真田銀次郎10歳。小学4年生だ。
「でさ、もうすぐ発売するウィルってゲーム機が凄いんだよ。コントローラーがリモコンになっててさ、自分が動く事で操作できるんだ」
12月に入ってから夕食時に父親に分かりやすくプレゼントの希望を伝える銀次郎。
「お前はまたその話か。そんなに欲しけりゃ年玉で買えばいいだろ」
兄の金一から小言を言われる。年玉なんか残ってるわけないじゃんかよ。
「でさ、でさ、刀剣スラッシュってソフトがこれまた凄くてさ」
銀次郎は家族からの白い目を気にせずにクリスマス近くまで粘り強くいい続けたのであった。
24日
骨付きチキンとクラムチャウダーをうまうまと食べ、1番大きなケーキを先にとって食べたあとはすぐにベッドへ。
「ふっふっふ、この靴下ならウィルが入るだろう」
自作の画用紙で作った赤白の靴下みたいないれものを眺めてウンウンと1人頷く。
「寝てないと父さんもやりにくいだろうからな。こっそり起きているとか子供っぽい事はしないのだ」
銀次郎はワクワクして寝付けない自分をヒッヒッフーと落ち着けさせ、なんとか寝たのであった。
25日
パチッ!
いつもは何度起こされても起きれない銀次郎は6時に目が覚めた。そして画用紙製靴下を1番に見ると壁に掛けてあったのが床に置いてある。それにあの膨らみ具合……
「やったっーーー! いやっほぉぉおいっ!!」
早朝から奇声を上げて小躍りする銀次郎。
「スリー、ツー、ワン、ゼロっ!」
ビリリリリっ。
1人カウントダウンをして画用紙靴下を破った銀次郎。
「な、なんだよこれ……」
さっきまでの天にも昇る気持ちが見えない手で握り潰されたようになる。
目の前にあるのは、
今から始める中学受験対策
初めての英語
算数は怖くない
etc……
ウィルの箱と同じぐらいの量の参考書達だった。
ドタドタっ。
まだ寝ている親の部屋に駆け込む。
「なんだよあれはっ!」
「朝っぱらからなんだ銀次郎」
「なんで参考書ばっかりなんだよっ。あんなの欲しいなんて1回も言ってなかっただろっ」
「文句はサンタさんに言え」
今日は日曜日。まだ寝ていたいのに起こされて機嫌の悪い父親。
「サンタなんかいるわけないだろっ。あれを置いたのは父さんだろ。俺はあれだけウィルが欲しいって言ってたのにっ!」
「なんだ、お前、サンタさんを信じてなかったのか?」
「当たり前だろ。もう4年生なんだぞ」
「そうか。それは残念だったな」
そう言った父親はそれから何をしようと起きてくれなかった。結局、年が明けてお年玉代わりに父親が買ってくれたが、その後サンタさんは二度と銀次郎の元に来てくれなくなったのであった。
後にマーギンとなる男のほろ苦い思い出である。