概要
私は、偽物だった。私の思い出は、本物だった。
ギルドのみんなが知っている「ノブさん」は、四十五歳の会社員。面倒見がよくて、奥さんに頭が上がらなくて、マイクは七年前から壊れている。
中身は、娘の私だ。
中一のとき、父が一週間でやめたネトゲのアカウントを見つけて、こっそり続けた。それから七年。ゲームは今夜、サービスを終える。
「最後くらい、ノブさんの声を聞かせて」
ボイチャまで、あと一時間。私は、居間で野球を見ている本物のノブに頭を下げた。
棒読みの父と、カンペを掲げる私。最後の夜の二人羽織が始まる。
KOC2026秋 お題「偽物」参加作。
中身は、娘の私だ。
中一のとき、父が一週間でやめたネトゲのアカウントを見つけて、こっそり続けた。それから七年。ゲームは今夜、サービスを終える。
「最後くらい、ノブさんの声を聞かせて」
ボイチャまで、あと一時間。私は、居間で野球を見ている本物のノブに頭を下げた。
棒読みの父と、カンペを掲げる私。最後の夜の二人羽織が始まる。
KOC2026秋 お題「偽物」参加作。