https://kakuyomu.jp/works/16816700426819574403/episodes/16818093090083017839皆様ごきげんよう。前回に引き続き本作の小ネタみたいな話です。
今回は作中の人物の中でも色々酷いあの方のお話でもしようかと思います。
それでは、レイヴンで1番牢屋が似合ういい女 イース・バカラさんの話です。
いきなり年齢の話をすると炎が飛んできそうですが、彼女は現在ざっくり500歳くらいです。バブルガムよりも少しだけ歳下ですね。
レイチェルがレイヴンの門を叩いた時、バブルガムは10歳そこらなんですが、イースはちょうどその頃におぎゃあと産まれました。さすがに母親のミルクで育ちます。お酒はまだ飲めません。
イースは船貿易で財を成した豪商の家の長女として産まれます。両親は普通の人間です。
成金貴族みたいな家柄のおかげで蝶よ花よと可愛がられて育てられたイースの少女時代は、ハープを弾いたり紅茶を嗜んだりお嬢様として何不自由ないものでした。
しかし、生来の青い髪が原因で家族以外からは不気味がられていました。
両親は、落ち込むイースにこの家は船で財を成した家だから、お前の海色の髪は縁起がいいと言って聞かせました。
やがて時が経ち、反抗期が訪れます。年頃になったイースは美しく成長し、縁談の話も毎日のように飛び込んだのですが、イースはそれをがんとして受け入れませんでした。
しかし、結局無理やり政略結婚の話が決まってしまい、イースの身柄は海を越えて結婚相手が住む国に引き渡されてしまいます。
そして引き渡された当日の夜、結婚相手に迫られたイースは蒼い炎で結婚相手と屋敷を焼いてしまいます。自分が人間ではない何かだと知った彼女は、逃げるように屋敷を後にして、故郷へ帰ろうと海へ向かいました。
しかし不運は続きます。イースは珍しい髪と女神のような美貌で目を引き、奴隷として売り払うために海賊に捉えられ、船に乗せられてしまいます。
が、海賊から始めてうける酷い仕打ちにブチ切れ大暴れし、なんとそのまま海賊船を乗っ取ってしまいます。
家に帰るよりも海賊の暮らしがしょうに合っていると感じたイースは、そこからおかしくなっていきます。言葉遣いは海賊のそれになり、ハープを弾いていた手でサーベルを振り回したりします。
優雅に飲んでいた紅茶の代わりはラム酒になり、お嬢様としての面影は顔面のみとなりました。
数十年の時が経つ頃には、イースは大量の船団を率いる悪名高い海賊になっていました。実家の貿易船まで見境なく襲う様は、同じ海賊を震え上がらせるほどです。
そして、ちょうどイースの海賊船団の勢力が最盛期の頃、船団が巨大なクジラに襲われる事件が発生します。
報せを聞いたイースは怯むどころか意気揚々とクジラ討伐に向かいますが、想像を超える大きさ、そして炎が効かないクジラに返り討ちにあいます。クジラの正体は海で瀕死に陥った魔女の成れの果て、魔獣だったのです。
あっという間にイースが乗った船以外は全て海の藻屑となり、まさに絶体絶命。しかし、その時イースの船に密航していた1人の魔女が刀の一振りでクジラを真っ二つにします。
その人物は、仇討ちのためにフランスに向かっている花合 火花でした。同じ炎の魔法を扱いながらも、圧倒的な強さの火花に惚れ込んだイースはフランスまで彼女を送り届ける対価として一月ほど剣術を教わります。
イースが花合流の剣術を使えるのはそういったわけです。そして、火花と別れた後、イースは海賊を辞めて人の寄り付かない秘境に住み着きます。またまた数十年ほどそこで剣の腕を磨きながら、自分で作った酒を呑んだりして悠々自適に暮らしました。
やがで本格的にぶどう酒を作るためにぶどう畑を略奪しようと考えた彼女は、手近なルーマニアに向かいます。そこで農村を次々と襲ってぶどう畑を牛耳ったイースでしたが、そこに1人の魔女が立ちはだかります。
それがスカーレット・ホイストです。
スカーレットは当事赤い髪のせいで魔女だと誹りを受け、実際魔女なので寄ってきた魔女狩りを蹴散らしながら孤独に生きていました。
しかし、そんな悪名を背負った彼女に1人の青年が優しく声をかけます。直ぐに青年のことが好きになったスカーレットでしたが、青年の正体はぶどう農家の息子で、自分の家を襲ったイースにスカーレットをあてがうために近づいたのでした。
農家の息子が困っていると聞き、スカーレットはイース討伐に乗り出します。
イースはスカーレットと激闘をくり広げます。スカーレットは魔獣化しながらも青年のために闘い続けました。
結局2人の闘いは、イースとスカーレットの悪名を聞きつけてスカウトにやって来たアイビスによって終止符が打たれます。
イースはアイビスの強さに興味を持ち、そのままレイヴンに加入します。
ぶどう畑を取り返したスカーレットは、農家の息子と結婚するつもりだったので一度は誘いを断ったのですが、農家の息子には既に恋人が居て、自分は利用されていただけど知り号泣しながらレイヴンに加入します。
レイヴンに入るなり横暴に振舞ったイースは初日にバンブルビーにボコボコにされます。
火花、アイビスに次いで、3人目の強者がバンブルビーでした。
バンブルビーに負けたのがきっかけで、一人称が私から俺様になります。
というのも、バンブルビーの一人称が俺だったので、憧れて真似したわけですが、それをバブルガムにパクリだとおちょくられて「パクリじゃねぇよ!俺じゃなくて俺様だからなぁ!」と変な意地を張った結果です。
レイヴン加入後もイースの強さへの探求は止まりません。火花の剣術を超えることがイースの夢です。イースはアイビスの部屋に侵入し、アイビスがセイラムの研究書から読み解いた魔導書をこっそり読み漁ります。
そうして魔法式を組み込んで出来たのが彼女の愛刀、夢花火と縦鯨です。大太刀の夢花火には火花を超えるという夢が詰まっています。小太刀の縦鯨は、かつてクジラを真っ二つにした技の再現の意味が込められています。
どちらもアルコール度数高めの焼酎みたいなネーミングでイースにはよくあっていると思います。
そして時はさらに流れ、イースは晴人と出会い、現在に至ります。
ぶっきらぼうなイースですが、部屋は綺麗だったり字が上品だったり、複雑な魔法式を扱えるのにはこういった背景があったからなんですね。
日常動作のように盗みや恐喝をするのも海賊時代の名残りというわけです。
以上、バカに長くなりましたが彼女の知られざる過去はこのような感じです。
目ざとい読者の方は「あれ、龍奈奪還作戦の時、イースと龍奈(外見は火花)会ってない?」とお思いでしょうが、あれはイースが単純に気づいていないだけです。500年の内ほんの一月しか関わっていないうえに、アジア人の顔の見分けが苦手だからです。
こんな風に登場人物にはみんなそれなりのストーリーがあります。しかし作品内で全てが綴られることはないでしょう。尺の都合もあるので。けど、知っていたら知っていたでより深く楽しめるのは間違いないと思い、この場を借りて紹介させて頂きました。
ここまで目を通していただいた読者様は、是非今後イースの蛮行を見た際は「相変わらずイース酷いな」ではなく「相変わらずイース酷いな。元お嬢様とは思えない」と感じてくれると、より一層酷さの深みが増すかと思われます。
それでは、このあたりで。
これからも更新頑張ります。