唐突なイチャイチャ回、といっても190話ラストでイチャの気配はあったので、予想してた方いらっしゃるかも?
全体的にマクシミリアンがビーに甘くて、触れたいというのは全面に出ているので、本当に苦手な方は初期でリタイアしてる気がしなくもないのですが、
それはそれとしてそこそこ露骨な内容が苦手な方や、年齢的に読まない方が良いかも、という良い子の読み手様がいらっしゃるかもしれないので
今回もイチャイチャシーンをなるべく抜いた内容+どうしようもない場面は概要?を載せます。
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その夜、やはり少し悩んでいるような雰囲気を醸し出していたマクス様は、私を膝に乗せて抱き締めながらも心ここにあらずといった様子だった。私は、気になっていた、先程見たものについて尋ねる。
「昼間の、あのパイプの件ですけれども」
「ああ、匂いが不快だったか。すまない、あなたが嫌だと言うならもう吸わないから――」
「あれは、人間にとっては無害だという話ですか? それとも、エルフにも害はないのですか?」
コレウスが良い顔をしないということは、完全に問題のないものではないということではないだろうか。
「ん? エルフであっても害はないな。人工精霊のアミカも大丈夫だ。他の種族……メニミやアッシュがどうかは知らない……ということは、彼らが今ここに滞在している以上、あれはやはりやめた方が良いな」
もうしない、と言うマクス様に、結局どういうものだったのかを問い質す。例え無害だったとしても、効果によってはあまり好ましくないものなのかもしれない。
彼には、健康で長生きしてほしい。単純に、それだけの気持ちだった。
「あなたは……」
少し言葉に詰まったマクス様は「ん、まあ好ましくはないかもしれないな」苦笑いで身体を起こす。
あれは、組み合わせ方によっては酩酊するような効果がある薬草で、魔法では取り除けない類の呪いなどによる痛みや苦しみを軽減させるものとして利用されるらしい。基本的には安全だとはいうものの、多少の依存性があるとか。
「ここ最近は、使っていなかったんだ。しかし、今日はあまりに気が滅入る話を聞いてしまって、どうしようもなくなってしまって、だから」
常用していたわけではないという言葉は、彼からあの香りがしたことがなかったことを考えても本当なのだろう。少し前、5年ほど前からは使っていないと彼は話した。
――それ以前は、そんなにも憂鬱になるようなことが多かったの?
私に話したくないような過去があるというのはわかっている。私たちよりもずっと長く生きる種族なのだ。これまでの長い人生の中にも、いろいろなことがあったのだろう。女性関係でも苦労していたようなことは聞いている。あのようなものに頼りたくなる日もあった、と言われたら、その時自分が隣にいられなかったことを悔しく思う。
――幼女に寄り添われても、困ったでしょうけど。
年齢差を考えれば、そういうことになる。
なんとも言いようがなくなってしまった私に、マクス様は困ったような笑みを浮かべた。
「いや、現実逃避でしかなかったな。そんなことしても、どうしようもないのに」
すでに契約済みということは、満場一致で、マクス様も反対することなく迎え入れられた人ということだ。新しく魔導師の塔に迎え入れる魔導師ひとりが、そんなにも彼を煩わせるものだろうか。
「まだ話せない内容なのだとは思うので、相談してくださいとは言えません」
「うん、そう言ってくれる気持ちは有難いが、まだ話せない」
「わかってます。だから、無理に聞き出すつもりはありません。でも、あなたが辛そうにしていらっしゃるのを見るのは、私も辛いのです」
正直に告げれば、すまない、と言った彼は私を抱き寄せる。
「前も言われたな。あなたを信用していないわけでも、頼りないと思っているわけでもないんだ。それだけは理解してほしい。私はあなたを信頼しているし、頼りにもしている。この言葉は、嘘ではない」
理解はしているが、それと心の動きは違う。どうにもうまく折り合いがつかない。
「私、誰かに恋をして、愛するという経験が初めてなので、踏み込みすぎているのかもしれませんね。自分とマクス様の境界が曖昧というのは、とても良くないことだとわかっているのに。でも、マクス様が苦しそうにしていらっしゃるのを見ると――」
「私も、ビーが辛そうなのは嫌だよ。力になれるなら、いくらでもなってやりたいと思っている。だから、あなたの気持ちはわかる」
「……そうやって甘やかさないでください。こんな子供みたいなわがままを言っているようでは、あなたの妻だなんて胸を張って言えなくなってしまうのに」
「そんなことはないよ。どんなあなたであっても愛してるよ」
反省する私を慰めてくれているのだろうけれど、これでは子供扱いされているようだ。少し不貞腐れた私は彼の肩に頭を預ける。そんな態度もあまりに子供っぽくて、自分で自分が嫌になる。
「こんな私を甘やかしてはいけません」
じゃあどうすれば? と笑うマクス様の表情は、少し明るくなったようにも見えた。
――― がっつり省略ここから ―――
話しているうちに妙な空気になってしまい、誤魔化すように
「そうだわマクス様。変なもので酔うくらいなら、私の相手をしてくださいませ」
と言えば、ベアトリスの言葉を自分に都合のいい方向に解釈したマクシミリアンは彼女の首筋に所有の痕を残す。そんなことをしなくても、自分はあなたの妻です、という彼女に「これを見るたびに、ビーは私のものだと安心してしまう。私こそ、子供のようだな」と苦笑いするマクシミリアン。
「子供はこんなことしませんし、それに、そんなもの付けなくなって、私はマクス様のものですのに」
「わかってはいるが、見せびらかしたい」
そんなことを言い出す彼に、誰かが私を見たら見たで怒るのに、とベアトリスはちょっとやり返してみる。
「それとこれは別問題だ。見せつけたいが、見られたくない。あなたが私のものであることに羨望の眼差しを向けられるのは良いが、ビーを下心のこもった目で見られるのは許しがたいんだ、私は」
複雑そうな表情を浮かべたマクシミリアンを愛らしく思ったベアトリスは、つい吹き出すのだった。