• 詩・童話・その他

ショートショート*(ホラー)

男はそこに居た。


周りは森で、燃えていた。葉の一枚一枚が風で揺れるたびに燃え移っていって、灰が地べたに落とすのみ。乾燥した空気が、余計に炎の勢いを助長させている。


男は地面に座った。

大勢の死骸が転がっている。中身がうっかりはみ出していて、赤く砂利を濡らすところもある。

その中には、友人とも呼べるナニカも転がっていた。



男の故郷は一瞬でなくなってしまった。

もう親が親の名を借りることもなく、周りが干渉することもない。男を痛め付け、梁につるす者も、全て炎と共になくなった。友人が男を庇い、自らの痛みのように苦しむことも、もう見ることはない。



男は自由だった。

男はきっと、嬉しかったのかもしれない。自分の人生を歩めることが、しがらみから解き放たれたことが。


男はそろそろと立ち上がって、一点へ近づいていく。

また立ち止まり、静かに座る。
欠片を拾った。迷いもなく口に放り投げた。味はしない、いや、分からない。生きるために食べるしかない。





───なぁ、友だった骨は美味しいか?



END

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する