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【設定】コース料理に関するこもごも

近況ノートではおひさしぶりです。


当世のライトノベルで書かれる「豪華な料理」に関して、次のように言及されたことがあるそうです。

「何ですかァくぉれはァ! ホテルのコースメニュー引き映しじゃないですかァッ、これはいけませんねェ~~~~ッッ!(意訳」

――そうかいそうかいそれなら違うとこから元ネタ引いて来たるわボケェ!!!!
というところからトリンデン邸におけるコースメニューの設定は始まりました。

なお実際はこのような嫌味な言い方はされてませんし私も別に怒ってはいません。基本的に上記の内容は演出過多です。


とはいえ、元ネタをホテルのコースメニューから外してやろうと意図したのは本当で、ベースにしたのは、入船山記念館で展示されている戦艦出雲で供されたメニューだというコース料理。
実際に行ったとき記録した中にその辺の記載が残ってなかったもので、ぐぐって調べたまた聞きですが。
元ネタのメニューは、

サーモンと西洋野菜のテリーヌ
アスパラガス・スープ
ボイルド・フィッシュ
シチュードチキン
ローストビーフ
タピオカプリン黒豆添え
アイスクリーム

上記のほかにパンとコーヒーがついてました。
ここからいろいろ足し引きして、

野菜のテリーヌ(野菜でまとめているのは、世界観的に「西洋野菜」はないですわーという都合によります)
じゃがいものポタージュ(本編中で茹でアスパラを添えてるのが元ネタの名残り)
鴨のロースト
【川魚】のムニエル(※魚の種類が未決)
ロッシーニ風ステーキ(フォアグラとフィレステーキを重ねてトリュフを削ったもの。ホテルコースのメインディッシュとかでたまに見かける。「ロッシーニ風」の名前は発案者である音楽家ジョアキーノ・ロッシーニに由来するとか)
アイスクリーム

…に変更。
で、ここからまた紆余曲折。

野菜のテリーヌ
まず、世界観的に「西洋」とつくのはおかしいので「茹で野菜」という形で省略。
サーモンも省きました。

その後、実際に書きはじめる前にたまたま現物を食べる機会があったのですが、その際に私が食したテリーヌは、フォークに差して一口しようとすると間違いなく口に至る前に崩壊するやつでした。
そも、ゼリーだか寒天だかで野菜を固めているだけのしろものなのですから、そんな食べ方したら崩れるに決まっているのですね。

なので、別の料理にしようかと悩みました。
しかしオードブル風のちょうどよく、かつシーン的に見合うものを他になにも思いつけなかったため、現行の形で強行。トリンデン卿がテリーヌを一口した際に野菜がぼろぼろこぼれてるのは上記の経験に基づく描写でした。
なお、実際に本編中のような食べ方をしようとした場合、フォークで突き刺した部分以外はぜんぶ脱落して皿に落ちるんじゃないかなと思います。

ついでに、自分が食べたやつは外周に生ハムを巻いていたのでそこも描写に反映しようかとも思いましたが、なんか描写上のノイズになりそうな気がしたのでこちらも省略。
以上の流れを経て「茹で野菜のテリーヌ」で確定。


次、ジャガイモのポタージュ
アスパラガス・スープだと、現代の感覚的にちょっと……というのと、味の想像がつかないというのと、自分の好みからポタージュ系に変更。
コーンポタージュだとさすがにありふれすぎていてハイソ感がなさそうな気がしたのでじゃがいものポタージュということで仮決め。

冷製スープ系にするのもちらっと考えなくはなかったのですが、子供はあったかいスープの方が好きだろうなーと(偏見)いうことであったかいじゃがいもポタージュで確定。

元ネタは茹でアスパラを添えるところに残しました。


順番を変えて魚料理のムニエル
アスパラガス・スープ同様、「ボイルド・フィッシュ」では現代の読者感覚的に貴族の食卓として腹落ちしないだろうなぁということで多少はそれっぽく描写できそうなムニエルに変更。
設定上、コートフェルはルクテシアの内陸部なので、川魚のムニエルで方針を決定。幸い、近場を水源になる川が流れているという設定もありましたし。

