『初恋リベンジャーズ』の第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑩」を投稿しました!
第4章の告知では、『初恋リベンジャーズ』という作品を執筆するにあたって、参考にした作品を作者に代わって紹介中!
第十回目の今回はこちら!
『グレート・ハック SNS史上最悪のスキャンダル』
製作:ネットフリックス
監督:カリム・アーメル
〜レビュー〜
2016年の英国の欧州連合離脱(ブレグジット)と米国大統領選挙をきっかけに明らかになったSNSの闇。その象徴ともいうべきデータ会社ケンブリッジ・アナリティカと一連の事件に関与した人々を追う。同社の内幕を描いたドキュメンタリー作品。
昨日は、SNSを利用する個人に注目したドキュメンタリー作品を紹介したけど、今日ご紹介するのは、ソーシャル・メディアがもたらす社会の分断と国政選挙に与える影響を実際の事件に関わった企業に絞って取材した一本。
この作品は、ケンブリッジ・アナリティカ社の内部告発者ワイリーと、同社がマーケティングに利用したデータを取り戻そうと申し立てを行う大学准教授キャロルの二人の視点を中心にストーリーが展開していきます。
私たちがSNSプラットフォームの使用と引き換えに、大量の情報をシェアしていることは、昨日の『監視資本主義』でも取り上げられていたけど、それは、「無料」アクセスの対価として、実質的に自分のデータを提供し、このデータを世界中の企業や広告主や政治団体がそれぞれの目的で利用していることは、あらためて説明の必要はないかも知れないわね。
これが、自分たちの日常生活や投票行動とどう関係するのか?
ワイリーとキャロルが語るのは、ケンブリッジ・アナリティカ社は、SNSにシェアされたデータを入手していただけでなく、使用許諾契約書の条項に従って利用者のソーシャルグラフからデータを収集することも可能で、同社はこのデータを使って、米国の有権者の心理的プロファイルを構築していたの。
ここで、三人目の重要人物として登場するのが女性エンジニアのブリタニー。
彼女は、かつて民主党のバラク・オバマ陣営でインターンとしてSNSを担当しましたが、その経験を後に共和党で生かすことになる。ケンブリッジ・アナリティカ社の一員として、最初はテッド・クルーズ、後にドナルド・トランプの陣営で、前回同様SNSを使って選挙に大きな影響を与えることになる。
その手法は、人々のソーシャルグラフからデータを入手し、彼らが過去に接した情報を、投票行動に影響するように作り変えて再構築するというもの。こうして作り出された情報は、必ずしも事実に基づくものでもなければ公平なものではないにも関わらず、効果的に使われることにる。
いわゆる「フェイク・ニュース」が、作られる過程と多くの人達に信用される流れが、わかりやすく描かれていて、とても興味深い。
こうして、彼女はストーリーの中心人物となっていくの。彼女の演じる役回りは、ストーリーが進むに従って悪役→ヒーロー→殉教者→途方に暮れる主人公と変遷していき、最終的にはケンブリッジ・アナリティカ社における自分の行動を内省する姿を見せていく。彼女の証言と告発は、このSNS時代における選挙というものに対する私たちの見方の形成に影響を与えるんじゃないかしら?
一人の小さな登場人物が大きな問題の中心となっていく物語は、滑らかに紡ぎ出されるストーリー展開も相まって、速いテンポで進んでいき、ドキュメンタリーというより、それは、まるで心理サスペンス映画を観ているよう。ネットフリックスの製作チームの手腕には、本当に脱帽するわ。
個人がSNSを利用することについて、そして、社会はSNSと、どのように向き合うべきかを考えさせてくれる優れた作品なので、SNSの持つ影響力に興味を持っている人には、ぜひ観てもらいたい一本ね。
本日の更新
第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑩」
今回もお楽しみください。
(芦宮高校広報部・花金鳳花)