概要
判は押した。でも今日は、初デートをやり直す日だから
結婚五年目の九月二十一日、俺は妻に離婚届を渡した。妻がロンドン赴任の打診を「主人がいるので」と断る声を、聞いてしまったからだ。俺と別れれば、妻は行ける。
妻は三分で判を押した。そして言った。「受理は一年後。来年の九月二十二日」
九月二十二日は、八年前、大学の体育館裏で妻が俺に告白した日だ。「それまでに、付き合った頃の一年を、日付どおりにもう一回やる。台詞は私が八年前のとおりに言う。返事は、今のあなたで」
翌日、体育館裏で妻は八年前と同じ声で言った。「桐谷くん。私と、付き合ってください」
初デート、初めて手を繋いだ日、初めてのケンカ。妻は記念日を一つずつやり直しながら、理由を一つも言わない。離婚届は妻の鞄の中にある。一年後まで、俺たちはまだ夫婦だ。
妻は三分で判を押した。そして言った。「受理は一年後。来年の九月二十二日」
九月二十二日は、八年前、大学の体育館裏で妻が俺に告白した日だ。「それまでに、付き合った頃の一年を、日付どおりにもう一回やる。台詞は私が八年前のとおりに言う。返事は、今のあなたで」
翌日、体育館裏で妻は八年前と同じ声で言った。「桐谷くん。私と、付き合ってください」
初デート、初めて手を繋いだ日、初めてのケンカ。妻は記念日を一つずつやり直しながら、理由を一つも言わない。離婚届は妻の鞄の中にある。一年後まで、俺たちはまだ夫婦だ。
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