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本作の宗教観による、登場人物の生活習慣

先ほど投稿した「バルカン・クライシス」についてのノートとは分けます。

「冰の瞳」の序盤では、コソボ紛争がストーリーの主軸になっています。
このコソボ紛争で対立していたセルビア人とアルバニア人は、信仰が異なっているのは、皆さんご存じと思います。

1話目にも書きましたが、セルビア人はキリスト教の中でも正教を信仰していますので、当然コヴァーチも敬虔な正教徒です。父の形見である、八端十字架の首飾りを忘ず身に着けています。正教徒のコヴァーチ(軍を退役しプラハに帰って来てから)は、意外につつましい生活をしています。PMSCのエージェントとして有能な彼は、危険性の高い依頼を受けることが多く、報酬もたっぷりもらってます。

ところが、物欲はあまり強くなく、携帯はいまだにガラケー(通話できればいいという価値観)。個人のパソコンは所有しておらず、会社で支給されている物を使用するのみ。しかしパソコンオンチという訳ではなく、タッチタイピングも基本操作も普通にできます。単に興味がないだけです。職人気質でアナログ派。いつも持ち歩いているのは、財布、革表紙の丈夫な手帳(亡くなった家族の写真を入れている)と万年筆、携帯電話、ハンドタオルかハンカチ、口臭予防の歯磨きセット、それから銃かナイフ(勿論警察に見つかったらマズイですから、隠し持ってます)。

食生活も特に贅沢ではなく、普通の安食堂や屋台を利用したり、社内で誰か(主に料理上手なエミーリオとタケ。海知が加わってから海知の料理メイン)が作ってくれた料理を食べている。料理の腕前だけは壊滅的だという自覚があり、自炊はしません。住んでいるところも、プラハ市内で新市街の一般的な集合住宅の一室。本人は忙しいので、多めに家賃を払い、大家さん(優しいおばあちゃん)に掃除をお願いしています。
移動手段は地下鉄、トラム、バスなど、公共の交通機関。車やバイクの運転はできますが、自分の車やバイクは持っていません。車で移動する必要がある時は、会社の車を借ります。

そんな彼がお金をかけるのは、楽器の手入れと武器、服、靴。服と靴に関しては、ブランドものではなく、腕のいい職人に上等な素材で作ってもらうためです。なぜそんな事が必要なのかと言いますと、コヴァーチは脚が長く、既製品では脚の丈が足りないからです。上半身もスタイルの良さに合わせてもらうため、どうしてもオーダーメイドで作る必要があります。
一度エミーリオのマウンティングで、高級ブランドのブディックに連れていかれたものの、どれもサイズが合わず「高級ブランドのクセに俺が着られる服がない。俺の好みではない。」と言い捨てて勝手に店を出て行ったこともあります。
服装は襟のついたシャツに、品の良いベストとスラックスがメイン。タイやリボン、スカーフも必ず結びます。ドラガンの教育の賜物で、ラフな服装やカジュアルな服装はほとんどしません。シャツは必ず長袖で、夏の暑い日でも長袖です。理由として、入れ墨を見られたくないから。左肩甲骨から肩上部、鎖骨を通って、左上腕から左肘までの範囲に、八端十字架と正教の祈りの言葉が入っています。

また、狙った女性を口説く為の交際費もかなりかけます。コヴァーチの恋愛観は堅く、遊びの恋愛はしません。口説く相手に対してはいつも真剣で、必ず結婚前提。しかしコヴァーチが好きになる女性は、皆素朴で平凡な外見の、お堅い家柄の女性たち。PMSCのエージェントなどという893か5910と同一視される危険な職業の男に、大事な娘を嫁がせる一般家庭の親はいませんし、モデルや映画俳優並の容姿を持つコヴァーチが、平凡な容姿の平凡な女性に真剣交際を申し込む、なんて結婚詐欺師に見られてしまうのは当たり前。今のところ全部、相手側の親の反対でフラれています。その代わり、コヴァーチの好みではない、俗物なお色気美女や、資産家の令嬢などはいくらでも寄ってくるので、追い払うのに忙しい(笑)。羨ましい事ですねーハナホジ。
では性欲はどう処理しているのか?という話になりますが、相手の女性といい雰囲気になれば、勿論関係を持ちます(でもその後相手ご両親から反対されて泣く泣く別れる)。行きずりの相手と一夜だけとか、女性を買うのには抵抗があり、相手がいない時は当然自分で処理です(もう少ししたら、コヴァーチが女を知る描写が出てきます)
コヴァーチに言い寄ってくるのが、知的な美女だったらどうなるのか?答えは友達になります。知性に惹かれて人間的敬意を覚え、交友関係を持ちはしますが、美女だという外見で恋人候補からも妻候補からも対象外。ミロシェヴィッチ家の遺伝は、美男美女と結婚すると、子供が早死にしてしまうため、相手の外見が地味で平凡である、というのは必須条件なのです。言い寄ってませんが、友達になった美女は、ロドリゴの妻・ロッシーオ(彼女は人格者で元看護士なので、医療の話題でよく話す)と、後々エミーリオの妻になるクロエという同業他社のベルギー系オーストラリア人(海知の紹介。元オーストラリア海軍軍曹。継母が日本人なので少し日本語が話せ、父は亡くなったものの継母と弟と仲良し)。


