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『歴めろ。』第七十一話のうんちくコーナー

●灼のうんちく

 平良の話、少々込み入ってきたみたいね。まあ、この後動乱の時代に突入して、もっと複雑になるのだから仕方ないわよね。
 作中に出て来た『菅原在良』の娘に『花園左大臣家小大進(はなぞのさだいじんけのこだいしん)』という人がいます。この人はちょっとした説話で有名ですが、同じ内容が『十訓抄』『沙石集』『古今著聞集』と複数あるように多少の誇張はあるものの、多分実話だったんだろうと思います。
 花園左大臣家小大進は鳥羽法皇の女房として仕えていましたが、鳥羽法皇は折しも中宮であった待賢門院と対立していました。しかも待賢門院腹の崇徳天皇を無理矢理に譲位を迫り、美福門院腹の近衛天皇を即位させます。そんな時代の出来事です。

 ある日、待賢門の御衣一重ねが紛失しました。それが何故か小大進が容疑者として捕らえられてしまいます。軟禁された北野天満宮で無実の願文を書いていると三日目、過失で神水を取りこぼしてしまいました。それを見た監視員が「この上もない粗相だ。この場で手打ちにしてやる」と小大進を外に引きずり出そうとします。
 小大進は泣きながら「何事も情状酌量の余地がある、というではありませんか。あと三日猶予を下さい。それでも無実の証拠が挙がらなければ、潔く罰を受けます」と言って歌を詠みました。

 思ひいづや無き名たつ身は憂かりきと現人神になりし昔を

<先祖の道真様。思い出されますでしょうか、無実の罪で汚名を着せられるつらさを。ついには神様になってしまったあの頃を>

 その晩、鳥羽法皇の枕元に束帯姿の老人が立って「北野天満宮にご興味が湧くものがあります。使いを送ってください」と言います。さっそく使いを送ると小大進が泣いていて歌があります。これを持ち帰って鳥羽法皇に見せました。
 すると紛失した御衣を被った待賢門院の雑仕が出てきました。これで小大進の嫌疑も晴れたわけですが、鳥羽法皇の迎えに対して「こんな仕打ちを受けるのも、普段から私のことを待賢門院様は好ましくおもっていないのでしょう」と仁和寺に籠ってしまいました。

 ……こんな話です。長い上に雑な訳で申し訳ありません。しかし確実に動乱の前触れを感じるお話でしたね。 

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