平安ファンタジー小説「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「十六 失せ物騒動に遭う(一)」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393/episodes/16816927860726633875平安時代の扇と言えば檜扇の方を先にイメージされるかもしれませんが、紙製のお扇もありました。
形が蝙蝠に似ていることから、蝙蝠扇と書いて「かわほりおうぎ」と読みます。
拙作では翠令の台詞に「閉じた状態では只の棒切れのように見えましたが」とあり、そんなに地味なので「捨てられかかる」ことになっております。
平安時代の紙製の「蝙蝠扇」は、今の扇子みたいに骨の中に紙の全部が折りたたまれているわけではありません。ですから、その骨からはみ出た紙の部分に絵や文様といった装飾があった可能性はあります。
また、骨となる材料もまた平安人のファッションチェックの対象です。枕草子には「中納言まゐりたまひて」で始まる文章があり、定子の弟が「誰も見たことのない素晴らしい骨を見つけたので、それにふさわしい紙を探している」と話す場面があります(この「誰も見たことない骨」についての清少納言のコメントがいいんですよw)。
骨自体も平安貴族の話題に上るくらいですから、閉じた状態でもそうポイポイとゴミ扱いされずに済みそうです。
ただ、拙作ではストーリーの展開上、「御所で日常的に使うけれども、うっかりするとゴミに紛れて捨てられてしまうアイテム」が必要だったので……。
ここでは蝙蝠扇が閉じられていたらゴミと間違えられて捨てられかけたということにしておいてやってください。物語の都合上です、済みません……。
ええと、さらに言い訳を重ねると……。閉じた状態でも華やかに見えるようにいい骨を選んで紙に彩色するなど装飾しても、扇を広げた時ほどには派手にはならないと思いますし……。相対的には地味な状態ですので、うっかり見過ごされてしまうんですよ……(震え声)。
今回の写真は、時代祭に合わせて平安神宮で衣装の展示があったので、そこで撮影した檜扇です。美しいですね~。
昨年2021年時代祭りはコロナで行列はなく、その代わりに建物に色んな時代の華やかな衣装が展示されていました。
所謂「十二単」(五衣唐衣裳)のフル装備をごくごく間近で見られて眼福のひとときでした。
色鮮やかで華やかで……。
そんな優美な衣装を着た女君が忙しく群れている内裏の中です。閉じた状態の蝙蝠扇は地味で「つまらぬ棒きれ」に見えてしまうんですよ……ってことにしておいてくださいまし。
次回は佳卓が「働き者」と評価される場面です。
今後ともご愛読くださいますよう……。