今日は、以前から気になっていた、中尊寺の薪能を見てきました!!
今回の近況ノートは、そのレポートをしてみます♪
(1)薪能って?
簡単に言うと、夜間にかがり火をともした野外舞台で行う能です。
因みに、能は、一種の歌舞劇で、日本版オペラというとわかり……やすい?
中尊寺に行ったことのある方は、金色堂の近くに野外舞台があるのを見かけたことがあるはず!!
(2)参道~会場まで
駐車場はいくつかあります。お盆期間なので混みまくり。
第一駐車場が開いていなかったので第二駐車場へ。乗用車は一回400円。
てくてく歩いて行くと、レストハウスやお土産屋さんが立ち並ぶ中に、
中尊寺の山門が登場します。
中尊寺は、なが~い坂の続く参道(“月見坂”と申します。素敵な名前ですよね)を上った、そこそこ高台にあります。
夏には行かない方が良いでしょう。
植わっている杉(伊達藩が植えたそう)が陰を作って、見た目には心地よいですが、空気自体が暑いです。
もし行くなら、昼間は避けた方が。
なお、参道の坂は、中盤くらいまで、上がる程に急になっています。自分の体力と相談しながら無理せず上っていきましょう。舗装されたところもありますが、砂利道も多いです。革靴とピンヒールはやめた方が良いです。スニーカー推奨です。あとこの時期は虫除けもしておくといいかも。
途中、ちょっと開けた所にでます。
眼下に束稲山、北上川、そして歌枕で有名な衣川などが見えます。
その一帯が、前九年合戦の舞台、あるいは弁慶立往生の地と伝えられています。
さて、目を転じますと、坂の途中途中にお土産屋さん、お茶屋さん、様々なお堂や、お札などの授与所があります。
御朱印集めをしている方は、全部戴くと、それなりにた~くさんたまります。
直で書いてもらうのもありますが、紙で渡されるところも。
ゴマアイスとかおいしいですよ。大好きです、ゴマ。
さて、上って参りますと、左手にはお堂とか宝物館があります。
何回と来ている所なので今回はすっ飛ばしまして、
(中尊寺に来て金色堂を見なかった奴。
どこぞの仁和寺にある法師みたいなことをやっていますが。もう、何回も見ているので)
右手に、今回の目的地、能楽殿があります。
因みに、こちらも国の重文です。
(3)座席
受付でチケットを渡すと、座席を教えてくれます。
既に開場後の入場だったので、多分、受付順です。
どこでチケットを買ったかにもよるみたい。
私の券種はA席(確か7000円くらい)。ランクで言うと上から二番目。
学生席とかはぐっと安いです。
大学時代、友人が能サークルに所属していて、
何回か一緒に見に行っていました。
2000円とか、それくらいだったような?
(今回のはちょっと分からないですが。)
S席は屋根付きで、真正面の座席。
松の絵(老松)が描かれている鏡板の対面です。
では、A席と言うと、脇正面です。
橋がかりという、能舞台の左手にある、登場人物の入退場の通路の前。
なお、ここでも演技が行われます。
そのため、近くで演者さんが見られるポイントでもあります。
能舞台は、四方を柱で囲まれているため、
座席によっては、舞台上の演技が見られないスポットが出てきます。
それぞれの柱に名前がついています。
これは、演じる上でのポイントになっていたり、
面をつけるが故に極端に視野が狭くなる演者さん達の目印にもなっているそうです。
人によっては倦厭するのですが、
ある能楽評論家の方は、「あの柱の延長線上が最高の席」と仰ったそうです。
なんでも、演者さんが、そこにめがけて演じるエネルギーを感じられ、
見る側も目の前の柱が消えて、演者さんが見えてくるのだとか。。。
ふ、深い……。
(4)本日の流れ
①祭儀
②火入之儀
③仕舞 巻絹
④狂言 横座
⑤能 氷室
こんな感じ。
(5)はじまりました!!
①の祭儀は、舞台横にある白山神社の宮司さんが行います。
祝詞を唱えているのでしょうが、最初全く聞こえず……。
途中から聞こえるようになりましたが……(マイク入れてなかった……????)
