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新作、書き殴りプロローグ

タイトル未定 異世界ファンタジー
プロローグ

 始原の谷。
 世界の歪みの起点。
 通常、人間が足を踏み入れることを許されない、禁忌の地。

 緋色に染まった空の下、砕けた大地には黒い霧が立ち込めていた。
 死んだ木々が爪のように空を掻き、風一つない沈黙が支配する。

 フィロモルフォス・クリスタリス—流転学院最年少の「○○○」—は息を潜めた。
 現代最高峰の《《流転者》》として、この場所に立つ。
 繊細な指先が小刻みに震える。
 伝説は本当だったのか—全てを確かめるために。

 もう一人の人影が別の方角から歩み寄る。
 セレニア・ハートワード—「○○○」—彼女の瞳は深い悲しみを湛え、なお毅然としていた。
 《《諧調者》》として、失われた祈りの均衡を求め、真実を知るために来たのだ。

 二つの異なる道を辿り、二つの異なる目的を持つ二人。
 しかし今、彼らの視線は同じ場所に注がれていた。

 谷の中央、時間が歪んだ空気の渦の中に、白色の衣装の少女が座り込んでいる。

「問いの魔女」—
 世界の歪みの源と噂される存在。

 そして、その傍らには──

 漆黒の影が地面に伏していた。
 四肢を地につけ、獣のように身を屈めている。
 破れた黒い鎧は無数の傷痕に覆われ、その隙間からは黒い霧が滲み出ていた。

 魔女の視線が二人の侵入者を捉えた瞬間、傍らの影が動いた。

 地面に爪を立てる音。
 黒い霧が渦を巻き始める。

 影は、ゆっくりと立ち上がり始めた。

 四伏の姿勢から、徐々に人型へ。
 だが、その動きは人間のものではなかった。  
 関節が不自然に曲がり、骨が軋むような音を立てる。
 鎧の破片が風もないのに震え、互いにぶつかり合う金属音が谷に響いた。

 立ち上がるにつれ、体から漏れ出す黒い霧は増し、やがて周囲一帯を包み込む。
 霧の中から現れた姿は、かつて人だったものの残骸のようだった。

 漆黒の鎧の胸には、大きな穴が空いていた。
 その穴から、心臓があるべき場所から、濃い霧が脈打つように流れ出している。

 最後に、鎧のヘルメットの隙間から、二つの赤い閃光が放たれた。

 血のように澱み、炎のように揺らめく瞳。

 騎士の赫い瞳が二人を射抜く。
 その視線には理性の欠片も見えず、ただ原初の敵意だけが宿っていた。
 低い唸り声が徐々に高まり、やがて地響きのような咆哮に変わる。

 黒獣の騎士は一歩を踏み出した。
 その一歩で大地がひび割れ、黒い霧がより濃く彼を包み込む。

 始原の地の黒き獣の騎士。
《《繋留者》》ー血肉の再編者
 ルヴァント・フェルムがそこに立っていた。​​​​​​​​​​​​​​​​

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