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【掌編小説】片割れ

 ずっと先だと思っていた未来は思いの外早くにやってきた。今日、片割れが家を出てゆく。これまでずっと同じ道を歩んできた私たちは、初めてばらばらになる。
 私の隣には、いつもあなたがいた。何だってあなたの方がうまくできて、私は随分劣等感に苛まれたものだ。あなたがいなければよかったと何度思ったことだろう。性格だって合わなくてしょっちゅう衝突した。こんな関係を羨ましいなんて言ってくる輩が心底嫌いだった。二人一つに生まれてきたほうがどんなによかったか、比べられる度、喧嘩する度に考えた。でも暫くすると、やっぱりあなたのことが恋しくなる。絆なんて簡単な言葉では表せないものが、私たちの間には確かにあった。
 そんなあなたとも今日でお別れ。いつまでも一緒にいられるわけないのだと分かってはいたけれど――。

 引っ越しの日は生憎の雨。玄関先であなたを見送ることにした。精一杯いつも通りを装ってあなたに告げる。

 またね。



#出会いと別れ短編集

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