小説を書いていると、
急に筆が止まるときがある。
何も出てこなくて、
ただ画面のカーソルが点滅するだけの時間。
そんなとき、
『世界の美しい街』みたいな動画を眺める。
頭を空にして、ぼぉっとする。
それが、
いつの間にか自分の異世界の背景描写になったりもする。
そしてある日、出会った。
こんな街――
白と青に染められた、夢みたいな階段の街。
消防車も救急車も、ここでは気にされていないような、
絵画の中の街。
でも、きっとここで暮らしていたら、
世界が違って見えるんだろうな。
毎朝目を覚ますと、いつも眼下にこんな景色が広がっている。
今、家の窓から見えるものは、
どんよりとした秋の空と、マンションに立体駐車場、コンビニの看板……。
白と青――贅沢すぎる街とは違う。
だけど、
こんな景色の街で暮らしていたら、
きっと小説なんて書けない気がする。
だから、今の景色でいい。
どんよりとしたこの街で、
実際に見たこともない世界だからこそ、
小説の想像の中にだけある街を書けるんだと思う。
それだけで十分。
だって――
異世界は、現実の外にあるから、書けるんだ。
