ギフトいただきました!
の、報告ばかりではどうにもアレな気がしてならなかったため、久方ぶりに読み物になりそうなものをぶん投げます
――というのはたぶん半分くらい建前で、実際のところはこういうの書きたいだけなんですけれども。
「こいつはこういうこと考えながら書いてたんだな…」みたいに、楽屋裏を見る感じでお楽しみいただけるものであれば勿怪の幸い。
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【ユーグ・フェットと《ヒョルの長靴》の冒険者達/補記】
・主に、本編でおおよそ想定されていた出番が終わった、ユーグとロキオム以外の《ヒョルの長靴》の冒険者達について。
あとは、今後も続投の二人に関して軽く補足など。
・ユーグのキャラ語りをした際にも触れた覚えがありますが、もともとこのパーティはユーグ以外――当初の時点ではロキオムも含め――一章の完全なモブで、「突っかかってくる雑魚集団の中で唯一抜きんでた」ユーグのとりまき兼引き立て役で用意した名無しのモブでした。
名前に関しても、流れの都合で名前を呼んだ方が自然なロキオムだけその場で名前を付けたというくらいで、残りの三人は登場時点だと完全な名無しでした。そもそも名前つけとく理由すらないくらいの書き割りだったし…。
で、後々になってユーグを再登場させる段になって、パーティメンバーである彼らの扱いをどうしようか――という段になって。
①シド達と出会う以前の段階で、《箱舟》に挑むのに嫌気がさしてパーティが解散している
②シド達と出会う時点の段階ではまだパーティを組んでいて、シドの初探索にも同行する
――の、どちらかという塩梅で天秤にかけた末に、結局、後者で話を進めることにしました。
いっそ、シドが到着した時点で《箱舟》のどこかで全員行方知れずになっていました、みたいな扱いにするルートも考えたのですが、これはのっけから話が重くなりすぎそうだったため没。これは、欲を言えばキャラ立ての布石を巻いたユーグくらいはもうちょっと出したかったから、というのも理由なのですが。
・本編で②を選んだ理由は至ってシンプル。
やられ役とびびり役、驚き役がいてくれた方が、話を進めやすかったからです。
・ロキオムに関しては、先に名前を出していたのと、一章で情けないところを書いた分で妙に愛着ができてしまい、彼に関してはユーグ共々続投という方針で舵を切りました。一章の時点で、ユーグに「酒さえなければまあまあ気のいいやつ」なんてフォローを言わせていたのも、あの段階で既に彼を使い切りのモブで終わらせるのに躊躇いを覚え始めていたせいです。
もっともあの時点では、自分の判断が後々どっちに転んでもいいように天秤の帳尻を合わせておきたかった、というくらいの布石でしたが……上述の通り、パーティまとめて全滅ルートも視野に入ってはいたので。
残り三人は《箱舟》初探索での使い切りという想定のもと、全体として「嫌な役」をやってもらう方針であらためてキャラを固めました。
ジェンセン・ヒッグ、ケイシー・ノレスタ、ルネ・モーフェウスという名前も、名前を出す場面を書いていた際にその場で決めたもの。確か、《箱舟》へ入る際にパーティメンバーの名前を呼ばれる的なシーンだったはず。自己紹介に尺を取るつもりがなかったのでさらっと片付けた感じです。
名づけの際は例によって、身近な周囲のメンバーと音がかぶらないようにだけ留意していました。
・三人の作中の役割と立ち位置及びコンセプトは、「驚き役兼やられ役」「性格の悪い女どもと、女どものご機嫌取りに終始するイケメン陽キャ気取りのチャラ男」。
思い返してみると、ここまで明確にシドが腐される場面というのがこれと言ってなかったので――「扱いが軽かった」まで範囲を広げても、ウォーターフォウル号でのサティアくらいでしたし――いい機会だし、「真っ当に成り上がった冒険者から見た《くすんだ銀》の扱い」というのを、毒々しく強調した形で書いておこうかなと思い立った結果こうなりました。アウトロー設定を活かすにあたってもちょうどいい筋立てでしたし。
また、ロキオムの一件から導線を退く形で、ユーグ(今後も確実に登場予定があると決めたキャラ)のブチキレ制裁ポイントを明確にしてもらう感じのシーンに使わせてもらいました。
・三人セットになった結果、ユーグのみならずロキオムともまた微妙に距離がある感じに落ち着いたため、これに伴い主人公のシドに対する距離感を「ユーグ」「ロキオム」「残り三人」でバラバラにする感じへ推移してゆきました。
《軌道猟兵団》なんかもそのきらいはあるのですが、最初セットで考えていたキャラが書いてるうちにじりじり個性っぽいものが見えてきて枝分かれした(と、書いてる側は認識している)、という経緯で現状にまで至っています。
