『神託機関』、ご好評いただき、本当にありがとうございます。PVがですね、初日からあんまり下がらないんですよ……。皆様のご愛読のおかげです。ありがとうございます。めっちゃうれしいです。
本編は行方不明の聖使徒だったウルシュラが出てきて、いよいよ後半へ突入です。
そんなこんなで、キャラ紹介とか設定でもぜひ(作家のわがままですみません)。
〇リリロア・フォン・カリディス
主人公。やさしすぎて人の顔色ばっかり伺っていたところから、人の気持ちと物事を天才的に見抜く。相手が欲しい言葉を与えられる。相手のいい反応を見て安心している。「無理です」が口癖。
声: 花澤香菜
→私は思うのですが、「やさしい人」って「やさしくない人たちにやさしくないことをされた経験があるから、せめて自分はやさしくしようと決意している人」だと思うのですよ……。最近、それを強く思う出来事がありまして。そうした傷とともに書きたくて、このキャラを作りました。
モデルはだいたい最初に結婚してた頃の私ですね……。ぎゃふん。結局離婚した実体験を元に、挫折から再生までをリアルに書きます(笑)。やあ、本当にたいへん。こういう思考の輪から抜け出すのは……。結局、私は好きになってくれた人(いまの旦那)と、大勢の大人達の助けで生きてまして……。そんな話しになっていきます。
〇ユスティナ・シェーアバルト
イギリス生まれの勇ましい金髪ちびっこ。でもそれが他の少女たちと微妙に違う温度感を生み出す。二面性がある。尊大な態度の裏に、やさしさがあり、そして正しさを求めようとする見識がある真っ当な人。
声: 新井里美
→新井さんが「こういうセリフを話してくれたら楽しいな」と思いながら作ったものです。いかにも創作ぽいキャラですが、彼女のバックボーンは知り合いからもらってます。すさまじいいじめに合っていたのですが、すごい明るいんですよ……。片耳が聞こえないのはそのままお借りしました。私が聖使徒の中でいちばん好きなキャラです。そして知り合いも。
〇イングリッド・フォン・カイザーリンク
リリロアのお姉さん。リリロアを心配するあまりリリロアを否定する。神託機関の魑魅魍魎ぶりを先に知っていたので、お姉ちゃんとしてリリロアを遠ざけていた。そうであるべき、などべき論を使う頑固な人、ルールを守りたいと常々思う。そうでなければリリロアといっしょにいられないと思っている。
声: 川澄綾子
→世の中には不器用な人がいるもので、本当はやさしいのに他人へ厳しくしている人がいます。もう少し彼らの思考を分解すると、自分ルールというものがあって、それを守らないとみんな幸せにならないと思っているんですよね……。こうした「自分が思う正しさが、物事を図るものさしになっている」知り合い達から、このキャラを作ってみました。
〇ミレナ・ヴァウェンサ
物腰柔らかい長い金髪美人。心優しい、政治家らしい政治家。政治信条は、お世話になればお世話になる。丁寧な言葉づかいが特徴。でも、裏側では違う心を持つ。
声: 高橋李依
→政治家って皆さんはどんなイメージがあるでしょうか? 清廉潔白で清く、人のために正しく働いている人のイメージでしょうか? 私はちょっと違くて……。身近に議員になられた方がいる私としては、「どうも違うぞ……」と昔から思っていて。また、世襲議員が挫折し辞めることになったことを描く『政治家やめます。―ある国会議員の十年間』を読んで、リアルな政治家さんはこうなんだと深くうなずくことがありまして。いつかこうしたリアルな人である議員さんを書きたいと思っていて、そうして作ったキャラになります。また、知っている上司達から雰囲気や言動をいただきました。優しい言葉は人を動かすためで、その後ろでは人らしい泥臭い考えがあり……みたいな。そこには好き嫌いや恋愛だってあるんです。
『神託機関』を書く初めから、このキャラとリリロアの対峙を考えていたため、テーマのひとつが『二面性』になりました。そして、この話の中で裏表がいちばんあるキャラになります。
〇ウルシュラ・リイェフスカ
歌を口ずさむ。ひょうひょうとしてよくわからない人。少し色が黒く、黒髪がふわふわ。外見は『兄の嫁と暮らしています』の樋浦律子をイメージ。口を開けば、ずけずけと正論を言い、人を言いくるめる。ポピュリスト。扇動者。先見性の塊。土着民の血が混じるため、家はどの勢力からも嫌われている。そこで法務という役割を与えられ、事件の後片付けをよくさせられていた。どの聖使徒よりも先にそうしたものを見てきてしまったので、平等と理想を掲げた共産主義に救いを求めてしまった。
声:坂本真綾
→共産主義者ではないのですが、こういう知り合いがいまして……。つかみどころがないんですよ、本当に。いろいろ激論を交えているうちに、気が付いたら私が何かさせられているという。この人から物書きになるきっかけをもらったのでなんともですが、こういう大人になるなと共通の知人からよく言われていました(笑)。
1939年当時の共産主義については、本当に希望に満ちてました。世界恐慌と飢饉があり、人々が困窮している中、大学などに入れるぐらい頭がよく、少しでも「この世界を良くしたい」と願う人にとっては、心からすがれる思想であり理想だったのです。いずれそれが地獄となるのですが……。「なんでああなるんでしょうね?」ということは、ユスティナやエリシュカに語ってもらいました。
