「最初から有り体に言ってくんな、いっ!?」
素早く身体を逸らすスズカゼ。その肩のすぐ上を、フェアリーユニットの火線が掠めていく。
「ク、ッソ! 何か手は無いのか!?」
「無い訳ではないが」
更に別角度からの火線。防御するスズカゼ。動きが止まる。その隙をトーリスは見逃さない。グラウカの手を腰へと回し、マウントされていた武器を手に取る。陽光下に現れたのは、フェアリーユニットのものより一回り巨大な銃身を備える武器。
対ギガントアーム仕様のアサルトライフルであった。
「さてさて、無力化出来りゃあ御の字……」
撃破できなくとも、魔力切れへ更なる拍車をかけられるのは間違いない。ダメージを機体表面へ張り巡らせた防壁で遮断する魔法「プロテクション・シールド」が裏目に出ているのだ。
「どの道私の勝ちは決まったかなァ!」
などと、トーリスが笑った矢先。
斜め後方。それまで倒れ伏していた自動制御のグラウカが、不意に上体をもたげたのだ。
「うん?」
サブモニタ越しに、トーリスはそれを見た。
無人機への再起動コマンドなんてしていない。どの道片腕くらいしかまともに機能しない以上、魔力リソースはフェアリーユニットへ回した方が効率が良いからだ。だが今動いている。
それが意味するのは、つまり。
「ちィ! クラックされたか!」
スラスター推力で即座に機体回転、トーリスは迷わずアサルトライフルの引金を引く。標的は、今起き上がろうとしたグラウカ。
照星に導かれる弾丸は、迷う事無く機体胸部へと着弾。爆発。今まさに展開していた無人機の腕部ガトリングガンは、空転すらせず地面を舐めた。
かくて爆煙吹き上げる無人グラウカ。その後方では光る杖を構えたジットが、苦虫を嚙み潰した顔をしていた。あの少年が半壊の無人グラウカを遠隔操作していたのだ。
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