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『えっちゃんへ』にいただいた感想と返信(ネタバレ有)

先日、王子@affe さんの自主企画、「【要項必読】評価されるべき作品に、感想爆弾を投下します。」に、

https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054915133470

拙作の『えっちゃんへ』を持って参加させていただきました。王子さん、ありがとうございます!

『えっちゃんへ』はこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897730611


その結果、応援コメントに大変丁寧で熱のある感想と、意義のあるご指摘をいただいたのですが、詳細なコメントとなると、どうしてもある程度のネタバレが必要になってしまいます。

『えっちゃんへ』がミステリーの範囲に入る作品であるため、応援コメントは削除させていただき、ネタバレ用の近況ノートを書くことにしました。

王子さんのコメントへの返信も、こちらでさせていただきます。
これで存分にネタバレできるぞ! やった!


というわけで、まずは王子さんからいただいた応援コメントを、そのままコピペさせていただきます。

前述のとおり『えっちゃんへ』のネタバレを含みますので、気になる方はこの辺りでブラウザバック等していただきますようお願いいたします。



===以下、王子さんからの応援コメントです===

【評価されるべき作品に、感想爆弾を投下します】企画に参加いただきありがとうございます!
 感想爆弾を投下しに参りました。心の準備はいいですか?

 冒頭を読むと「これは感動系の話かな」と思ったのですが、【だって、どうして雨の日にわざわざ、楡の木なんかに登ったのでしょう?】と来たので、「これはミステリな匂いがしますね!!」と立ち上がりました(ミステリ好きです)。と、ここまで書いて、本作のジャンルを確認したらミステリって書いてあるじゃないですか! やったね!(遅い)
 本作全体は、真相の提示が実に巧みで、こちらの予想を次々に裏切り、想像を超えた着地点が用意された、良質なミステリでした。ここ最近で読んだミステリの中でも、指折りのクオリティでした。これはヤバい。ミステリであり、同時にサイコホラーでもある。人間関係ドロッドロで本当にごちそうさまですって感じです(合掌)。

 参加要項にもありますが、感想を語るにあたってネタバレを含みます。ミステリ好きとして、この作品においてネタバレは絶対に避けたいのですが、もうこればかりは仕方ない。
 読者の方々は自衛してください。
 ジュージさんが気になるようでしたら、この文面をどこかにコピペして、速やかに削除していただいても大丈夫です。その場合の返信は、近況ノートか、TwitterのDMにでもいただければ嬉しいです。

 先にも書きましたが、手掛かりや真相の提示が本当に巧みで、手紙形式である利点が最大限に活かされていたと思います。読者としては、えっちゃん目線で読み込むこともできるし、他人に宛てられた手紙を盗み見ているような読み方もできるし、なんにせよ「読み進めていってはまずいものを読んでるな」という気持ちにさせられます。ゾクゾクする。
 本作のすごいところは、犯人の予想が次々に覆されていくところです。個人的な読みですが、まず【あなたのためですよ、えっちゃん】の時点で、えっちゃんが犯人だと思った。【あなたは荒っぽく身支度を整え、寝室を出ていく】の時点で、えっちゃんは現場にいないから犯人ではないと分かり、【敏夫は急いで脚立を持ってきて、雨に濡れるのも構わず、楡の木に登った】と来れば……なるほど、事故死なのだから、あえて言うなら犯人は夫だ(現実的に見れば、これは間違ではない)。事故が起きたのはえっちゃんが指輪を投げたせいですが、犯人の特定には直接関係は無い(えっちゃんには十分なダメージを与えたことでしょう)。というわけで、犯人は夫。木から落下したことが原因なのだから間違いない。実は首を締められていたとか毒をもられていたとかいう展開はあり得ない。ファイナルアンサー、事件はおしまい……と思っていたら、【私が敏夫を発見してから、彼が亡くなるまで、ずっと撮影していた】と独白が始まる。えっちゃんは、敏夫の死に関して全くの部外者であるはずのしのぶが、死を見届けていたのだと知る。否、知ってしまう。知ることはデメリットにもなり得る。えっちゃんもまた敏夫の死を見届けた一人になる。犯人……犯人ってどこまでのことを言うのでしょう。この一連において、犯人はいないとも言えるし、全員が犯人とも言える。この人間模様を作り上げるのがすごい。
 と、これで真相が全て明らかになったわけですが、えっちゃんはDVDを持って警察に駆け込めばいいんじゃない? と思っていたら、まだ話は終わっていなかった。しのぶは用意周到だった。良心と常識的判断に従ってしのぶの罪を告発するか、保身に徹して共犯関係を結ぶかの二択を迫っている。えっちゃんが選ぶのはきっと後者だろう。【親友よりももっと強い絆】……呪いのような関係です。しのぶの家には【出入りの庭師】がいる。裕福な家なのだろう。類友の法則で、おそらく、えっちゃんの家庭も裕福な暮らしをしているのではないか。えっちゃんは家族だけではなく、経済的に安定した生活も失いかねない。えっちゃんと敏夫の関係はもう終わりを迎えていた。敏夫の弔いにと、自分の生活を捨ててまで、しのぶの罪を告発し真相を白日の下に晒す義理があるだろうか。答えは決まっている。(小説としては)良くも(倫理的には)悪くも、全ては丸く収まっている。後味は強烈にビターなのに、ミステリの読後感としては爽快だった。

