※2025/12/05 全体公開にしました
こんにちは。ハロウィンに何かしら「よみごさんシリーズ」に関する小噺をアップしたかったのですが、思いつかなかったので遅くなってしまいました。
遅ればせながらちょっとした話を載せます。なお、一か月くらい経ったら全体公開にさせていただく予定です。よろしくお願いいたします。
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「そういえばこないだのハロウィンの夜、ここに白いワンピースの女いたよね。黒木くん知ってた?」
マンションの入り口でそう問われて、黒木は思わず足を止めた。幸い彼が住んでいるマンションではなく、勤務先であるところの「サンパルト境町」の話である。
不穏な質問をした志朗はなぜかニヤニヤしている。だからあまり深刻な話ではないだろう――とメタ読みをして、黒木はあることを思い出した。
「……それって、髪の長い女の人ですか? ノースリーブの?」
「そうそう、ホラー映画のテンプレみたいな黒髪ロング白ワンピ。やっぱり黒木くんも気づいてた?」
「気づいてましたけど、それ幽霊じゃなくて管理会社の方じゃないですか? ハロウィンのイベントしてたから」
黒木はホッとして笑い返した。
子持ち世帯が多く入居する「サンパルト境町」では、ハロウィン当日に管理会社主催のイベントが行われていた。カボチャの着ぐるみを着た管理人の二階堂が小学生にタックルされたりしていたが、ほかにも仮装をした大人が何人かいて、お菓子や風船を配っていた。
むろん、志朗がそれを知らないわけはない。白ワンピが仮装した人間だとわかっているから、ニヤニヤしながら尋ねるのだろう。
「怖い話かと思ったじゃないですか。志朗さん、不穏な聞き方しないでくださいよ」
「いやいや、白ワンピはオバケだって」
「いやいやいや、仮装でしょ?」
「いやいやいやいや、あいつボクに『見えた』んだからオバケですよ」
志郎は手に持った白杖をコンコンと鳴らした。
確かに「ホラー映画のテンプレみたいな黒髪ロング白ワンピ」は視覚情報だ――と気づいた黒木の、オートロックを開錠しようとしていた手が思わず止まった。
振り返ると、志朗はやっぱりニヤニヤしている。
「黒木くん、やっぱり霊感強くなってるね! キてるね!」
「なんでちょっと嬉しそうなんですか!?」
なお、白ワンピはその後このマンションの「先住民」を怖がって逃げたので、今はいないとのこと。