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白川編 第8話あとがき。「文句あんのか水煙。嫌なら他のを探してこい!」

「三都幻妖夜話 白川編」第8話まで公開したところですが、いかがでしたでしょうか。
正式連載スタート後、さっそくお読みくださった方々、ありがとうございました。
長い作品ですので、マイペースにお付き合いただけると嬉しいです。

更新は「夜話」っちゅうくらいですので、夜に読んでいただく想定で、夕方ごろに設定しています。
お仕事終わりの移動中や、家事育児が一段落するお休み前にほっと一息つくタイミングで、息抜きに読んでもらえたらなあと思っています。

なんで息抜きが肌色の怪談なんだよっていう、ね(汗)
内容的に、読んで返ってストレスたまったりしないか心配です。

フィクションでの、ドキドキはらはら、もやもや、ゾーッとは、現実逃避だし癒やされるって作者は思うタイプなんですが、皆様はどうでしょうか? 同じだといいなあ。

さて第8話ですが。(ネタバレを含みます)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884553813/episodes/1177354054884595145

序盤からこっち、ずっと被害者みたいだった朧ちゃんが、8話では「お前も鬼やんけ!」みたいになりますもので、心苦しいです。

でもこれ作品的には大事な場面でして。

白川編は全編が湊川怜司(作中では望月怜司ですが)の独白の形式で、過去の暴露話です。
何のために話してるのかは序盤では謎ですが、身の上話であると同時に、恋バナで、らぶらぶな場面などを見てると、「自慢話なのかな?」と感じる場面もあるんですが、作者的には今現在81話まで書いておりまして、そこまでの全体を通じ、これは「読者様への相談」なのだろうと思います。

怜司は神戸編で語られてるように、ひどい目にあった気の毒なキャラクターですが、本人はどうもその被害は「因果応報だったのではないか」と思っているようです。

何の因果が巡ってきたのかというのが、第8話で登場したような「自分も鬼だった」という事実で。
ひどい目に遭うだけの理由はあった、と怜司は思っているようです。

因果応報などというものは無いというのが作者の考えなんですが、朧はそうは思わないようです。日本に古くからある考え方で、人はそれぞれ自分の罪の報いを受けるのですね。

怜司が、それを読者様に相談したいわけなので、今後ずっと朧ちゃんの罪の告白が延々と続くようなお話です。悪いことばっかりしてるんです。

けど、それを包み隠さず話すというところに、このキャラクターの妙な誠実さがあるように描けていたらいいなあと作者は思っています。

怜司は自分の良いところだけじゃなく、悪いところや弱いところも聞いて受け入れて欲しいというスタンスで物語を語っていて、それがひいては、この作品のテーマでもあります。

三都幻妖夜話の全体に共通のテーマで、「人には良いところも悪いところもあるけど、それ全部を愛してくれる人がいる」というような話です。神戸編のアキちゃんと亨もそんな話でしたよね。

一種の理想論ではありますが、まあ、フィクションですからね?

第8話では、神戸編の重要キャラだった、御神刀の水煙兄さんがやっと登場します。
もー兄さん相変わらず武闘派なんやからー、という登場シーンでした。「アキちゃん、斬れ斬れ」言うてましたね。「それでも秋津の跡取りか!」って、のっけから怒鳴ってますが。

水煙はそういう、「あるべき自分」を暁彦に強要するキャラクターで、物語上の役割としては、朧のアンチテーゼです。真っ向真逆の立場で押してくる人物で、それに対して「ありのままの自分でいいよ」という立場の朧と暁彦を争うことになるわけですが。そのへんは神戸編でもちらっと出てきていた通りです。

アキちゃんは結局、どっちが好きだったんでしょうね?
「ありのままでいいよ」って言ってくれる、優しくて楽しい相手だったのか。
「それでも秋津の跡取りか!」っていう、化けもん丸出しの支配的な宿命の恋人かですね。