②は、地元の企業やら教育委員会の方が薪奉行なる役目をもって、会場内にかがり火の火を入れる儀式です。
蝉の鳴き声の中に、パチパチという燃える音が響いて、一気にテンションが上がってきます。
③~⑤が、本日の演目です。パンフレットから引用します(敬称略)。
因みに、パンフレットには色々能楽用語がいっぱい載っているのですが、
今回は最小限に抑えるため、端折ります。
役者さんのお名前も、シテ(=主役)だけにします。
【仕舞 巻絹】塩津圭介
天神が乗り移った巫女。神に和歌を手向けた男の罪を救い、歌のめでたき功徳を語り舞う。
【狂言 横座】シテ・牛主 野村萬斎(人間国宝 野村万作の代演)
ある男が最近手に入れた牛の目利きを頼みに博労(牛主)を訪ねる。ところがその牛は、居なくなった博労の牛であった。証拠に「横座」と名を呼べば鳴くという。三回名を呼んで鳴けば牛を返すが、鳴かなければ男の下人になるという条件を出された博労だが、二度呼んでも反応しない。いよいよ困った博労は、牛に向かって切々と語りかける。
【能 氷室】前シテ・老翁/後シテ・氷室の神 佐々木多門
〈前半〉亀山院の臣下と従者一行が、丹後国(現京都府北部)から都へ帰る途中、毎年、都に御座す天皇へ献上する氷を作る、氷室山に立ち寄ります。そこで、氷室を守る老翁(前シテ)と男と出会います。臣下の問いに、老翁は氷室の由来を語ります。暑い夏でも、この室の氷が解けてしまわないのは、天皇の意向が世の中にゆき届いているからであると明かし、この場所で今宵、氷調の祭(氷を天皇に捧げるための祭)を行い見せようと言い、氷室の中へ姿を消してしまいます。
〈間狂言:前半と後半のつなぎのようなもの〉
氷室明神の社人が、臣下たちに氷室の由来を語り、雪が降るように雪乞いをします。
〈後半〉夜になると、妙なる音楽が天空より聞こえ、天女が現れて優美に舞を舞います。次に氷室の中より、明神(後シテ)が厚い氷板を持って出現。凍てつく雪と氷の世界を見せて、氷室明神は、天皇に献上する氷を陽光で融かさぬように、冷たい水を注ぎ、清風を吹かせて臣下に渡します。急ぎ速く都に届くようにと見守り送るのでした。
(6)幽玄の世界へ
どこからともなく、笛や太鼓の音が響きはじめます。
そこへ、ぱちぱちと薪のはぜる音、火の粉の飛ぶ光が混ざっていきます。
能楽の始まる前の、音、も能を楽しむポイントの一つなのだとか。
ですから、あまり音の鳴るもの(ビニール袋とか)は持って行かないか、預けるのがベター。
今回は、野外ということで、蝉のミンミン大合唱が響いていました。
響く囃子の音に耳をすませている内に、蝉の声が遠ざかります。
はじまる、という期待感が高まって行きます。
地謡(コーラス)の方々が登場し、仕舞がはじまります!
※「仕舞」って?
能衣装を着ず、紋付き袴姿で、能のハイライトシーンを地謡のみで舞うこと。
(7)想像力がだいじです
舞台上は、大変シンプル。小道具も多少ありますが、基本的には言葉で説明されます。
ですから、プログラムでざっと内容を確認して、想像しながら見るのが大事なようです。因みに、謡本などもありますが、事前にざっと確認して、公演中は演者に集中するのがよいようです。つい文字に気がいって、演技に集中できないので。
(8)狂言――牛も人が演じるんですね?
仕舞の後は狂言です。「附子」などでおなじみ、滑稽みを主とした劇ですね。
今回ポイントは、名を呼んで、牛が鳴くか否か?
という所だったのですが、
牛、人が演じていました。
牛……?
って感じの見た目でしたが、
想像力が、大事ですね笑
牛主が切々と故事を語り、語ったところで、
満を持して「モーーーーーーーーーーウ!!」
と鳴き、意気揚々と連れ帰っていく表情が面白くて。
大笑いが出てました。
(9)雪を乞う舞を舞ってたら、雨が降った
能の間狂言で、雪を乞う舞の辺りから、ぽつぽつと雨が降り始めました。
タイミングバッチリで、びっくりです。
天女が現れた辺りで激しさを増して行きます。
天女の舞は、優美で嫋やかで、所作がもう美しかったです。まさに天女。
事前にレインコートが渡されていたので、いそいそとかぶります。
……って!!前よく見えないんですけど!!!笑
ちょっと気もそぞろになりつつ、それでもなんとか演技に集中します。
舞台にちょんと置かれた氷室のセットから、明神が現れました!!
厳かに舞を舞います。雨も最高潮の激しさです。目にめっちゃ雨が入る……!!
なお、間狂言の間、後方に控えた後見さんが着替えさせているのが、脇正面からだと見えちゃいます。
※「後見」って?
舞台の進行を監督する役。シテと同格かそれ以上の演者が務め、小道具の出し入れたり、装束の一部を替えたり。また、シテが舞台で倒れた場合などは、即座に代わって演じることも。超重要なポジションですね!!
【おまけ(の割に長い)】会場に忘れ物した。
終わるやいなや、余韻もそこそこに、会場を去りました。
雨やばい雨。
足下はぐっちゃぐちゃ。
服も、レインコートの丈が短かったのか、着方が悪かったのか、めっちゃ濡れました。
ふと、帰り道、何かがないような気がしたのです。
鞄、あさりまくりました。ないのです。
……スマホが(蒼白)
数百メートル引き返しました。
受付で聞いたら、……届いてました!!
死ぬかと思いました。
ナビはスマホ頼みなので、これがないと、家にも帰れません。
ほっとしてまた参道を歩きます。
が。
ふと気付くと、参道に、だ~れも居ないのです。
雨のせいか、客の引きが、ものすごく速かったのですね。
……どうしよう。
超怖い。
現代にこんな暗闇があろうか。
異界に迷い込んだかって位、暗い。
明るいときと、まるで雰囲気が違うのですね。
ぐっしゃぐっしゃと、水を含んだ己の靴の跫音が、
やたらめったら雨音に響きます。
夜は人の往来なんてないでしょうから、照明も最低限な訳です。
雨だから月の光もない。
足下を水が流れては溜まり、またずるずると滑っておぼつかない。
左右に植わった木々の陰とか。
静まりかえったお堂とか。
一気におどろおどろしく見えてしまいます。
遠くを走る車の音が、唯一の救いの様な。
ちょいちょい分かれ道がありますし。
どっちを行けば良いの?と、半泣きになりそうになりながら、参道をひたすら下りました。
漸く、山門が見えた時には、
「下界に戻ってきた!!」
「現実に戻ってきた」
図らずも、現在更新中の作品は、
主人公たちが暗闇の中を右往左往していますが。
それに似た体験を、自らすることになろうとは……。
そんな気分でした。
以上です!