概要
トタン屋根に雨の音がパラパラ鳴って、それが新聞紙の砂糖と同じに思えた。
直也のおっちゃんは、判子を彫る。普通の判子なら15分くらい。
こちらは柴田 恭太朗さまの自主企画:三題噺「技」「判」「協調」の参加作品です。
こちらは柴田 恭太朗さまの自主企画:三題噺「技」「判」「協調」の参加作品です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!短い文章に情景と情感が詰まる
一つひとつの場面が丁寧に描写された掌編。名前を彫る人とは、はんこ屋さんのことである。物語は主人公の少女が同級生の家にプリントを届けに行くよう先生に頼まれる場面から始まる。同級生の家である「はんこ屋サトウ」が所在する商店街の様子や、同級生宅で濃いカルピスでもてなされ、窓辺から通りを見下ろしてリコーダーを吹く主人公の姿など、短い文章に情景がよく詰め込まれている。はんこ屋のおっちゃんが判子を彫る手仕事も、ほんの数行の描写なのに目に浮かぶようだ。
そして物語の後半、授業参観日にやってきたはんこ屋のおっちゃんに悲しい思いをさせまいと、主人公が取った行動がまた心を刺す。小学生にできる精一杯の自己犠牲…続きを読む - ★★★ Excellent!!!名前を彫る手仕事から、人を見つめる心へ。
『名前を彫る人』は、マーケットの奥にある判子屋さんを舞台に、ひとりの子どもが身近な人を見つめる、全一話の現代ドラマやで。
学校を休んだ直也にプリントを届けるため、真奈は店を訪ねる。そこで出会うのは、判子を彫るおっちゃんと、手仕事の面白さやね。小さな文字が形になっていく様子を、真奈と一緒にのぞいてるような楽しさがあるんよ。
甘い飲み物、店先のケース、雨の当たる屋根。そんな暮らしの細部が、説明より先に人と場所へ親しませてくれる。ウチが惹かれたんは、子どもに見えてるものを、背伸びした言葉で包まへんところやね。
本文は約千六百字。短い場面の積み重ねから、誰かを知ることの温かさと、簡単には言葉に…続きを読む