『初恋リベンジャーズ』の第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑦」を投稿しました!
第4章の告知では、『初恋リベンジャーズ』という作品を執筆するにあたって、参考にした書籍などを作者に代わって紹介中!
第七回目の今回は映画をご紹介!
『ヒトラーのための虐殺会議』
製作:Constantin Television=ZDF
監督:マッティ・ゲショネック
〜レビュー〜
一九四二年一月二◯日、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある邸宅に、国家保安部代表のラインハルト・ハイドリヒに招かれたナチス親衛隊と各事務次官が集まっていた。高官十五名と秘書一名によって開かれた会議の議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。それはヨーロッパにおける一一◯◯万人のユダヤ人を計画的に抹殺することを意味していた。ユダヤ人の強制移動、計画的殺害などを含む方策に異を唱える者が一人もいないまま、たった九◯分ですべては決まっていく。
昨日は、ラインハルト・ハイドリヒの半生と暗殺事件を描いた小説を紹介したけど、今日、取り上げるのは、そのハイドリヒが取り仕切った、いわゆる「ユダヤ人問題の最終的解決」を決定した《ヴァンゼー会議》そのものを扱った歴史映画。
(原題の『Die Wannseekonferenz』は、ヴァンゼー会議の意味)
ハイドリヒの悪名は、暗殺の舞台となったプラハで、副総督として、現在のチェコに対して苛烈な統治を行ったことと、この「ユダヤ人問題の最終的解決」に関わる会議を進めたことで広まったと思うわ。
ヴァンゼー会議の議事録を元に構成された本作を観賞して感じるのは、議題である「ユダヤ人問題の最終的解決」という曖昧な単語からも想像できるように、東部戦線の戦場や強制収容所で行われた非人道的な行為を直接的な言葉では表現せずに会議が進んでいくことの恐ろしさね。
第二次大戦時に行われたとされるジェノサイドの実態を知らなければ、この作品の中で交わされている会話の内容は、行政やビジネスの場での会議にしか感じられず、あまりにも淡々と進むミーティングで人類史に残る虐殺行為が決定されていったことに戦慄を覚える。
エンドロールも含めて、BGMのような音楽が一切排除されていることもあって、会議の前にハイドリヒとアイヒマンによって、綿密に作られた計画が事務的に承認されていくようすは、観客である自分自身が会議の一員になったと錯覚させられるような独特の迫力があって、観賞後には、フィクション作品では味わえない、言いようのない感覚に襲われたわ。
極度にシステマチックになった官僚たちの間で行われる効率的な会議の実態と、人間性を失った組織の暴走ぶりを派手な演出なしに描ききったドキュメンタリー的な手法に敬意を表したいと思う。
前回の『HHhH』以上に、観賞者を選ぶ作品ではあるけれど、組織運営や官僚組織の負の側面に興味がある人には、絶対にオススメの作品よ。
本日の更新
第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑦」
今回も楽しんでください。
(芦宮高校広報部・花金鳳花)