『初恋リベンジャーズ』の第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑯」を投稿しました!
第4章の告知では、『初恋リベンジャーズ』という作品を執筆するにあたって、参考にした作品を作者に代わって紹介中!
第十六回目の今回はこちら!
『J−POPの捕食者・秘められたスキャンダル』
制作:BBC
取材者:モビーン・アザー
〜レビュー〜
五十年以上に渡って、日本が隠し続けてきた鞍部――――――。
彼が亡くなった後ですら、日本のメディアの大多数をこの問題を取り上げることはない――――――。
日本を代表するJ−POPのアイドルたちを相手に、芸能事務所の代表者であるジャニー喜多川氏が行ってきた行為について、英国公共放送BBCの取材者が、当事者たちに直接インタビューを敢行する。
日本で最も有名な芸能事務所がメディアに与えた影響と、彼らが見て見ぬふりを続けてきた性加害の実態とは――――――?
最初の予定では、メディア支配の恐ろしさに警鐘を鳴らすと同時に、その手法を作品に落とし込むお手本として、本当は、『東京五輪の大罪〜政府・電通・メディア・IOC』という新書を取り上げようと考えていたのだけど……。
今回は、予定を変更してオリンピック以上に強力なメディア・コントロールが行われている現状を鑑みて、このドキュメンタリーを取り上げてみたわ。
そのウワサは、各所で聞き及んでいたけれど……。
実際に、ジャニーさんと《関係》があった当事者のインタビュー映像を目にすると、その内容の生々しさにショックを受けるというのが、第一印象。
しかし、それ以上に異様なのは、被害にあった人たちが、判で押したように、ジャニーさんの行為を犯罪と認識しながらも、彼を神格化して、崇めていること。
番組内で何度も指摘されることになる「グルーミング」と呼ばれる対象者への懐柔策の巧妙さ、そして、その影響力の大きさ、期間の長さに驚かされるわ。
その関係性は、ある意味で崇拝に近いと言っても良く、実際にインタビューに答える関係者が一様に、
「ジャニーさんは、神のような存在」
と話している点に、取材者の顔色が蒼白になっていく場面は、特に印象的。
実際のところ、人によっては、性的虐待のトラウマのせいで、精神的苦痛を加害者との親密な関係に上書きしたくなることがあるそうね。DV被害の妻が、夫から愛されていると信じている、夫が暴力を振るうのは自分にも問題があったせいだ、と考えがちなのと似ているんじゃないかしら。
加害者は、それを知っていて、利用する。欧米の警察では、この手の「グルーミング(手懐け行為)」と支配的行動を見抜くように訓練を積むようになったそうなんだけど……。日本では、こうした側面に、まだまだ理解が進んでいないようね。
もうひとつ、番組の取材者を困惑させたのは、日本人の大多数に知られる人物でありながら、ジャニーさんが顔写真の公開を頑なに拒んでいること。
私たちの記憶にもあるように、ジャニーさんの死亡報道の際にも、限られたショットの写真しか使用されなかったけど、ドキュメンタリー番組を制作する上で必要ない取材対象の写真すら、まともに入手できない取材中の状況が、そのまま放送され、この事務所の影響力の大きさをあらためて感じさせられるわ。
所属タレントを各メディアに数多く登場させて、テレビ・ラジオ・雑誌・スポーツ紙と共同歩調を取り、自分たちに不都合な報道をするメディアには、タレントの出拒否をチラつかせるという日本の芸能事務所の「アメ」と「ムチ」によるメディア支配の方法は、広報部の人間として、見過ごせないところね。
そして、番組終盤でジャニーズ事務所本社への取材を敢行するあたりから、放送の内容は異様な雰囲気になってくる。
刑法に照らし合わせても違法な行為が行わているいる実態があるにも関わらず、事務所は所在に応じないどころか、事務所ビルの内部だけでなく、外観すら撮影を拒否するという異常なまでに警戒感を強める対応には、カルト宗教じみた空気すら感じられたわ。
あれだけ写真の公開を拒否しながら、事務所の入り口には、ジャニーさんの巨大な似顔絵が飾られているなど、「これは、もはや偶像崇拝の領域なのでは?」と思わせる光景は、映画の『ミッドサマー』や『ウィッカーマン』を観賞した時の不気味に近いものがあったわね。
実際には、過剰なまでに制限の厳しいメディア対応やアメとムチによる報道管制については、メリー喜多川さん・藤島ジュリーさん親子が関係しているという話しが聞こえてくるけど、続編があれば、ジャニーズ事務所の性加害問題と同様に、事務所によるメディア支配に関する内容の制作も望みたいところだわ。
このドキュメンタリー番組は、放送後も、アマプラなどのBBCチャンネルを契約することで視聴が可能なので、国内のテレビ局では絶対に放送できない内容をぜひ、その目で確認してほしいと思う。
本日の更新
第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑯」
今回もお楽しみください。
(芦宮高校広報部・花金鳳花)