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#聖女殺しの恋【今後の予定】風呂の日SS🛁

 『聖女殺しの恋』しばらく更新できませんよーのお話とお詫びの品SSの記事です。

 こんにちは、こんばんは、おはようございます。幽八花あかね(ゆうやけ あかね)です。いつもお世話になっております。

 家庭の事情で執筆時間が予想以上に取れなかったり、私自身の創作の調子がまた微妙だったりして、第二部【1−2】の進捗状況が良くありません。考えた結果、【1−2】の連載開始を当初の願望より遅らせていただきます。楽しみにしていただいた読者の皆さまにはお詫び申し上げます。

 ここからしばらく慌ただしい日々が続きそうですので、【1−2】の開始時期は仮決定で今年の「4月中」からとさせていただきたいと思います。また再開時にはお知らせいたします。【1−2】の前に【幕間】のエピソードをちょっとだけ入れようと思っているので、そちらは書き上がり次第更新いたします。

 昨日、2月6日は〝風呂の日〟でしたね――というわけで、お風呂関係の小話をお送りします。ご笑覧ください。


 ショートストーリー【お風呂】🛁
 

【幼少期】オフィーリア六歳、イラリア四歳の頃のお話。

 ――負けた。彼女の「お願い。姉さま?」の可愛らしさに、完敗した。

「これ……バレたら私が怒られるのよ」
「大丈夫だいじょうぶ。バレなきゃ犯罪じゃない!」
「そもそも犯罪ではないと思うけどね??」
「えへへ。ちゅーしていい?」
「だめ」

 幼少期のある日、継母やメイドたちに隠れて、こっそりと一緒にお風呂に入ったことがある。「溺れないように、だっこしてて?」と小さすぎる腕にぎゅっとされて。肌のやわらかさとぬくもりにドキドキして。

 皆から疎まれている私が溺れるならまだしも、この家の〝宝物〟である彼女が溺れたりしたら大事件だ。とても離すことなどできなかった。他意はない。

「――うふふふ、姉さまがいっぱい触ってくれて嬉しいー。きゃー」
「証拠隠滅をはかっているだけよ。調子に乗らないで」

 お風呂上がり。彼女の体や髪を丁寧に拭いて、着替えを手伝って。
 それだけのことに満面の笑みを見せる義妹はやっぱり可愛くて、ちょっとだけ腹が立った。

 あの人たちにバレたらという恐怖感と、肌を見せ合ってしまった羞恥心と――非日常特有の高揚感と貴女の可愛らしさに、私がどれだけ心乱されたか。心臓をうるさくさせていたか。

 頬の赤みと鼓動の音から見聞きできる程度にしか、貴女には伝わっていないだろうことが恨めしい。

 ――貴女が思うよりずっと、私はきっと、貴女に心を動かされている。


【学院時代】それから十一年後の頃の話。

「姉さまー! たまには一緒にお風呂に入りませんか?」
「嫌よ。絶対に破廉恥なことをされるもの」
「くっ、眠そうな時におねだりすれば、あわよくばと思ったのに……!」

 学生寮の私の部屋で。勉強する私の向かいに腰を下ろした彼女は、悔しそうに頬を膨れさせていた。こんな顔をしていても、なお可愛い。本人には「可愛い」なんて、めったに言ってあげないけれど。

「ひとりで入ってきなさい」
「むぅ。十年も会えなかったのだから、そのぶん甘やかしてくれてもいいのでは?」
「もう十年も経ったのだから、貴女も大人らしく成長していると思っていたわ。いつまでワガママ姫のつもりなの」
「むぅぅ。仕方ないですね。ひとり寂しく入ってきますよ」

 ぐすんぐすんと泣き真似をしながら、彼女は浴室へと姿を消した。が――

「すみませーん、髪紐をそっちに忘れましたー。優しい優しい姉さま、取ってくれませんかー?」
「……わざとなの?」

 ひとり呟き、机の上に堂々と置いてある髪紐を手に、私は浴室の扉へと近づく。ノックしてから「入るわよ」と告げ、扉を細く開けると――

「きゃっ」

 彼女に腕を引かれ、気づけば唇を奪われていた。


「…………もう。何をするの」
「〝大人らしく〟とおっしゃったのは姉さまですよ?」
「深くしてなんて、言ってない。口づけは、成長しなくても、いい」

 ――子どもの時にされたような〝ちゅー〟でも、まだドキドキしてしまうから。

 今みたいなキスでは、もたない。身も、心も。

「はい。髪紐」
「あ、ありがとうございます! 大好きです」
「貴女の、人の親切心に付け込んで不意打ちでキスしてくるところ。私は嫌いよ」
「でも、強引にしないとキスできないじゃないですか。『キスしていい?』って聞いても『だめ』って言われちゃいますし」
「……その姿でいつまでも突っ立っていたら、冷えるでしょう。早くお湯に浸かりなさい。じゃあね」
「あっ」

 彼女の腕から逃れ、急いで扉を閉める。勉強机に戻って、机の上に顔を突っ伏した。

 ――万が一にも、あの子にキスされてもいいって思っていても、よ。私の口から『いい』なんて言えないじゃない。恥ずかしすぎるもの。
 そういう雰囲気の時に、黙ってキスしてくれればいいのよ。馬鹿――なんて。こんな面倒くさい自分がいちばん嫌いだわ。

 それにしても、ずいぶんと大きく成長していた。何がとは言わないけれど。


【婚約者時代】それから三年後の話。

「これ以上は、のぼせてしまうから……。だ、脱水状態になるから。続きは後でっ、寝室で、しましょう……ね?」
「姉さま、お風呂でいちゃいちゃするのも好きでしょう?」
「……好き。だけど。でも、だめ。もうだめなの……」
「ふふふ、可愛い」
「貴女の方が可愛いでしょって、何度言えば――あっ」


 *

 *

 *


 それから――

「今日の結婚式……とっても疲れましたけど、すごーく楽しかったですね!」
「そうね」
「お風呂ではゆっくりしましょうねー」
「……そうね」

 きっと今夜も〝ゆっくり〟できない。

「優しくしてね」といつものように言いながら、彼女と生きる幸せに浸る。

 今日もお風呂で、大好きな妻にキスされる――。



 ショートストーリー【お風呂】fin

 * * *

 いかがでしたでしょうか?

 しばらく本編の更新はありませんが、今後とも『聖女殺しの恋』をよろしくお願いいたします!


 2023年2月7日 幽八花あかね

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