「飛び道具!?」
「そうだ。しかもそれ自体が空を飛ぶ。それが四機ある上に――来るぞ!」
ミスカが叫ぶよりも早く、スズカゼは構えを取っていた。トーリスの操縦するグラウカが突っ込んで来たのは、その直後だった。
「そこだろぉがぁ!!」
スラスター推力を乗せ、機体ごと突っ込んで来る直線的な刺突。その手には今までのグラウカと違い、光の剣が握られている。レイ・ブレード。それまでグラウカが見せた光の拳――レイ・ナックルの類型に当たる武装。一郎にはそれが分かった。
「なんで」
加えて、仮にその刺突が直撃しようとも。
スズカゼへは、大したダメージにならないだろうという事も。
「分かっちまうかなあ!?」
口を突いて出る驚愕よりも先に、反射が先んじた。
滑るように突き出されるスズカゼの左手刀。絶妙な角度で繰り出されたそれは、トーリスが繰り出した刺突の切っ先を、精妙に外へと逸らした。
結果、曝け出される格好となるトーリス機の胴体。スズカゼは迷う事無く、右正拳を打ち出し。
「う、っお!」
しかし直撃寸前で、トーリスは危うく回避した。真後ろからワイヤーで思い切り引っ張られるような、酷く不自然な動き。
「なんだ」
呟いて、一郎は気付く。トーリス機の脚部と背部が光を放っている。スラスターの推力を用い、強引に機体軌道を変えたのだ。
「あんな位置のスラスターで、そんな動きが出来るもんなのか!?」
「そりゃそうだろう、魔法の代物だぞ。そうでなければ、ほら右」
「右ぃ?」
ミスカの言葉通り右を向くスズカゼ。そこに浮遊していたのは、先程とは別のフェアリーユニット。よくよく見れば下部が発光している。グラウカと同じシステムで浮力を得ているは明白だった。
そして、先程同様の射撃がスズカゼを襲う。しかも今度は数発を顔面に食らう。
「いでっ! 熱いあっつい!」
怯むスズカゼ。更に一機、新たなフェアリーユニットが別角度から射撃開始。十字砲火にたまらず一郎は叫んだ。
「ああもう! こっちにもないのか何か飛び道具!」
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