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血染めの手1

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093089022567625

人を殺してはいけない。



 子供の頃誰しもが聞かされた事だろう。そして、誰しもが一度はこう思った事だろう。




「じゃあ、自分や大切な人が殺されそうになったら?」





 その子供の問いに大人はどう答えるのか。同じ質問をしたのに、俺は大人の口から出た返答を覚えていない。きっと上手く答えられなかったから、頭の中に残らなかったのだろう。他の人間もそうだ。明瞭な答えを得られなかったから、自分の子供に同じ質問をされても分からない。子供達も、忘れた頃に同じ問答を繰り返す。





「人を殺してはてはいけません」



「じゃあ、自分や大切な人が殺されそうになったら?」





 ファンダムで生きていた頃、俺は子供でもあり大人でもあった。まぁ子供なのは身体だけであり精神面と脳は中年間近のつまらない独身男性のそれだったわけだが、自身から立ち込める若さの香りに芳烈すると、実年齢から離れた自我が芽生えて傍らにいる時があった。そして、若い俺は人を殺す事に対して躊躇する俺に言うのだ。「自分や大切な人が殺されそうになったら」と。

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