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『文明論』の用語や内容について

1 『科学・技術』は、『科学・工学』の誤りではないか?
 『ああいうときは、ああいうことがある』という一般的な形の社会的事実認識、すなわち法則や、それが体系化された理論を生み出す活動が科学なら、『ああすれば、ああなる』という技術や技術体系を生み出す活動は工学ではないか?
 『科学・技術』はよく対にして使われる言葉ですし、語呂もいいので、こちらを使いました。英語でも、エンジニアリングとテクノロジーという言葉がありますが、後者は技術そのものだけでなく、それを生み出す活動も指すようです。

2 『制度・政策』は、『政治・政策』『政治・行政』の誤りではないか?
 こちらはもっと意図的に、婉曲表現というか、抽象化しました。政治という言葉は、まさしく政治的な印象を与えますし、行政という言葉は政治の実現活動として、経済・社会活動の領域にかかる部分があるからです。自動車の開発や製造は、科学・技術の問題ですが、販売や運転となると経済・社会活動の話になるでしょう? それと同様に、社会的な意思決定の実現活動を含む行政という言葉は、社会的な現実行動すなわち、広い意味での経済・社会活動にかかるのではないか、と思います。そこで、政治や行政という活動の名前ではなく、制度・政策という活動の産物の名前で、活動を指しました。それに、語呂もいいかなと感じました。
 ちなみに制度とは、その内容で見ると『ああいうときは、ああすべきである』という一般的な形の社会的意思決定、つまり法規が体系化されたものです。ただし、その形式に着目すると、『社会的な意思決定を、一般化された法規や、それを体系化した制度という形で定めれば、公正さや効率性が増す』という社会工学的な技術であるともいえます。言葉って難しいですね。

3 『社会工学』と並ぶのは『自然工学』ではないか?
 『自然工学』というと、機械工学などに対し、造園などのように自然物を対象とする科学に限るようなので、『自然科学的な工学』にしました。『○○工学』という用語は、基礎となる科学分野ではなく、操作する対象に着目してつけられる名前でした。だから『社会工学』といっても、基礎とする科学分野でみると、信号システムにおける電気工学・心理学・法律学のように、全ての科学分野を含みます。本当に難しいですね。

4 『社会工学も社会を豊かにするのではないか?』
 貨幣は取引の能率を高めますし、アダム・スミスのピン工場の例のような分業生産も生産性を増やします。ただ、生活を豊かにし、社会や政策を変える技術といえば、農業・工業・情報技術などの自然科学的技術の力が圧倒的のようです。硬貨や紙幣を作れる鋳造・印刷技術や、分業できるような工程数を多く備えた製造技術あっての社会工学的技術ともいえます。そのため、『主に』社会を豊かにするのが自然科学的工学、社会を健全にする制度・政策を助けるのが社会工学、という趣旨で書きました。
 英語では、生産性を増す自然科学的工学をテクノロジカル・イノベーション(技術革新)、それに生産性を増すビジネスモデルのような社会工学も加えてイノベーションと呼び、理解・注目しているのかもしれません。

 

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