『カクヨム短歌賞』なるイベントのバナーを見つけた。
はて? ……短歌?
そういえば百人一首くらいしか通って来なかったなぁ。と、思いなんか気になってポチっと。
先生の短歌がいくつか貼られてて、他にも前回イベントの優秀作がザクザク。
「ほえー」
生まれて初めてまともに読んだ。
そしたら、みんな、すごいことしてた。
「……」
で、めたくそに殴られて、ぶっとばされて、しばらく天井を見てた。
「なぁにこれぇ?」
人間。日々。人間、人間、人間……。そして普遍性。
短歌と俳句の世界。
だぁから、松尾さんは日本全国うろうろしてたのか……。カメラも持たずに何してたんだ? と思ったら、あれができればカメラなんかいらないや。
永遠を切り取るなんて言葉にしかできないと知った。
はぁ……。
ひとしきり読み漁って、浸る。すこしだけ冷静になって……。
「……」
レビューを書くのがためらわれる。感想コメントも怖くてかけない。絶対に邪魔だけはしてはならない。一首一首の作品に、決して。あの一首自体が一冊の本……。
……。
もう正直に言おう。フィリピンパブに真っ赤な薔薇百本持ち込む、おとっつぁんになりたくなかった。讃えるための振る舞いが解らない。小説や、せめて相手が詩だったら、エイヤとレビュー出来たかも知れない。でも短歌……。作法が全然わからなひ。
だからここにこっそり書いてます。
感動いたしたのです。
そもそも――。
そもそも、この出来事には前段があった。
夜。『おんもしろいなぁ』と読んでたお話に、スーパー長文のレビューコメントが付いてた。おそらく千数百字。もちろん他人様の小説作品に、別の他人様が書いたレビューです。
中身はと言えば……。
簡単に言うと……。
海原雄山を自認するインドの野良犬が、真っ当な料理人捕まえて、大きな声を出してた類の話。
「なっとらん! こんな物は料理ではない! 今から至高の餌をくわせちゃるからついて来なさい!」
そう言って残飯置き場に案内し、
「さぁかっくらえ! これが本物の餌だ!」
と、いかめしい顔で腕組んでる。
「ヒョエー。なんですこれは?」と、富井副部長。
「そうだわ。ゴミの味よ」と、困り顔のゆう子さん。
「だろう? うんめえだろ?」と、やせ犬。
それがひたすら千数百字。
他人の火事と他人の喧嘩が好きな私も流石にゲンナリ。
自分におきたら「きゃんべんしてくださいよぅ」と泣きを入れる、インド版羅生門なのに、作品を書いた、彼は、彼女は、じっと立ってた。吠えまくる犬に構わず、じっと。
立派だ。と、思うと同時に、レビュー書くのも気をつけなきゃなぁ……と我がふりなおしてみたり――。
そして出会ったすんげぇ世界。
短歌。
うかつに触れたら崩れちゃいそうで、ただ黙って星をぽちぽち。あれにコメントは僕には無理だぁ。
でも。
でも、読んだからには、詠んでみたい。
生まれて初めての欲求。
「さて、何から始めたらいいのかしら?」
今までは『古い遊び』と短歌に触れた経験無し。ゆえに、まったく勝手がわからない。
そもそも、自分が読んでみて思ったことと、他人様が思ったことの違いをまずは知りたい。
……。
「あ。寸評あるんだった」と気づき、参考にしようとて。
そして、再びカクヨムのイベント、『短歌第二回百選発表』の寸評に行きついた。
さて、たくさんの短歌をプロはどう評するのか? と、期待して。
わくわく。
……。
……。
「おいしい?」って聞かれて
「うん」
「どう?」って聞かれて
「赤いね」
……。
表じゃ理想のお父さん。働き者のお父さん。
……。
先生あんまりやる気無し……。
先生の短歌も読んでみた。確かにすごかった。
さぞかしすげえ人なのにぃ……。寸評サービス100連発は流石に無理かぁ……。
そりゃそうだよなぁ。
対して、俳句のセンセ。
句を読んで、思ったこと、浮かんだことを寸評にポリポリ。
「……え? まじで書いてくれてんじゃん……なんでぇ?」
『思おう』と思ったのが嬉しい。『伝えよう』と浮かべたのが嬉しい。
膨大な数の俳句。
「すげえ人なのに、すげえな」
人様の作品なのに、なんだか私も笑顔になった――。
んで、もう少しだけ知りたくなって、たまたま見つけた初心者向けの短歌の動画。
最初に生徒が自由に詠んで、それを添削する様子。
生徒さんも私と同じまっさらな素人。
バラエティで、こんな光景だけは見た事あるなぁ……。なんて思いながら動画を見てた。
そして出来上がった短歌。
先生は、その短歌をホワイトボードに貼り、しずかな声で読み上げた。
生徒同士で「この首は短歌じゃないね」「あぁ、説明文みたいになっちゃったぁ」「まるで標語」と、恥ずかしそうに頬をぽりぽり。
先生は何度も壁に貼られた首を眺め、
「これは立派な短歌です」
真っ直ぐな声。
お世辞にも上手じゃなかった。へたくそだった。
ただ、31字。こころを込めた31字。ただそれだけの31字。
これは立派な短歌です。
言い切った、先生。
なぜだかわからない。涙が出た。
そりゃあ……そうだよなぁ。
千年以上前からやってんだから。
テレビの先入観で、書き上げた短歌を、盆栽みたいにチョンチョンやって、すげぇ綺麗にしてくれるのかと思ってた。
アレはテレビの話であって、その内心、短歌に触れてくれてただ嬉しいって。
31字で詠めば短歌。
こうでなければ、が無いそうだ。
「できた! このAのもっこりはいいぞぅ」と思って一首。
それを読んだ人が「いいですねぃ。このBが実に素敵」「いや背後のこのCがまた――」
えへへ。(なるほど言われてみればそうも読めるかも……)
「あの……。Aについては?」
「ん? あぁ……控え目でよろし」
それでもどうやらいいらしい。
勝手に楽しみ、それをすら受け入れてる。
千三百年の懐の巨大さ。
とはいえ実際、31字で詠めば短歌と言われても。
ベートーベンからすれば鼻唄さえも歌でしょうけども……。
先の長~~い道。短歌道。
心が開いてるときに、読んだり詠んだりしたらいいかも。
これから挑戦してみたいなぁと思って、そんな長話でした。