・本編でも言及したとおり、《ヒョルの長靴》は幾度かメンバーの離脱が発生しており、ロキオムはパーティで一番の新参という設定です。
というより、彼だけ他のメンバーより年齢が若いです。この辺は特に言及したことなかったはずですが。
一応ながら、彼だけ他の連中から微妙に立ち位置が離れたのを設定面から補強する形で、後から設定を足したものです。
ユーグ、ケイシー、ジェンセン、ルネの四人がだいたい二十代の半ば~後半くらいなのに対し、ロキオムだけ十代後半~二十代前半くらいの想定です。
・《箱舟》初探索あたりの話を書いていた時点で、ユーグとロキオムはひとまず続投の方針で考えていたため、この二人に関しては
ユーグは、事前に敷いておいた布石に則って
ロキオムは、ユーグの舎弟として
それぞれキャラを立て直す方向にシフトしました。
冒険者としては明確にアウトローで、パーティの仲間との関係もビジネスライクに割り切ってはいるものの、それはそれとしてパーティの仲間がピンチになれば助けに行ってしまう感じの、「根っこは熱い冒険野郎」としてのユーグ。
そのユーグの舎弟ポジで、同じパーティの仲間からは「下」に見られている、立場の弱いロキオム。
意識して描写したものと何となくそうなったものをコミで、だいたいこんな感じに方針が向いたかなぁと思っていますが、どんなもんでしょうか。私的には、泣き言言いながら前衛に立って奮闘したロキオムまわりの描写は割と気に入っていたりするところ。
・あと、ロキオムに関しては《箱舟》探索~後始末の会談にかけて、この先に向けた伏せ札をちょいちょい撒いてます。ちゃんと拾う機会を作れるといいなぁ。
・余談。
RPG的に見た場合の各キャラの「職業」ないし「クラス」は、
ユーグ→メインクラス:戦士 サブクラス:盗賊・魔術士(一人である程度のことはこなせる万能型)
ロキオム→メインクラス:戦士 サブクラス:僧侶
ケイシー→メインクラス:魔術士 サブクラス:僧侶(回復魔法など、補助的にヒーラー、サポーターもこなせる魔術士)
ジェンセン→メインクラス:盗賊 サブクラス:盗賊(探索特化)
ルネ→メインクラス:戦士 サブクラス:フェンサー(攻撃特化のアタッカーポジ)
――といった塩梅になります。
本編中ではRPG的なアレコレはこれといって前に出していなかったかと思いますが、裏ではこういうの考えて遊んでます。
たぶん、ユーグだけ他のメンツより抜きんでてレベルが高い。
・以下、離脱した三名のキャラ雑感。もうこの先言及する機会ないと思うので。
・まずはジェンセン。モブ三人の中で名前を最初に思いついたのがこいつ。
コンセプトは「サンプルキャラクターの盗賊」。異世界ファンタジー系テーブルトークRPGや、あとはウィザードリィ系RPGなどで、サンプルキャラクターとか初期登録冒険者なんかとしていそうな感じの、「盗賊≒探索役」のテンプレートということで。
第一話のパーティだと明確にわかりやすい「探索役」がいなかったので――あのパーティは、シドとフローラの二人で探索と索敵を分担してました、ということにしています――この世界における冒険者としての、「盗賊」のテンプレートです。
名前はたまたま本棚にあったのが目に入った「エリア88」の登場人物から。
名字は、名前と続けて読んだ時に違和感がない感じのものを適当に充てました。
・自分の仕事の領分はきっちりこなそうとするし相応に実力もあるけれど、性格は臆病で小心な、わかりやすい「小物」。
これに作劇上の役割として、「ユーグに制裁される係」を付加。
主人公であるシドをコケにしてゲラゲラ笑ってたけど、ユーグに――あと、フィオレにも――制裁されて痛い目を見る係です。
・「イキっていても根が臆病で、強敵相手にはビビってしまう」という意味ではロキオムも同類なのですが、《箱舟》探索中の描写でちょいちょいとキャラを分けてゆくよう意識していました。
・ルネとつきあっている設定にしたのは、「逃げようぜぇ」と縋りついた挙句突っぱねられる本編のシーンを書くための前振り。
あの辺は書いてて楽しかったです。
ただ、ルネの方が後々のエピソードでユーグに対して妙に執着というか、絡むような言動をしはじめたせいで、何でこいつとつきあってるんだろうというのがいまいちわからなくなってしまいました。いったいどうしてだったんでしょうねぇ。
・ケイシー
コンセプトは「性格の悪い女二人の、語彙力が高い方」。
あとは、後々の展開の流れを作る意味で、ジェンセンとまとめて「ユーグに制裁される係」。
名づけの由来は特になし。名字もコミで何となく音の響きで決めました。
