恐ろしいことに、私が現在執筆しているファンタジー作品は複数人の登場人物が同時に戦闘します。
「そんなん普通じゃん」
という声が聞こえてくる気がしますが……いえいえ、全然普通じゃありません。
1対1、1対2、1対3……と増えるにつれて、本気で戦う登場人物たちの描写難易度が|ノーマル《普通》から|インフェルノ《地獄》に上がっていくのですから。
私も名だたる物語(アニメ、漫画等)を見てきましたが、本当の意味で多人数戦闘が描けている作品はそう多くはないかもしれない……そう思うのです。
つい最近、とある有名なバトル要素の強い作品を楽しもうとしたのですが、
「なぜこんなに優秀なメンバーがチームワークを発揮しないんだ!?」
「敵も味方も設定に反して頭が悪いッ!」
「絶対作り手側の都合でキャラを動かしているじゃないか!」
と悲しくなりました。
好きな作品だったので、なおのことショックでした。
ですが、それくらい多人数戦を描くことが大変なのだとも思ったのです。
「そこまでおっしゃるなら、今、あなたは何人の戦闘を書いているんですか?」
と思うじゃないですか。
「恐れ多くも、1対8前後です……」
はい、|インフェルノ《地獄》です。5人でも大変なのに。
身の程をわきまえずにこういう地獄に足を突っ込むと、
「1000字すら書けない……!」
という事態に陥ります。
ちなみに、過去作の『グランディオスの剣姫たち』の戦闘は最大で2対6でした(だったはず……)が、名だたる作品でも登場する『※分断作戦』を無意識に使っていた(厳密には明確に分断とは言えないが)ため、描写にはあまり苦労しませんでした。
※分断作戦
大人数での戦いにおいて、突然地面が割れて何人か落ちていったり、自動で閉まる壁に分断されたりするあれ。敵側にラスボスと複数人の幹部がいたりするときに、主人公VSラスボス、主要メンバーVS幹部となったりもするやつ。
ただ、今書いている――
『魔よけの加護でダンジョンも余裕な俺ですが、英雄たちと冒険してもいいでしょうか。』(……長い)
――は、敵のバトルIQが高く、敵が一体ということに大きな困難があるのです。知能が高いということは、主人公側も戦略を立てなければなりません。敵が一体でしかも物凄く強いということになれば、作家の都合による分断作戦も使えません。
「チート主人公がいれば、勝てるッ!」
とは思うのですが、私が今書いている作品には、チート主人公がいません。もっと言えば、現状強くすらありません。
なので、力を合わせるしかないのです。
敵が一人なら、みんなで力を合わせて倒しますよね?
全力で、
一切の妥協なく、
完膚なきまで叩きのめすのが礼儀――
――と思うじゃないですか。思わないでしょうか。
すみません……私はそう思っています。
だから書いたんです。そういう筋書きのストーリーを。
でも、それではだめでした。作り手側の都合でキャラクターを動かされるのが最も嫌いだと常日頃から思っている(大好きな作品でも思うことがある)くせに、
「最高の倒し方思いついた! 主人公たちにはこう動いてもらおう!」
なんてことを考えるからダメなんです。
それは『一人で操り人形を使って倒している』のと同じです。
それに気がつかないまま、
「うーん、書けない……なぜ!」
と地獄の沼にはまっている自分がいました。
独りで書いているからだということに気づかずに。
いつだって筆が進むのは、
「この人だったらこう動くはずッ!」
という確信が得られた時なんです。
そのことを忘れてしまったから、書けなくなったのかもしれません。(あるいは、無理やり動かしたキャラクターの違和感を無視して書くこともできるかもしれませんが、今のところ自分には難しく……)
色々書きましたが、要は、
「キャラクターと相談しましょう?」
という話です。これまで頑張ってきてくれた物語の登場人物達なら、きっとその状況をなんとかしてくれると信じるんです。
「でも、最高のプロット作っちゃったし」
と思っても、
「ちゃんとキャラクターと報連相した!?」
と自問自答するのです。
作者「プロットできました!」
主役「こんなご都合で倒せるわけないでしょ!」
作者「でも思いつかなくて……!」
敵役「このプロットってさあ、俺の気持ち考えてくれてないよねえ?」
作者「そうでした。敵さんにも感情があるんでした……」
という具合です(実際とは少し違いますが)。
以上、長くなりましたが、
『複数人の戦闘描写って難しい? だったらキャラクターに相談しませんか?』
というお話でした~。
↓↓↓引き合いに出した作品のリンクです。よろしければご覧ください↓↓↓
『グランディオスの剣姫たち 月華の章』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662953848255
『魔よけの加護でダンジョンも余裕な俺ですが、英雄たちと冒険してもいいでしょうか。』
https://kakuyomu.jp/works/16818093081096578914