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血染めの手7

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093090227140506

救わなければならない。人も、世界も。




 本当に救いたいのは自分自身なのではないか。

 誰かにそう問われたら、俺は反論できなかっただろう。そもそも最初から転生など望んでいなかったし英雄になりたいわけでもなかった。ところどころで死を望んでいたのも事実である。仕立て上げられた救世主のガワにはうんざりしていた。そんな俺がどうしてここまで義憤を発揮していたのかといえば矮小な自意識が利己を否定していたからだ。自分のせいで誰かが犠牲になるという責任もそうだし、死んでいった者が自分を恨むのではないかと思うと心臓がずんと重くなって嫌な気持ちになった。俺は誰からも愛されたいと思ってしまうし、誰とも戦いたくはなかった。これは優しさではなく、ただ弱いだけである。

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