『初恋リベンジャーズ』の第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑥」を投稿しました!
第六回目の今回はこちら!
『HHhH (プラハ、1942年)』
出版社:東京創元社
著者:ローラン・ピネ
〜レビュー〜
ナチにおけるユダヤ人大量虐殺の首謀者ハイドリヒ。『金髪の野獣』と怖れられた彼を暗殺すべくプラハに送り込まれた二人の青年とハイドリヒの運命。
ハイドリヒとはいかなる怪物だったのか?
ナチとはいったい何だったのか?
登場人物すべてが実在の人物である本書を書きながら作者が、小説を書くということの本質を自らに、そして読者に問いかける意欲作。
本書のタイトル、『HHhH』とは、ドイツ語の《Himmlers Hirn heisst Heydrich》(ハインリヒ・ヒムラーの頭脳すなわちハイドリヒ)の頭文字を取ったもの。
日本では、あまり知られていないようにも感じるけど、本書のハイライトとなる「ハイドリヒ暗殺事件」は、
・死刑執行人もまた死す
・暁の七人
・ハイドリヒを撃て
そして、本書の映画化である『ナチス第三の男』と、何度も映画化されているテーマ。
本書は、作者が世界的に認知度の高い「エンスポライド(類人猿)作戦」と事件に関わった人物を丹念に取材して書き上げた作品。
歴史的事実をテーマにしているにも関わらず、作者の一人称で描かれる本作は、何かに取り憑かれたように事件の調査を行う作者の巧みな語り口で、事件探求の推移を見守るうちに、いつの間にか、この暗殺事件に巻き込まれたような、不思議な感覚を味わえるわ。
この独特な手法には、賛否が別れているようだけど、フランスの新人文学賞であるゴンクール賞(日本なら芥川賞に相当するのかしら?)を受賞しているだけあって、面白さには自信を持って太鼓判を押せる内容。
物語が進むにつれて、作者自身の暗殺実行者二人に対するの深い共感、名もなきレジスタンス協力者への敬意と賞賛が文章から溢れ出るのが感じられて、とても感銘を受けたわ。
また、プロットとしては、主人公と言っても良い暗殺者の二名が、物語の中盤まで登場しないなど、スタートダッシュを求められるWEB小説にとっては参考にならない点も多いのだけど、迷いながら執筆を続け、「物語を書く」ということに対する生みの苦しみが躊躇なく記されている点は、小説を書く人の多くが共感するんじゃないかしら?
前提となる知識として、第二次大戦の推移やナチスドイツの組織形態、そして、本書の一方の主役と言っても良いラインハルト・ハイドリヒの半生や人となりに興味を持てないと面白みが半減するかも知れないけれど、それらに興味を持っている人なら間違いなく楽しめる一冊だと思うわ。
創作を志し、実践している人には、ぜひ読んでもらいたい作品ね。
本日の更新
第二部・「第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑥」
今回も楽しんでください。
(芦宮高校広報部・花金鳳花)