 以下は、ちょっと気になった点。(「直してね」と押し付けるものではないです)
・【今この手紙を書いているとき、外は雨が降っています】→少し違和感のある日本語でした。「今、外では雨が降っています」ってことだとは思うのですが。
・【私がふたりのことを知っているということに】→【こと】が連続していて読みづらいような。「自分達の関係は見抜かれていると、気付いたのでしょう」とか。
・【警察の人に、「即死ではなかったでしょう」】と言われることってあるのかな……。要するに、「苦しまずに亡くなったわけではありません」と、わざわざ伝えているわけで。【しのぶ】の方から「主人は楽に逝けたのでしょうか」と(演技で)尋ねたとしても、警察は優しさから「即死でしたよ」と言うか、真面目さから事実を濁して「それは分かりませんでした」と言うか……少なくとも「即死ではない」=「すぐに死ねたわけではない」と、あえて伝えるようなことはしないと思います。
 というわけで、「僕が読者として、もしこうなっていたら楽しめる!」という提案を以下に書きますが、「余計なお世話だい!」ということであればスルーしてください。

提案:
 いっそのこと、警察には「即死でした。苦しまずに亡くなられたはずですよ」と言わせてしまって、しのぶの【私は何とも言えない気持ちになりました】をミスリードに使うのはどうでしょうか。この流れなら、「そうか……しのぶにとって、夫が亡くなったのは悲しいけど、苦しまずに亡くなったのはせめてもの救いだな……」と、僕なら読みます。ところがどっこい、しのぶは敏夫が即死では無いと知っていることが明かされます。【私は何とも言えない気持ちになりました】を思い出して、「しのぶが何とも言えない気持ちになったのは、そういうわけだったのか!」と膝を打ちます。そして「夫の死に方に対してではなく、警察に要らぬ気を遣わせたことに対して【何とも言えない気持ち】になったのだろう」と読みます。夫の死には悲しみなど一つもなく、警察に対して「あらあら、ごめんなさいね」程度の気持ちを持っているだけ。サイコ感が増すような気がします。
 ……読者を転がす系のミステリがめっちゃ好きなので、オタク的語りをしてしまう! ロジック考えるの、楽しいですよね。

 プロフィールも拝見しました。ホラーをたくさん書かれているのですね。pixivアカウントがあるぞ……? と覗きに行ってみたら、ハイセンスなイラストがたくさん並んでました……! なんだよー! 天は二物を与えないんじゃないのかー!?
 ちなみに、Twitterの相互さんに漫画やイラストを描いている「いたる(@itamatwo)」さんって方がいらっしゃるんですが、この方も怪談がお好きで、しかも”見える”方なのだそうです。実体験を元にした漫画もありました。

 というわけで、感想爆弾は以上です。
 参加要項にもあるとおり、返信でいろいろ聞かせていただけると幸いです!

