰か一人のキャラを好きになるタイプの人には寂しいことかもしれませんが、
たくさんの出会いは、この作品の世界がどういう姿をしているのか知ることにつながって、「こんな人たちが生きている世界なんだなあ」と感じるのがとても気持ちいいです。
女性キャラクターの美しさや可愛さが描写されることが多いのですが、男性陣も粒ぞろいで素敵です。
主人公のヴィクター君とかめちゃ可愛いです。
新しい場所の描写によってそれぞれの文化が伝わってくるところも嬉しく、おかげでこの作品の世界に没入できます。
戦闘は時々ある程度。そしてその戦闘で勝って成り立つお話でもないので、ぼろぼろになりながら前進していくこともあり刺激的です。
既に第一章が完結していて話に一段落ついているので、
これから読み始めるという人もきりのいいところまで読めて安心だと思います。