天然ボケはお好きですか?
私はたぶん好きなのでしょう。計算された笑いでは絶対に届かない領域、それが天然ボケなのだと解釈しています。
何を隠そう、うちの嫁ちゃんがかなりの天然ボケです。どれほどの代物かと言いますと、前作『凡才少女は勇者の夢を見るか』の主人公リナちゃんの言動のモデルになったと言えば読者様には分かってもらえることでしょう。
主語がない、語彙がない、擬音だらけ、人の話を聞かない、言い間違いに聞き間違い、一言で申せばやべー奴なのですが、それだけに独自の言語センスがきらりと光ったりもするのです。
先日嫁ちゃんが犬の散歩をしていた時のこと。草むらで匂いを嗅いでいた犬がにわかに暴れだし、狂ったように円を描いて走りだしたそうなのです。
どうやら耳に虫でも入ったようなのですが、その様子を表した言葉が「のたうち走(ばし)り」。
私も表現にはこだわるところがある素人物書きですが、どんなに頭を捻ってもこの言葉が出てくることはないでしょう。絶対に届かない領域を思い知らされつつ、私は今日も言葉を探すのです。