『小説に使える裏社会知識』の第五章一話の、最後の一段落は、本当はそれに携わる職員としては書いちゃいけない一文なんですよね。
でも、そういう仕事してると、相手の状況によってはそう言いたくなってしまうこともあるんです。
ってことで、つい書いてしまいました。吐き出したかった。
ごめんなさい。だから、後でこの一段落は消すかもしれません。
ついでに、このノートも消すと思います。だから、コメントは付けないで。
でもね。
もう、あんたの財産しらみつぶしに調べて、お話も散々伺った結果、あなたは完全に詰んでしまっていて、間違いなく裏の悪い人たちに食われつつあって、近々やくざに沈められたり拉致られたりしてもおかしくないので、今は税金なんて払わずローン類の督促も全部無視して、競売事件も放っておいて、とりあえず貯められるだけ小金貯めて、夜逃げしてください!お願いします! じゃないと、あんた本当にやばいから!!!!
……って思う人が、たまにいるんです。やっぱり。
んで、そういう人がある日突然、ぷっつりと連絡取れなくなることもあり。自宅に行っても人がいる気配なし。
ふっ、とかき消すように社会から存在が消えてしまう。
そういう時は、ただただ「どうか夜逃げしていますように」って祈るしかないんですよね。
私がずっと気がかりになってる案件が。
繁華街でご商売されてた一家だったんですが、理由はわからないけど暴力団に目をつけられてまして。
店は暴力団に放火され、ご主人は度重なる暴力団員からの嫌がらせの末、自死。
奥さんは、余命いくばくもない病。やせ細って見るからに体調悪そう。でも、お金がなくて満足な治療もできない。
それに、未成年のお子さんが一人。
資産は不動産以外なし。でも、持っていた不動産は、すべて暴力団が不法占拠中。
…そういうご一家が私の担当案件にいました。
その未成年のお子さんに、お母さんが亡くなったらすぐに相続放棄して、この土地を離れな、って言いたかった。君の家族を壊したこの黒い負債を絶対に継いじゃいけないって。
懸命に生きて立ち向かってる奥さんの前では、そんなこと言えなかったけど。
でも……どうにか、あの子には幸せに普通の人生を歩んでいてほしいな、と今でも時々思い出してはそう祈りたくなります。