平安ファンタジー小説「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「五十二 翠令、円偉の邸宅を訪れる(一)」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393/episodes/16816927861133989178今回は佳卓が翠令に「この檳榔毛の車が左大臣家うちで一番いい車なんだ」と「車自慢」をします。
牛車はその車体からいくつかの種類に分けられます。
なかでも檳榔毛の車は「いい車」です。
京都宮廷文化研究所のサイトにまとめられています。
https://kyoto-kyuteibunka.or.jp/column/1630/引用しますと。
”檳(枇)榔毛車げのくるま
単に毛車ともいいます。上皇以下四位以上の乗り物で、女官等も乗りました。また入内する女房や高僧も用いました。檳(枇)榔の葉を細かく裂いて糸のようにして屋根を葺いた車で、屋根が唐庇になっておらず、見物はありません。蘇芳簾で、下簾は赤裾濃です。”
枕草子にも書かれています。
「檳榔毛はのどかにやりたる。急ぎたるはわるく見ゆ。(檳榔毛の車は、ゆっくりと進ませているのがいい。急いでいるのは見劣りがする)」
佳卓はせっかちな方だと思いますが、今回は円偉邸の訪問を周囲に見せつけなければならないので、ゆっくり進ませたことでしょう。
翠令ともいっしょの時間ですしねw
その肝心の「檳榔」とは何か。
ここで気をつけないといけないのは、牛車に使われた檳榔とは「ビロウ」という名の植物であり、現在「枇榔(ビンロウ)」と呼ばれている植物とは別物だということです。
「ビロウ」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AD%E3%82%A6引用しますと。
”ビロウの名はビンロウ(檳榔)と混同されたものと思われるが、ビンロウとは別種である。”
wikiの写真をこの記事に掲載しておきます(パブリックドメインなので権利関係は大丈夫のはずです)。
葉は緑とされるようですが、このWikipediaの写真以外にも葉の先が白くなっている画像がみつかります。
また、デジタル大辞泉「檳榔毛の車」の解説では、「白く晒さらした檳榔の葉を細かく裂いて車の屋形をおおったもの」ともあり、さらに色を白くするための加工もされていたかもしれません。
ま、要するに佳卓の言う「うちで一番いい車」は車体が白いものですw
ちなみに、現在、「檳榔」で検索すると出てくる「ビンロウ」とは……。
「ビンロウ」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%82%A6種子が嗜好品だそうですね。
アルカロイドを含み、興奮、刺激、食欲の抑制などを引き起こすそうです。
煙草のニコチンと同じようなもので、薬というか毒というか、嗜好品というか。
大人の嗜み、というところから、露出度の高い格好をした女性が販売するという文化もあったようです。
今回は佳卓の牛車の車体について述べました。
次回は牛車の乗り方について書こうと思います。
牛車に揺られて佳卓と翠令は円偉邸に赴き、そしてやや当惑することになります。
第三部で拙作は終わりますので、物語はクライマックスに向かって進んでまいります。
どうか最後までご愛読くださいますよう。