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花七宝の影法師・登場人物制作秘話其之捌「恵清(北条泰家)」

最初にばっさりと言ってしまうと、本作における恵清は史実上の北条泰家を元にした半オリジナルキャラクターです。なにせ北条泰家の動向が不明になった後の話なので、「歴史上の北条泰家を描いた」とは言えないわけです。
「北条泰家がその後も生きていたとしたらどうしていたか」という謎と「北条はいかにして敵だったはずの後醍醐帝に従うようになったのか」という謎。それが本作における恵清のスタート地点でした。そういう事情もあって、作中では彼のことをほぼ『北条泰家』と表記せず、出家後の名称の一つとされる『恵清』という表記で通すようにしていました。泰家にして泰家にあらず、というところですね。

南北朝時代の北条氏については、元弘の乱の結果一族のほとんどが自刃したこと、中先代の乱で北条時行が最後のひと花を咲かせたことが印象に残りやすいかと思います。その反面、その後についてはあまり触れられることがありませんでした。
北条時行は中先代の乱終結後に消息を絶ち、その後突如仇であるはずの後醍醐天皇に従う形で北畠顕家と合流、足利勢を相手に戦を繰り広げることになります。特に青野原の戦いという大舞台では主人公である重茂と直接相対するという縁まであり、これは鎌倉幕府執権一族VS室町幕府執事一族をやらなければ、と思い立って恵清や時行のキャラクター像を本格的に構築していきました。

泰家はかつて執権の座を望み、競争相手だった金沢貞顕に身の危険を感じさせたという逸話がある人物です。その後西園寺と組んで練っていた計画等のことも踏まえると、在りし日の鎌倉幕府に対する想いは非常に強かったと思われます。恵清というキャラの骨子にあったのは、そういう鎌倉時代への憧憬と執念でした。
一方の時行は鎌倉幕府が滅んだ際に幼かったこともあり、泰家ほどの執念はなく、むしろ現状を受け入れられていたのではないかという印象があります。
そういう叔父と甥のすれ違い――鎌倉時代の北条とその後の北条の在り様の違いを入れたことで、恵清は「単純に北条復興に執念を燃やすだけの男」にならず、若干の深みを持つキャラクターに昇華できたような気がします。

ちなみに本作の恵清が武人として無茶苦茶な強さを誇っていたのは、前述の「金沢貞顕に身の危険を感じさせた」という逸話を拡大解釈していった結果です。実際の泰家がどれくらいの武勇を誇っていたかは分かりません。
僧兵スタイルということで、見た目は歴代大河ドラマの弁慶みたいな豪傑をイメージしていました。何度戦闘を繰り広げてもなかなか倒れない様は、幻想水滸伝2のルカ・ブライトみたいだなあ、などと書きながら考えていたような気がします。

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