・正味、一個のキャラクターとしては外観も性格もこれといったモチーフがないまま、ルネとセットで何となしに書いていたのですが、キュマイラ・Ⅳの出現辺りからの情けない振舞いが増えてきた辺りで、「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」より、ニセ勇者一行の僧侶「ずるぼん」のイメージが描写上の念頭に混入し始めたような気がしています。
・魔術士という設定でしたがその辺の戦力的なポジションとしては――フィオレをはじめとした上位互換が多かったせいもあって――どうでもいい感じで、ジェンセンと一緒になって《キュマイラ・Ⅳ》にビビり散らしたり、《箱舟》への初探索終了後の話し合いパートでは頭の悪い発言を担当してもらうキャラになるなどして、話を転がす際のアレコレに使いやすく重宝してました。
上述の通りルネとニコイチで設定したキャラだったのに、話が進むうちにいつの間にかジェンセンとニコイチみたいになったなぁと、そんな感慨があります。《ヒョルの長靴》から離れた後もなんやかや旅の道連れになってそうな気がしてます。
・これは彼女に限ったことでないのですが。
後から振り返ると、まがりなりにも「一流の冒険者」らしいところをちっとも書いてやれなかったというか、ジェンセンとセットでフィオレの引き立て役だけで終わらせてしまったのは、どうも構成をしくじったなぁと思うところです。
シド達のみならずラズカイエンや《軌道猟兵団》まで加わって人数が増えてしまったキュマイラ・Ⅳ戦はもうどうしようもないのですが、もう少し前の段階で「一端の冒険者らしいところ」を書いてあげられたらよかったかな、と。「一流の冒険者」の格が下がってしまうという意味で、個人的な反省点。
・ルネ
コンセプトは「性格の悪い女二人の、語彙力が低い方」。ひたすらキモイキモイキモオジキモオジ言う係。
ジェンセンとは肉体関係のある恋人同士という設定で、書くうえでは端々で性的に品のない発言を心掛けました。頑張ってはみましたが、上手くできた気はあまりしません。
・あと、彼女はこちらの役割が重要なのですが、「VS《キュマイラ・Ⅳ》戦のやられ役」。
具体的には、石化のブレスを喰らって石になってもらう係。
一人だけユーグからの制裁を回避したのは、展開がくどくなるから――というのもありましたが、後のやられ役展開へ向けた布石でした。
・相棒のケイシーと同様、名づけの由来は特になし。
名字、名前の双方について他の二人と文字数をずらす形で、一番最後に名前を決定しました。
・石化ブレスは――本編をご覧になった方ならご納得いただけると思うのですが――最後の大詰めで使うつもりでいた技なので、先んじて明確な効果を、なるべく印象に残りそうな感じで見せておきたかったのです。
ついでに、「石になった彼女を救援するユーグ→危機にユーグを救援するロキオム」という形で、この二人の見せ場を作るのにも利用しました。
・ケイシーとニコイチ、ないしジェンセンも含めた三人でワンセット、くらいのつもりで書いていたのですが、VS《キュマイラ・Ⅳ》戦において、当初から漠然と考えていた想定よりも他二人と方針が分かれる感じの台詞が飛び出したため、その辺りから若干キャラが変わったように思います。
何というか、彼女も小物は小物というか、トータルの描写が「身の程が分かってない小物」という形に収斂させるつもりだったキャラではあるのですが、そのうえで、他の二人とはまた立ち位置が変わったかなと。
・これは完全に後から振り返ってそう思ったというだけなのですが、なんか彼女、ユーグに対して変な執着抱えている感じになってしまった気がします。
というより、自意識が強いのでしょうか。プライドが高い?
「自分は他の連中とは違う」「デキる女」だという意識が強いというか…どうなんでしょうね?
・なお八章の離脱劇に関しては、他の二人が「懲りないお調子乗り」なのに対し、彼女に関しては「《キュマイラ・Ⅳ》の石化ブレスで石にされて死にかけた恐怖で心が折れ、静かに冒険者の世界を去る」くらいに話の大枠を考えていたのですが、結果は本編の通り。
何か、思ってたんと違う感じになりました。
ジェンセンやケイシーと一緒に《ヒョルの長靴》から離脱した訳ですが、多分その後にジェンセンとは別れただろうなぁと思ってます。
ルネの方から捨てるのか。ルネの癇癪についていけなくなったジェンセンに逃げられるのか。どちらもあり得そうな気がしています。
・正味、この三人に関しては、本格的に書き始めた時点だと外観の漠然としたイメージしかなく、上述の役割ともとからあったイメージに則って、各々の性格を固めていった感じが本編の様相なのですが。
私的には予定していた出番をほぼ書ききった現時点で――いいところを書いてやれなかったな、という一点を除いて――最終的な仕上がりに満足しています。
物語の本流からは離脱と相成りますが、どこかで幸せになっていておくれ。