で、川魚なら鱒でいいや、ということで鱒のムニエルで確定しました。
これは実のところ、遠野の頭でぱっと思いつく食用の川魚が、岩魚・鮎・鱒くらいしかなかったせいです。

海の魚にしなかったのは、内陸住まいの都合上、海のものが出てきたら好奇心の強いランディや物知りのユーティスあたりがそこに言及しないのは描写上不自然と思われたから。そのため、「ムニエル」という形で食したことがあるかは別として、比較的身近であろう川魚に的を絞った結果が現状です。

分量の都合上、言及するメニューはメインディッシュになる肉料理、それとスープの二つという形で、書きはじめの時点から絞っていました。結果的にデザートのアイスにも言及しましたがそこはそれ。

「季節的に鱒が出てくるのおかしくない?」みたいなツッコミがありえるのではないか、というのに気づいたのは世に出した後でした。
現時点でまだその辺調べてないというか、もう世に出したのでその辺は諦めました。実際のところどんなもんなのでしょうね。


鴨のロースト
ロッシーニ風ステーキ
ここはまとめて。本編で出てきたのは「デミグラスソースをかけたフォアグラのホットスライス」と「柑橘のソースで仕上げた、鴨のローストとベオク牛のレアステーキ」でしたが、初稿――というか、書き始めの段階では上記のメニューでした。
何でわざわざ変えたのかといえば、

そういえば、ちょっと前に柑橘ソースでいただいた牛ステーキ、おいしかったなー

…というのを思い出したせい。

いえ、ロッシーニ風ステーキもおいしかったですけど。
記憶に新しかったのが柑橘ソースの方だったんです。あとロッシーニ風は説明が面倒。ロッシーニさんおるんかいあの世界に、というのを説明するのがいまいちぎこちない気がしてしまって。

かくして、フィレステーキと鴨ローストを合わせて柑橘のソースで仕上げた肉料理が爆誕しました。
こんな合わせ方は実在しないんじゃなかろうかと思います。
実在してたら笑います。

で、余ったフォアグラを、メニュー上で鴨のローストを置いてたところへ移動。

フォアグラにデミグラスソースをかけたのはなんとなくです。
さすがにフォアグラをどどんと出してそれきりというのは、こう…他のメニューに比べて描写薄すぎというか、箔が足りない気がしたので、なんとなく。
「魔法あり近代」くらいの年代設定と考えるとデミグラスソースはまあまあ豪華なんじゃなかろうかと思いますが、実際どんなものでしょうね。


以上の流れを経て完成したメニューが、

茹で野菜のテリーヌ
じゃがいものポタージュ
デミグラスソースで仕上げたフォアグラのホットスライス
ボイル野菜を添えた鱒のムニエル
柑橘のソースで仕上げた、鴨のローストとベオク牛のレアステーキ
アイスクリン

という、本編のメニューです。
あらためて見返してみるとフォアグラ以降がだいぶん脂っこいですね。
あと、茹で野菜のテリーヌとボイル野菜を添えたムニエルで茹で野菜がかぶってしまったぞ?

余談として、デザートのアイスクリン
アイスクリン、現代では「牛乳の代用品として鶏卵、脱脂粉乳などを使って作られたアイスクリーム風の安価な氷菓」の名称らしいですが、作中ではアイスクリームの異称として用いています。

大正浪漫風の呼び方です。
こっちのほうが時代がかってるというか、「現代日本と違うどこか」感があっていいかなー、ということでなんとなく。


ありがちなコースメニューのようですが、このようにいろいろこねくりまわしていたのですよ、という、それだけのお話でした。
「こんなことばかり考えていてこいつ暇なのか…?」くらいのアレでご笑納いただければ幸いです。

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