平安ファンタジー小説「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「四十五 白狼、佳卓を欺こうとする」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393/episodes/16816927861054245026今回、白狼が佳卓に「竹の宮の姫君と自分とは互いに嫌いあっている」と言って欺こうとします。
佳卓に「あの女は俺が嫌いだ。最初は俺だけ京に戻そうとしたほどだ」と言い、佳卓に「なぜ? お前はただの近衛舎人の一人だ。(中略)わざわざお前を嫌うようになった経緯が分からない」と訝しがられて「向こうが俺のこの容貌を遠目から見ても薄気味悪いと嫌がった」と答えます。
今更ですが、彼は今でいうところの白人=コーカソイドの風貌という設定です。母親が日本の遊女だったので多少和風ですが、白い肌に金髪碧眼に近いとイメージしています。
で。
平安時代の日本にコーカソイドの人間は来訪していたでしょうか?
奈良時代についてはペルシア人が来ていたという記録があるそうです。
「続日本紀」に「唐人三人、波斯人一人」が聖武天皇に拝謁したとあるそうですし、出土した木簡の中に「破斯清通」という人名があり、「ペルシャを意味する『波斯』と同音であり」ペルシア人官僚が働いていたとされています。
↓詳しくはWikipedia「破斯清道」をご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A0%B4%E6%96%AF%E6%B8%85%E9%81%93私は2022年7月現在、「今度は中華後宮ものを書こうかな」と色々調べております。西域のお姫様が登場するので、シルクロード関係の調べ物もしています。
中国大陸には西の方から「胡」などの異民族が来ていたそうです。この「胡」という字が示す人々については多少変化があるものの、唐代ではシルクロードを通ってくるペルシャ系民族のことを指したようです。
ウィキペディア「胡」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%A1私が図書館で借りて来た「シルクロード世界史」(森安孝夫さん)と言う本では、著者の方が「この『胡』とはソグド人だ!」とおっしゃっていました。
では、このようなソグド人はどのような風貌であったか。
wikiのソグド人の項目の「身体的特徴」では、「ソグド人についての記録では、コーカソイドとしての身体的特徴が挙げられる。色黒の肌、深目、高鼻、多鬚とある。『史記』の巻一二三・大宛列伝や班固の『漢書』には、商売上手でわし鼻、深い目、あご髭や口髭があると書かれている」とされています。
(
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%82%B0%E3%83%89%E4%BA%BA)
うーん。眼窩が落ちくぼんで鼻が高いのは確かのようですが、白人という感じではなさそう……。
私が若い頃に家族の仕事の都合でオランダに住んでいたことがあり、そこでトルコ系ドイツ人の女性と仲良くなったのですが……。彼女も中近東の人らしい顔立ちで、オランダ人のような白人ではなかったですね。
(とてもチャーミングな女性で、話していてとても楽しかったです!)
話を最初に戻して、古代の日本に白狼のような風貌の白人が来ていたかどうか……。
ソグド人なら確実に中国までは来ていたでしょう。
色の白いオランダ人みたいな人は、うーん、地続きなので可能性はゼロではないかもしれませんが、裏付けになる事実は今のところ見当たらないです……。
さらに日本に来てたかどうかは……まあ、拙作はファンタジー小説ですので、どうか大目に見てやってくださいw
白狼は、今の私たちの感覚ではカッコイイ風貌かもしれませんが、当時の美的感性からすると「異形」です。
だから姫君も最初は嫌悪していたのですが、だんだんと心を寄せていきます。
白狼が姫君を美しさから愛するのではないように、姫君も白狼の見かけではなく中身に心惹かれていくのです。
この二人の関係と、京の都の朝廷の事情が今後どう絡んでいくのか。どうか最後までご愛読賜りますよう。
写真は、日本の古代の「伎楽」に使われていたお面です。
Wikipedia「ソグド人」の項目に載っています。
また、「伎楽面」にも載っています。
このお面は東博のものですが、「酔胡王=泥酔した胡(古代ペルシャ)の王という設定で、高い冠をかぶっている」を表しているものです。
この画像はパブリックドメインだそうなので、問題ないと思いますが、何かありましたらご連絡くださいませ。
森安孝夫「シルクロード世界史」
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030604384-00