===以上===



===以下、ジュージからの返信です===

この度は爆弾投下、本当にありがとうございます!
短編小説レベルの長さのご感想をいただき、喜びに震えております……。

まずは『えっちゃんへ』をお楽しみいただいたこと、また高く評価していただいたこと、大変嬉しいです。
「手紙系」の作品は古今東西にありますが、このスタイルが結構好きで、自分でも挑戦してみたいと思った次第です。
校正のとき、自分では「手紙を出す前に読み返すしのぶ」または「受け取ったえっちゃん」のつもりで読んでいましたが、コメントの通り、どんな立場で読むかは読者の自由ですよね。個人的には、「時を経てえっちゃんが不慮の事故で亡くなり、愛娘が遺品の中からこの手紙を見つける」というシチュエーションがエモいなと思いました。ドロッドロですね……。
また、「実は登場人物たちがちょっとずつ原因を作っていて、最終的に皆に責任があったことが明らかになる」みたいな話にも憧れていたので、『えっちゃんへ』で先人の域に近づくことができていれば嬉しいです。
また、えっちゃんとしのぶの生活水準についても、「出入りの庭師」の辺りで察していただけて、ほっとしております。あからさまな金持ちアピールはしたくないなぁと思いつつ、経済的に豊かな人たちですよと匂わせたかったので、読み取っていただいて嬉しいです。



「ちょっと気になった点」もまとめていただき、ありがとうございます!
自分では見落としてしまったところがあり、とても参考になりました。

・【今この手紙を書いているとき、外は雨が降っています】
言われてみると、なんだか飲み込みにくい日本語かもしれませんね。少し足して、「今この手紙を書いているとき、外では雨が降っています」ではいかがでしょうか?

・【私がふたりのことを知っているということに】→【こと】が連続していて読みづらいような。
おっしゃるとおり! コトコト言うのはシチューだけにしておきたいものです。こういうのは格好よくないですよね。
ご提案のようにするか、原文を残して「私がふたりの関係を知っているということに」などとしたいと思います。

・【警察の人に、「即死ではなかったでしょう」】と言われることってあるのかな……。
これは……! 確かに、よっぽど「本当のことを言ってください!」と問い詰めなければ言われなさそうですね! でもしのぶはやらなさそう……うーん、悩ましい。
ご提案のように、警官が「即死でした」と優しい嘘をつくパターンもありだと思いますが、私は読者に対してちょっとアンフェア過ぎないかな? という気がしてしまいました。でも遺族に対して、「さぞ苦しかったでしょう」ととれるようなことは、言わない方が自然ですよね。
ここは警官には言葉を濁してもらって、「検死をしてみないとわかりませんが、あまり苦しまずにいかれたことと思います」みたいなことを言ってもらい、でもその目はしのぶをまっすぐに見てはいなかった……などの描写を入れるのはいかがでしょうか?
警官の言動としてはあまり不自然でなく、でも読者は「あっ(察し)」となって、アンフェア感も抑えめ、というところに落ち着かないかな? と思うのですが……。
うーん、難しいですね! でも考えるのは楽しい!

本作は、元々賞系の自主企画に向けて書いたものですので、修正はそちらの結果が出てからにしたいと思います。
有意義なご指摘をありがとうございます!



また、pixivの方もご覧いただいたとのこと、ありがとうございます!
まだまだお恥ずかしい画力であります……しかも最近カクヨムの方が楽しくて、絵をあまり描いていないので、下手にならないように気をつけます汗
いたるさんのアカウントも拝見しましたが、実体験漫画、面白かったです! 本人が受け流す感じなのがいいですね笑

この度は熱のこもった感想をいただき、どうもありがとうございました!
楽しく返信させていただきました!

2件のコメント

  • イベントに参加していただいただけでなく、真摯なお返事もいただけて嬉しいです!
    「気になった点」を挙げると大抵の方からはネガティブな返事が返ってくるのですが、建設的に考えていただけて良かったです……(笑)
    ジュージさんの、より納得のいく作品作りに少しでも貢献できていましたら幸いです。
    また、ジュージさんからも、どなたかの作品に率直な感想をお贈りいただければ、企画を立てた意義がありましょう。物書き界隈は、表現手段に文章を選び、文章で伝える中で最適解を考え抜く人達の集まりです。感想を贈り合う輪が広がることを願っています。
    完成度の高い作品での参加と、ジュージさんのご意見をいただけたこと、重ねてお礼申し上げます。
  • 王子さん、コメントありがとうございます!
    まさにこういう「気になったこと」みたいなことを言ってほしかったので、大変有意義でした。もし、作品の意図と滅茶苦茶ズレてるけどその発想はなかったな…みたいなアドバイスがきたら、新しいの書こうと思ってました笑
    私は他人の作への批評(いい意味での)とかアドバイスとかが物凄く苦手でして、「なんか好き~」とか「なんか苦手~」みたいな小学生以下の感想文になってしまいがちなのですが、まずはなるべくレビューコメントを書くところからやってみたいと思います!こちらこそ、重ねてお礼申し上げます。
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