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哲太と優里亜の新婚生活 その1 家について

 実は一般には知られていないが、C級以上の上級探索者は普通の家で生活するのは結構難しいのだ。

 起きている間はまだいい。手加減すれば物を壊すこともそうないからだ。

 だけど眠っている時など意識がない時、その力加減が効かないとどうなるか。

「……ごめんなさい」
「あー気にすんなよ。わざとじゃないんだし」

 寝相の悪い優里亜が寝返りを打った際に壁に手が当たってしまったらしい。

 その部分周辺に大きく凹んだ穴がそれを物語っていた。

 この家は借家ではなく俺が金を出して用意したものなのだ。
 だから別に壊しても誰かに迷惑を掛けることはない。

 まあ壊した際に轟音が響いていたら周囲は驚くかもしれないが、今のところその苦情は来ていないので大丈夫だと思う。

「だけどいい加減にこの家じゃ限界みたいだな」

 この家も魔物の素材などを使ってそれなりの耐久性や遮音性を有している探索者用の物件だったのだが、今の俺達ではそれでは足りなくなってきてしまったみたいだ。

(まあこの家を買った時は俺も優里亜もE級なり立ての時だったからな。ステータスがその頃と今では違い過ぎるか)

 最前線を退いたとしても高めたステータスはそのまま残る。

 つまり超人的な身体能力そのものは腕が鈍っても年をとってもほとんど衰えないのだ。

 本来ならそれは有難いことのはずなのだが、今回の場合に限ってはそうとは言えない。

 探索者専用物件となれば貴重な魔物の素材を必要とすることもあって、普通のものより何倍も値が張るし。

「よし、この際だから新居を買おう」
「え、本気? この家だって安くはなかったのに」
「ああ。幸いにも回復薬作成に協力したおかげで貯金には余裕があるからな。この家は改装して探索者に向けた貸家にでもすればいいだろう?」

 俺も優里亜も探索者としての活動を完全に止めた訳ではない。
 時たまE級くらいの安全なダンジョンに二人で潜ることも結構あるくらいだ。

 これまでそれで食い扶持を稼いで生きてきたこともあって、他に稼ぐ方法はまだまだ探っている最中なのだ。

 それに加えて回復薬作成で得た報酬もある。
 だからその程度の金はあるのだ。

(とは言え、今後の人生を考えると他にも稼げる手段はあった方がいいよな)

 優里亜は子供が出来たら完全に探索者としてダンジョンに潜るのは止めるつもりでいるし、俺もそれには賛成している。

 その時に稼げる手段が他にあるのとないのとでは大きく将来の見通しが変わってくるだろう。

 一応、協力の見返りとして社コーポレーションから金とは別に株も受け取っている。

 優里亜も同じでその管理についは一律で任せていた。

 正直に言うと株とか仕組みがよく分からんので。

(第三者割当増資のお誘い受けたとか優里亜に説明されたけど、聞いても意味が分らんしな)

 こちとら魔物をぶっ殺すのが仕事の探索者をずっとやっていたのだ。

 株とか小難しい話をされてもちんぷんかんぷんである。

「……うん、今の資産なら新居を買っても大丈夫そうね」
「なら良かった」

 我が家の財政担当の許可も下りたことだし、早速新居を探さなければ。

 あるいは日本だと買うのは難しいから一から建てなければならないかもしれない。

(素材も最悪は自分で取ってくるか。そうすれば多少の費用削減にもなるだろうし)

 その辺りも夜一や社コーポレーションに相談するとしよう。
 なにせあそこは日本では有数のダンジョン素材を扱う企業なのだから。

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