その奪い合いの結末は、読者様は神戸編のほうでもうご存知だと思いますが。水煙が勝利するのです。
そりゃまた一体、どういう経緯で? というのが、白川編の物語です。

暁彦は水煙が好きだったのか、嫌いだったのか?
神戸編を見るだけでは、暁彦が水煙とどんな関係だったのか、分かるようで分からないんです。

戦後七十年間も二人きりでいて、あの人ら何もなかったんですかね?
それ以前に今回UPしました第8話の時点でも、暁彦と水煙はどういうご関係なんでしょうか。

朧にはそれが全く分からないんです。
というのは、暁彦は水煙について、朧に一切なにも言わないので、朧は推測するしかないのです。
ということは、読者様にも真相が分からないんですよね。

技術的な話になりますが、白川編のような、主人公の一人称で書いてある小説では、創作の決まりごととして、語り部である人物の知らないことは説明できません。なので、朧が知らないことは、読者様にもお知らせしようがないという問題があります。

けど、どうせ分からないなら、「分からないからこそ面白い」みたいなのにしたいなと作者としては思いまして。
アキちゃんと水煙がどういう関係であったかは全然書いてません。推測してくださいという造りにしました。ヒントはあります、要所要所でいろいろ。

あくまでもメインは朧と暁彦の恋愛ストーリーなんですが、水煙は朧の宿敵みたいな恋敵です。
なぜ宿敵だったのかというのが、白川編の行間にしか書いてない謎の部分に当たる物語なので、皆様もご興味持っていただけるようでしたら、朧ちゃんと同じ目線で、暁彦様はどう思ってるのと疑心暗鬼になって、水煙と暁彦の様子をうかがっていただきたいのです。

私はですね……かなり水煙推しなんですよ。(作者の私情)
皆様はどうですか。水煙はただの宇宙系の怖い人だったでしょうか。
なんかね。不器用でね。可哀想でしょ? 水煙兄さん。ほんまは優しいとこもあるのに、奥ゆかしすぎて全く見えへんしね。誰も水煙兄さんの本当の気持ちを分かってはくれへんのや……。

しょうがないので読者様にわかってもらおう……と作者は願っているのですが。
全編きっちり本人が解説する「朧ちゃんの本当の気持ち」はもう痛いほど分かる予定の物語で、それが白川編の表面です。
水煙と暁彦の物語は、その裏面にあたるストーリーで、行間から読み取って皆様の頭か心の中でぼんやりと像を結ぶような、そこはかとない物語になるかと思います。

ぜひそっちの絵も見ていただきたいので、8話の後書きって中途半端でおかしいですが、文章にしてみました。裏面の物語のほうも走り出す、二回目のプロローグみたいなもんだったからですね。

8話で暁彦は水煙と言い争って、「文句あんのか水煙。嫌なら他のを探してこい!」て怒鳴り返すんですが、水煙にとっても暁彦は唯一無二の代用の利かない人物です。暁彦はそれがわかってるから、他を探せって無理言うんですよね。

めっちゃズルくない? なんてワガママな男! と作者としては思うんですが……。
水煙も朧も、そんな糞みたいな坊々のどこがええんでしょうね?

それについては9話以降の、続きの長い物語で、朧ちゃんからオエってなるぐらいノロケ話が聞けます。坊がカッコよくて可愛い、もう最高、好き好き、愛しゅうてたまらん、もう食いたいみたいな話がここから200万字以上ありますので。すみませんけど読んでやってください。お願いします!!

9話は少し短くて、2ページしかありません。
9−1が、7/16(月・祝)の夕方5時。
9−2が、7/17(火)の同じく夕方5時の自動更新です。
10話は再来週公開となります。

第1話〜第10話までで、第一章にあたるような、大きなまとまりのストーリーになっています。
そこまでが「出会い編」みたいな感じです。まずはどうか10話までお付き合いくださいませ。


「三都幻妖夜話 白川編」(椎堂かおる作)
人は皆、正体を隠して恋はできない。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884553813

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