「あるにはあるが、装弾されていない」
「弾無いの!? 何で!?」
「さあな。積む暇が無かったのか、積む気が無かったのか。どちらにせよ、あまり重要ではない」
「熱っつ、痛って! なんでだよ!?」
常に二方向から浴びせられるフェアリーユニットの射撃。それを避け、防御し、時に直撃を貰いながらも、スズカゼは移動する。移動し続ける――いや。
「移動、させられている」
呟くジット。これではまるで追い込み猟だ。果たして二人は気付いているのだろうか。
注意深く、ジットは視線をトーリス機へ向ける。さりげなく、杖を掲げる。こちらの動きに気付いた様子はない。ランバ、もといスズカゼへ全力を向けているという事か。
だが何故? 幾らフェアリーユニットがあるとはいえ、決定打に欠けている事はトーリス自身が分かっている筈。仮に今、自機を含めたグラウカ部隊の全機一斉射撃を浴びたとて、スズカゼを撃墜するには至るまい。いずれ一郎が性能を把握し、攻勢に転じられてしまえば、そこで終わり――。
「――いや、そうか。奴の狙いは」
ジットが察したと同時、それまで機敏だったスズカゼの動きが鈍り始めた。
「な、なんだ!? いきなり、身体が鉄みたいに重く……いや鉄なんだけどさ」
「ああ、成程。向こうも考えてるな」
「どういうこったよ」
「魔力の枯渇が近い」
「……燃料切れって事か?」
「有り体に言えば、そうだ」
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