〇神託機関について
少女たちが集まる会議が国の最高意思決定機関になっているというのは、ファンタジーのように思いますが、実際にそうしたものがある国があります。それがイランです。近代国家を目指して欧米寄りの施策を取っていた王族に対して民衆が反旗を翻し、宗教国家として革命を起こした国です。そこには投票により選ばれた議員が集う議会はあるのですが、そこで採択された法案が宗教的に正しいかどうか判断する監督者評議会というものがその上にあります。
これに商人たちが国家運営をするため、公平性に配慮しながら国家運営をしていたヴェネチアのドージェという政治体制を混ぜて、本作の神託機関という形を作りました。
これは非情にもどかしい仕組みです。政治家たちの思惑だけで、国の行く末が決まります。国民一人の思いは無視され、そしてそれが正しいと思っている人たちが多くいます。
現在、イランでは政治体制への大規模な抗議運動が起きています。この『神託機関』を書くにあたり、イランについて深く勉強させていただいたのですが、やはり……という思いがあります。イランに暮らす人々に、一刻も早く安寧とした生活を取り戻せるように願ってやみません。
そして、『神託機関』でも、このいびつさがリリロアを苦しめていきます。やがてリリロアはある結論にたどりつきます。
〇実在の人物について
『帝都物語』が大好きなんですよ……。ああやって実在の人物をぽんぽん出していくのはいつかやりたくて、こうしてみました。
ハンナ・ライチュは、本当にテストパイロットとして実在された方です。一級鉄十字章をもらえたのに、空軍の階級はなかったんですよ……。たぶんそれは女性だったからで、ナチスの思惑からはそうせざるを得ませんでした。いわゆる婦人会をしていたショルツ=クリンクや、ゲッペルスの奥さんがしていた家庭婦人としての行動が、ナチスとしては模範的だとされていた時代です。
ハンナ・ライチュの言葉や周辺の記事を読み集めるにつれ、「人々に求められたことを実現する勇気を持つ『勇者』ではあるけれど、そうせざるを得なかった悲しさも併せ持つ」という人物像が浮かび上がり、本作ではこんな役目をさせてみました。1939年当時は病気で伏しているようでしたが、それはまた隠れ蓑で……と、史実も設定に味方してくれたように思います。
ナチスドイツの特使としては、ほかにも何人か候補はあったのですが、こうした二面性に惹かれ、本作に起用しました。
当時の駐ポーランド日本大使であった酒匂大使も、たいへんな目に遭った方です。1939年のポーランド侵攻時、命からがらポーランド大使館から家族を連れて脱出されています。このあたりの顛末が当時の雑誌新聞に掲載されていて、それを読むと現地の大使館スタッフをねぎらったり、それでもご家族の安全のために離れなくてはならなかったり、すごく苦労された方だろうなと……。このあたりから、本作では苦労人のお父さんという役目にしてみました。
そして杉原千畝さんです。日本版シンドラーとして有名な方ですが、本当は対ソの諜報外交官(インテリジェントオフィサー)として活躍されていた方です。北満鉄道譲渡でソ連と交渉する話はすごく痛快ですので、よろしかったらぜひ(笑)。そして外交官としての限界(足の引っ張り合いや本国とのすれ違い)に悩まられていた方でもあります。1939年当時は、ちょうどスウェーデンから次の赴任先であるリトアニア(本作舞台の北側、バルト海に面している国)へ移動する時期でした(史実では領事代理なのですが、本作では領事にしています)。
酒匂大使とはまた違う、悩んだ末のやさしさを持つお父さんその2という役目にしてみました。
ほかにも実在の人物が出てきますので、ぜひお楽しみに。
こういうの楽しいですね、やっぱり。当時の資料読みながら人物像を掘り下げていくのは楽しい作業でした。
〇執筆時のBGM
毎回テーマ曲を決めて執筆している私ですが、この二本をヘビロテして書いていました。
Bearwear & 長瀬有花「Find Out」
For Trace Hyde「Ghost Town Polaroids」
すごく澄んだ曲なのですが、私にはどこか不安も感じられ……。そのあたりがぴったりだなと自分の中では思っています。
ほかチョーキューメイ「青の魔法」(リリロアとエリシュカの関係性とか、そのあたり)とかテクノボーイズさんのウィッチクラフトワークスのBGMをたくさん聞いて、本作を作りました。よろしかったらぜひ。
〇そして……。
誤字脱字の指摘、たいへん助かります。粗忽な私にはありがたいかぎりです。
現実では、いくつもの戦争行為が並行して進展する世界になってしまいました。私達は力ある国の蛮勇を止められません。でも、あきらめてはいけないと私は思っています。
『神託機関』の物語は、ここからさらに加速していきます。リリロアの選択、エルヴィラの活躍、暗躍するさまざまな登場人物たちを、どうか最後まで見届けていただけたらうれしいです。
ぜひよろしくお願いいたします。