概要
どうぞ。一件ずつ、お相手いたします
「女に家督は継げない。父上の書き損じだ」
父の葬儀の翌朝、遺言状の封が切られた。当主の欄にあったのは、三人の兄の誰の名でもない。末娘リスベート、私の名前だった。
長兄ディートヘルムが声を上げて笑い、三兄ラドルフがそれに続く。優しく言ったのは、叔父ヒエロニムスだけだ。
「形だけでいい。実務は私が見てやろう」
けれど、父の名で出た手紙と証文を十年書いてきたのは、書記を務めた私だ。港の荷の出入りも、取引先の奥方の誕生日も、兄が隠した借金の額も、全部覚えている。
家督の相続は、一年のうちに王の承認を受けなければ無効になる。兄たちは、その一年で私を当主の椅子から引きずり下ろすつもりらしい。
家宝の馬を売られ、使用人を引き抜かれ、五十歳の男爵との縁談を押しつけられる。面白いほうに付くと笑う祖
父の葬儀の翌朝、遺言状の封が切られた。当主の欄にあったのは、三人の兄の誰の名でもない。末娘リスベート、私の名前だった。
長兄ディートヘルムが声を上げて笑い、三兄ラドルフがそれに続く。優しく言ったのは、叔父ヒエロニムスだけだ。
「形だけでいい。実務は私が見てやろう」
けれど、父の名で出た手紙と証文を十年書いてきたのは、書記を務めた私だ。港の荷の出入りも、取引先の奥方の誕生日も、兄が隠した借金の額も、全部覚えている。
家督の相続は、一年のうちに王の承認を受けなければ無効になる。兄たちは、その一年で私を当主の椅子から引きずり下ろすつもりらしい。
家宝の馬を売られ、使用人を引き抜かれ、五十歳の男爵との縁談を押しつけられる。面白いほうに付くと笑う祖
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