なんとなんと!
拙作『奴隷くんのハッピ〜異世界ライフ』が400話到達です!
400話!
200話のときも300話のときも思いましたが、400話になっても思います。
こんなに続くとは……と。
星をつけてくださったり、♡や応援コメントを送ってくださったりと、読者の方々あってのことです。
本当にありがとうございます。
400話ずっと付き添ってくださっている方たちには、感謝しかありません。
近頃は生活リズムや体調の変化によって、なかなかきちんと投稿できず心苦しく思っています。
がんばって整えていきたい所存です……。
今後も無理なくゆるりと見守っていただけましたら、嬉しく思います。
さて、ささやかながら記念SSをご用意いたしました。
現在、本編ではなかなか緊迫感のある状況ですが、SSではそんな空気はありません。
今回は、なんとワヌくん視点です!
初の、アウル以外の一人称視点となります。
非常にあっさりとした内容ではありますが、ワヌくんや真獣について少しだけわかる、かもしれない……という内容になったはずです。
ワヌくんの言葉が固いため、読みにくかったら申し訳ないです。
お手隙の際にでも、ご覧くださいませ。
そしてイラストですが、それぞれの未来を見つめるメンバーたち、というようなコンセプトです。ちょっとシリアスなかんじになった気がいたします。
イメージ崩壊の危険を感じられる方は、閲覧をお控えくださいませ。ご自身のイメージが最も大切です。
それでは、SSをお楽しみください。
***
400話記念SS『我はワヌドゥ』
(ワヌ視点)
我はワヌドゥ。
森狼ヴァウドゥの眷属にして森の番人である。
我らが長の支配する森で、香りの良い木の実を楽しみながら温泉に入り浸る悠々自適な暮らしをしていたところ、急に呼び出されて森の番人になるよう言いつけられた。
心外である。
そのような面倒極まりない役目など、気概あふれる他の眷属に任せれば良いではないかと思ったものだが、長の決定には逆らえぬ。仕方なく住処を離れ、遠くの森へやってきた。
どうやら、長が次代として育てていた我らの弟に大事があったらしい。
まだ仔狼だった弟は好奇心が旺盛で人の街へ近づきすぎたのだ。
まあ、可愛い弟のためなら仕方あるまい。
その後、様々な事情を経て我は森の番人として力をふるい、見事に森を整えてやった。この程度、造作もない。
元々、人間の狩人たちが整えていた森だ。
彼奴らは我らのような目を持っておらぬというのに、それなりにうまく森の巡りを整えておった。
我らが主が言うには、人の営みもまた巡りの一部であるという。確かに、人間が動物を狩り、実りを収穫し、魔法を使うことで循環が生まれる。そして人が死する時、その意識体は我らが主の元へと還るのだ。
それゆえに主は、人に自らの権能を分け与えられたのだ。森と人とは、もはや不可分であるといえよう。
この森へ来てから、人と会う機が増えた。
これまでは森の奥深くに誰も入れぬ領域を作って我の住処としていたため、人と話すことは滅多になかった。
ここでは頻繁に人がやって来る。
森へ立ち入り恩恵に与る者、そして我が弟と意識体を融合させた人間の子供、その守護者たち。
ほとんどの人間は我を過剰なまでに畏れる。真獣の眷属たる存在が、其奴らにとっては強大すぎるゆえだろう。
だが、我が弟の周囲の人間たちは、そうでもない。
不要な敬意を向ける者もいるが、距離を取りつつしっかりと森の恵みを手にしていく者もおるし、この我を叱りつける者もいる。
弟と共にある人の子などは、我を寝具にしようと常に画策しておる。まあ、我の手入れが行き届いた毛並みが素晴らしいのは自明の理であるが。
しかし、危険な奴も潜んでおった。
なんと我らが長を殴り飛ばした奴までおるのだ。
真獣たる存在と渡り合う人間など、僅かであろう。
其奴も迷い犬のようではあるが、弟たちを守るには不足なしである。
真獣といえば、人の子が真獣の赤子を拾ってきた。
雷龍リヴという、我の元の住処の近くで威張っている龍の子供だ。リヴとは違い、その幼体は実に愛らしい。稀な生まれ方をしたその幼体を、我が弟たちも日々愛でておる。
リヴはまだ良いのだが、実は真獣といえど慣れ合えぬ奴もいるのだ。
今は砂漠となった地を仕切っていた、燃える身体を持つ鳥の真獣。彼奴は岩竜に属する真獣ゆえ、好戦的で苛烈な奴であった。
奴はよく森を焼くので、我らとは折り合いが悪い。
悪い奴ではないが、かつて奴の守護していた人の国の戦に加担して甚大な被害を出した。
森は焦土と化し、その地の人間たちは我らが主より制裁を受け全地へ散り、そしてその真獣自身、岩竜より謹慎の命を受け今日に至る。砂漠化した土地では、わずかな民が残った水源へ集い、ひっそりと暮らしているようだ。
真獣も様々である。
リヴの子がそのような苛烈な馬鹿者にならぬよう、我らがしっかりと導いてやらねばなるまい。今や分身体の役目は、ほとんどが子守である。
まだ思考もままならぬ幼体だが、リヴの子は素直で聡い。いずれリヴを凌ぐ立派な竜種へと成長することであろう。
この森へ来てから、人の国の営みというものを知るようになった。
星の眼を持つ人の王は、人よりも動物を愛でる時間の方が長いという奇特な奴だが、なかなかに興味深い。彼奴は策略家であるのに、我を利用しようとはせぬ。それゆえに王と話すのは心地良い。王城とやらは清浄に保たれておるので、我も気に入っているのだ。
いつか我の毛並みを撫でさせてやっても良い。
いつも触りたがっているのは知っているぞ。
星の眼を授かりし民たちは、自らがいかに特別な民であるかを知らぬ。天龍の眼が届くこの場所には、特別な者が集う。そのような巡りの元にあるのだ。
彼らは、いずれ知ることになろう。
天龍の祝福が降り注ぎ、闇が払われるその光景を目撃するであろう。
そして真なる強者が誰であるかを、知ることになるであろう。
我はその瞬間を、このとっておきの場所から眺めるのだ。この森と、小さき子供の掌中の、両方からだ。
それまでは、誰にも譲りはしない。
我はワヌドゥ。
森の番人である。
(おしまい)
***