この記事はギガントアーム・スズカゼ第七話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
「わー何かムカつく」
「より正確に言えば「通常ではありえないくらいたくさん」ですね」
「ふぅん。でも、それが何か問題なのか? 大量に輸入ってのは、つまりたくさん買ったって事だろ? 儲かったんじゃないの他の国」
と、一郎が言った直後。
ミスカとジットは、何とも言えない表情を浮かべた。
「な、なんだよその「コイツなにもわかってねえな」って感じの顔は」
「気にするな。「コイツなにもわかってねえな」と思っただけの話だ」
「しょうがねえだろ地球人だぞコッチは!」
「いやぁ……これに関しては地球でも同じ土台の上にある理屈なんですけどねえ」
「ああ。ハイブリッド・ミスリルは、いわゆる戦略物資に該当するものだ。そうだな……」
こつ、こつ。
リズミカルにちゃぶ台を指で叩いたミスカは、不意に思いついた。
「……そうだな。例えるならハイブリッド・ミスリルとは、運動会の玉入れに使われる玉なんだ」
「おーなんか一気に身近になった」
「知っての通り、玉入れは玉が多ければ多いほど有利になる。しかしこれが戦略物資に、ハイブリッド・ミスリルになると話が変わって来る」
「ああー、国ごとの生産力によって玉の数が変わっちゃう感じか。合金って事は工業製品だもんな」
ようやく少し飲み込めた一郎は、ついでに飲み物を一口すする。
「それだけならまだ良いんだがな。この玉入れの勝敗を決めるのは、赤組白組の優劣ではない」
「そう。国家の趨勢、そのものです」
言い放つジット。その視線はミスカへ向いている。潜在的には敵である、エルガディア人の戦士の下へと。
ミスカはその視線を無言で受ける。互いに牽制をしあっている、アクンドラ人の為政者の下へと。
「このため各国は様々な条約によって戦略物資の保持を縛ってきました。ことハイブリッド・ミスリルに関しては、相当に厳格に。地球で言うミサイルみたいなものです」
「だが一年前、エルガディア魔導国はそのハイブリッド・ミスリルを大量に搭載したギガントアームを完成させた。しかも一度に六機。あまつさえイーヴ・ラウスに甚大な混乱を引き起こした。何故、そんな事が出来たのか?」
「あー……! だからスパイが関わって来る訳か!」