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文明要因図(✡)の変更について

 以前の文明要因図では、文明活動の開始点である科学・技術を六芒星(✡)のてっぺんに置いていましたが、60度ずらして自然・社会環境を頂点にしました。

 上から右回りに、人間は①自然・社会環境の中で②科学・技術(始めは経験的技術ですが)を獲得し、③物的資源に具現化して、④経済・社会活動を豊かにします。その余裕を生かして、⑤人的資源を育成・確保することにより、経済・社会を健全に保つための、⑥制度・政策を実現していく。またその制度・政策が、自然・社会環境の影響を受けながら、次の科学・技術を開発・普及していく……以上が、長期的な現象面の流れです。

 こうすると、下(手前側)の経済・社会活動と上(向かい側)の自然・社会環境が相対する位置になって、生物と環境の相互作用というところが明確になると思ったからです。

 時々刻々の実体面でいうと……まず一見すると……全ての人が営む、文明活動の本体である経済・社会活動が、そこから専門分化した右手の科学・技術と左手の制度・政策で、土地を開発したり外交交渉をしたり、文明内外の自然環境や社会環境に働きかけて、自らを豊かにし、健全に保つかたちです。

 また、そのためには、経済・社会活動の近くすなわち文明の内部環境に、右ひじに当たる物的資源や、左ひじに当たる人的資源を作り出して、経済・社会活動に取り込み、活かせる人々や必要な人々に再投資・再分配してゆかねばならない。

 しかし重要なのは、制度・政策が人々の活動からなる社会環境に働きかけると言っても、実質的にはこれまでの自分達自身に働きかける、経済・社会活動の自己制御という部分が大きいのではないかということです。民主主義やグローバリゼーションが進展する今日では、特にそうかもしれません。外交も大事ですが、まずは内政で国が立っての外交ですし、大きな目で見れば外交も、人類自身がどうすべきかを話し合う活動です。

 人類は文明により高い生存能力を得ましたが、持続的発展をするためには、環境を操作するだけでなく、自らの活動も自己制御して、環境に適応してゆかねばならない。さもないと資源枯渇、環境破壊、貧困・不公正や犯罪・紛争といった問題が増え続け、かえって生存が困難になってしまう。

 科学・技術と制度・政策は、環境操作にも自己制御にも役立ちます。どちらも自然・社会環境に働きかけるともいえますし、自分達の経済・社会活動を豊かにしたり、健全に保ったりするともいえます。両者は社会工学や技術政策により、お互いに助け合ったりもしています。

 しかし、科学・技術は直接的には主として環境、なかでも自然環境の操作によって自然からの富を増産し、経済・社会を豊かにします。

 これに対して、制度・政策は実質的に見て主に文明活動、なかでも本体である経済・社会活動の自己制御によって、人々の間で富を配分し、技術が変えていく自然・社会環境に人々を適応させて、文明発展に貢献するのだと思います。

 右手は仕事、左手は身づくろいに役立つ、という感じでしょうか。それでもつくろいきれなかった部分が、次の技術開発時における制約要因としての、因習とか既得権益といった社会環境要因として、残るのかもしれません。

 そんな3つの文明活動要因と3つの内外環境要因の絡み合いを示すのに、六芒星(✡)は本当に便利な図形だなと思います。何だかおまじないみたいで、神秘的なハクもつきますし……(笑)。さすがに世界各地の文化芸術で使われた、人気のある紋様だけのことはあります。もちろん、もし他の必要があれば、三日月と五角星や、区切られた背景に星五つのような図形でも表現できると思います。

 なぜ、同じ人々の活動が、社会環境になったり、経済・社会活動になったりするのでしょうか? 『人間には主体としての側面と客体としての側面があるからだ』と言ってしまえばそうですが、特に社会の場合には、『誰から見た活動かにもよる』からではないでしょうか。

 文明内外の環境要因と言っても、環境とは『ある文明活動の主体からみて、今後の活動の基礎となるもの全て』をさすので、『文明活動の主体』という物差しのとり方次第で、文明か環境か、内部環境か外部環境かは変わってくる部分もあると思います。

 例えば、ある国の経済・社会活動は、政策を行う政府から見れば働きかけの対象となる社会環境、でもその政府の政策が国民の意思に基づいているなら実質的には自己制御の対象としての文明活動。ある都市の活動は、他の都市からみれば社会環境要因、国から見れば自国の文明活動の一部。公園緑地は子ども達から見れば外部の自然環境、自治体から見れば都市内の物的資源。見直しの要望もある社会的慣行は、ある人々には日常の社会活動、他の人々には内部または外部の社会環境内の不公正など、といったようにです。

 ああ、簡単な解説図や表紙絵が入れられるようになったらいいなあ……(←こんな所でおねだりしてないで、正式に要望しろよっ!【笑】)。

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