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血染めの手5

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093089834516094

「こんな事があるか。こんな理不尽が……不条理が許されて堪るか! どうしてこんな事になる! 無茶苦茶だ! これで世界を救うなど、できるわけがない! どうしようもないじゃないか!」





 思わず叫ぶも、声は虚しく響くばかり。解決の糸口も見つからないまま星明りを背にして地に伏す。そのまま勢いよく振り上げた拳を叩きつけるも、手の痛みが走るだけで何ら益がない。エッケハルト・フライホルツに監禁された際の事を思い出したが、これはその時と違ってまったく意味も意志もない単なる自傷行為であった。





 こんな死に方があるか! こんな滅び方があるか! 好きで転生したわけじゃないが、生きるために必死で頑張ってきたのに! この世界の人間だってそうだ! こんな最後は望んじゃいないはずだ! それを、こんな……! 何の因果も因縁も絡まない終わり方なんて……!





 涙を流し、何度も大地に拳を打ち付ける。血と涙で大地が湿り、手に付いた砂利が固まって小指から手首まで食い込んだ。しかし、痛みでも、皮下に異物が入る不愉快さでも、俺の衝動は抑えられない。力なき自分を呪い、立ち行かない運命を呪い。どうしようもない世界を呪った。が、冷静さが少しずつ目覚めていき、因果、因縁、という言葉がイメージとして次第に大きくなっていった。この事象は本当に超自然的に発生した宇宙の意思なのか。そんな事が起こり得るのかと、疑義が生じたのだ。

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