「私がテレビ局で何をしたかって? 別に変なことはしてないよ」
生放送ではなかったのだから私の探索者としての主な目的が美しいものを手に入れるため、という発言が放送されたのだってテレビ局がそれでいいと思ったということだ。
それを私だけの責任にされても困る。
そう言い訳したのだが英悟と朱里には通用しなかった。
「そっちの話じゃないですよ。薫さん、他にこっそりやったことがありますよね?」
「何だろう? 初めてのテレビ出演で緊張していたからかな。あまりその時のことは覚えていんだよね」
「先生とか夜一さんに言いつけられるのと、ここで正直に話すのとどっちがいいです?」
「アタシがこの場に居るってことの意味を考えろよ? 証拠はバッチリ確保してあるってことだからな」
「……別にちょっと美味しそうな人がいたから粉を掛けてみただけだよ」
勝てない勝負はしないに限る。
私は素直に降参することにした。
「その数が問題なんだよ! この年中発情期が!」
「収録前と終わりとかにテレビ局内でナンパするのはまあいいんですよ。個人の恋愛の範囲内ならそれをとやかく言いたくはないですし。でも一日で二十五人も口説き落とすのは流石にやり過ぎですよ」
そこまでバレているなら隠しても仕方がないだろう。
だが厳密に言えば違うこともあったので訂正することにした。
「口説き落としたと言っても別に直接的な行為に及んだ訳ではないよ? 外で遊ぶのも嫌いではないけど家でゆっくりする方が私は好きだからね。あくまで連絡先を交換してまた会う約束をしたってだけさ。あと人数は二十五人ではなく二十七人だね」
「……後で漏れた二人についても教えてください。何かあったら不味いんで」
「別に問題なんでないだろう? 個人の恋愛なんだから」
私が誰と恋愛しようと他人にとやかく言われる筋合いはないはずである。
「そうですね、新人のアイドルとか清純派で売ってる女優。果ては愛妻家で有名な売れっ子ミュージシャンにまでその毒牙が及んでいなければ俺も止めませんよ」
これがマスコミにでもバレたら面倒なことになると英悟は大きく溜息を吐いていた。
私としても面倒事は嫌いなのでバレるようなヘマはするつもりはないのだが信用してくれないらしい。
「収録の合間の時間なんてそんなにないだろうに一体どんだけ短期間で粉かけまくってんだ、てめえは!」
「それは収録前の打ち合わせとか面倒なところで抜け出してだね。暗示を駆使すればその場に居たことにするのは容易いし」
探索者として折角便利なスキルなどを手に入れているのだから活用しない手はないだろう。
「言っておくが口説く際には暗示なんて一切使っていないからね? そこには私の譲れないプライドがあるからね」
「クソどうでもいいわ、そんなことは」
「えー大事なところだよ、ここは」
そう主張したが二人には流されてしまった。残念。
「てか、お前。テレビ出演したのも本来の目的はこっちだったろ」
「うん、そうだよ」
「そこで堂々と頷くな!」
でもそうでもなければ私が欠片も興味の湧かないテレビ出演なんてする訳がないではないか。
「それで俺達の方で確認漏れしてた二人ってのは誰ですか?」
私が口説いた人物リストを見せられて確認したところ、すぐにそれが誰なのかは分かった。
「えーと……ああ、漏れているのは近くのスタジオでドラマの収録をしていた子役の二人だね。可愛い男女だったよ」
「子役?」
「おい、お前まさか」
「いや、流石に私も十歳に満たない子に手を出す気はないよ? でも大人に成長した時にもしかしたら良い感じになるかもしれないじゃないか」
あるいはそうなるように育てるのもアリかもしれない、なんて考えていることは黙っておいた。
言っても怒られる内容が増えるだけだろうし。
「大丈夫、こんなことでノーネームを脱退させられるのは私も本意ではないからちゃんと考えてバレないようにするよ」
「「信用できるか!」」
でも結局二人に懇々と説教されることになったのであまり意味なかったようだった。