第7話
中学の教室には、少し派手な女子グループもいた。
椎名奏多の方を、時々ちらっと見てくる。
敵意というよりは、「新しく入ってきた目立つ子を見てる」みたいな、軽い興味や噂の延長のような視線だった。
「なんかあの子かっこよくない?」
そんな空気が、ところどころに混ざっている。
月島りつは、その中で少しだけ浮いていた。
岡山から引っ越してきたあの子。
自己紹介の時も岡山弁が少し混ざっていて、静かで短かった。
それ以来、ほとんど誰とも話していない。
休み時間はずっと一人でノートに絵を描いている。
藤崎駆は、そんなりつのことを時々気にしていた。
「なんであの子1人なんやろ?」
深く考えているわけじゃない。ただ思ったことをそのまま口にしているだけだった。
そして放課後。
「なあ奏多、部活どこ入るん?」
「まだ決めてないけど」
「じゃあ陸上部いこや!走るの楽しいで!」
駆はいつも通り、迷いなく話を進める。
「俺も入るし、奏多も来い!」
勢いそのままに押し切るみたいにして、二人は陸上部に入ることになった。
部活が始まってから、二人はそれぞれ違う種目に分かれた。
椎名奏多は長距離走。
藤崎駆は短距離走。
同じ陸上部でも、走る距離も、見ている景色も違う。
走っている間だけは、妙に静かだった。
風の音と、自分の呼吸だけが聞こえる。
考えごとをしている余裕もないのに、なぜか頭の中は落ち着いていく。
確かに、気持ちよかった。
季節はゴールデンウィークを過ぎていた。
日差しが少し強くなってきて、学校の空気もだんだんと慣れてくる頃だった。
球技大会の日。
男子はグラウンドでソフトボール。
女子は体育館でバレーボール。
いつもの授業とは違う、少しだけざわついた一日。
休憩時間。
「喉乾いたからなんか買ってくるわ、奏多も要る?」
駆が軽い調子で言う。
「スポドリ頼むわ」
「おけ」
藤崎駆はそのまま、体育館裏の自販機の方へ走っていった。
残された空気は、少しだけ静かだった。
「まだかアイツ」
椎名奏多は、体育館裏の方をぼんやり見ていた。
しばらくして、藤崎駆が戻ってくる。
なんか、妙に楽しそうやった。
「遅せぇよ」
そう言うと、駆は笑いながら手を振った。
「わりーわりー」
軽い謝り方のまま、歩きながら続ける。
「いやさっき体育館裏に月島おってん」
「なんかジュース飲んでて、それがな、んふふっ」
途中で思い出し笑いみたいに笑う。
「なんやと思う?」
「なんやねん」
「ぶどうミルクソーダやて」
言った瞬間、また駆は笑った。
「めっちゃ意外やろ」
その笑い方が、やけに軽かった。
でも同時に、ちゃんと“面白かった出来事”として残ってる感じがあった。
奏多はそれを聞きながら、特に何も言わなかった。
ただ、少しだけ空気が変わった気がした。
アウトオブレーンの僕は おにぎり @Onigiri_ebimayo
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