他には、ロシア人であるイゴールも正教徒です。イゴールは社長であるため、公的にはある程度一般的社会人と同じ生活をしていますが、プライベートはコヴァーチとあまり変わりません。ビジネスに必要なパソコンやスマホ等は、当然持ってますよ!
イゴールはバツイチで、女性に対してはガードが堅い。前の奥さんが家庭板に出てくるような、とんでもない汚嫁だった(伝説の92レベル)ため、女性不信に陥ってます。その為、浮いた話はほとんどありません。秘書のジョゼフからは、そんな所をとても心配されています。


コヴァーチやイゴールと正反対の、派手で贅沢な生活をしているのは、カトリックを信仰するエミーリオ。まぁ彼は貴族出身で、お金はいくらでもありますし、仕事上でも優秀で報酬も多いですからね。信仰心は篤いですが、エミーリオの場合は教会側の、自分に都合がいい自分勝手な解釈をしているところがあります。彼の親兄弟は、貴族であっても敬虔なカトリック信者なんですが。
住んでいる所も、高級マンション。車は当然高級車。仕事終わりはいつも誰かしら女性(美女が多いのは当然ですが、美女だけとは限りません、エミーリオのストライクゾーンは非常に広いので、時々周囲がぎょっとする様な相手ともイチャイチャしてることがあります)とディナーデートという腹の立つ野郎です(笑)。カトリックじゃ「汝姦淫するなかれ」って教えてるんじゃないんかーいっ。ケッ羨ましい事ですハナホジ。
持ち物は全て高級なブランド品ですし、美容にかけるお金も惜しみません。ハナホジが捗るほど腹の立つ野郎です(笑)。
料理は趣味なので、ホームパーティーを開くことがよくあり、会社の同僚たちも招待してくれます。コヴァーチに生活レベルの違いを見せつけてドヤりますが、そもそも二人の価値観が違い過ぎるので、全く羨ましがってもらえてません。ハハッザマァ
そんな腹立ち度の高いエミーリオですが、女性に支払いはさせません。エステの最高級コースに誘って、その費用を全部払い、気に入ったら通わせます。勿論その費用も全額エミーリオ持ち。「全ての女性に美しくなる権利がある」とか言ってるところだけは評価してやりましょうかね。(笑)


ロドリゴもエミーリオと同じくカトリックですが、教会が運営する孤児院育ちのロドリゴは堅実な生活で、それでいて生活水準は平均よりやや上を維持しています。妻子もいますしね。日本人が想像する、理想的なパパです。持ち物は実用性を重視し、丈夫で長く使えるものが好み。
家族そろっての食事は、当然食事前のお祈りを欠かしません。エミーリオの贅沢ぶりと、コヴァーチの物欲のなさを心配してる、頼れる優しい兄貴分です。
そんなロドリゴも、あの某アメリカネズミに関することだけは、糸目をつけずお金を使ってしまいます。某アメリカネズミのテーマパークへ行くと決まった時は、妻子と何度も「最も効率よく回れ最大限楽しめるか」家族会議を開き、当日は家族全員、戦場さながらの気合の入れっぷり。


タケは仏教徒。全素(完全ベジタリアン)ではありませんが、蛋素(卵を使わないベジタリアン、乳製品は食べる)。実家が台南の素食自助餐(精進料理のビュッフェスタイル食堂)で、幼いころから店を手伝ってたので、料理が上手です。ただし肉や魚、卵の料理は作ってくれません。信仰心はそれなりに篤いですが、この稼業をしているという事は、アヒンサーには従ってないと言えます。
お金は趣味に使う額が大きいので、その他の生活は基本的にコヴァーチに近いです。
台湾にいる、遠距離恋愛中の彼女に貢いでいる為、同僚からだけでなく、ロドリゴの妻やジョゼフの娘からも、「あの女は腹黒女で、タケの金目当てなんだから別れろ!」と言われても、「こんなに可愛い顔に巨乳でスタイル抜群の私の彼女が、そんな悪女な訳がありませんよ!」と悲しい「オタクの強すぎる思い込み」を炸裂させ、皆を呆れさせています。
余談ですが、タケの性悪な彼女は、超絶美形のコヴァーチに好かれている影薄地味子な海知が気に入らず、マウンティングをしかけブス呼ばわりしましたが、海知が「なんかメスのマウンティングゴリラがウホウホ言ってますね。」と不思議がり、その場にいる全員から「マウンティングに失敗してやんのー!」とか「ゴリラの攻撃!ミス!海知はダメージを受けなかった!」と笑われ、コヴァーチも認める超美人な、元ミスユニバースであるロドリゴ妻から「あんた調子に乗ってるけどね、ブスのまんまなのよ!整形して美人になったつもりでしょうけど、ブスだった頃と根性が変わってないんじゃないの!?」とトドメをさされ、最終的にタケと別れます(笑)。


海知も仏教徒ですが、信仰心は薄いので、肉も魚も食べ放題。というより、海知は「鬼滅の刃」の甘露寺さんと同じ「ミオスタチン変性」なので、食べる量がとにかく多いです。なのでエンゲル係数が極めて高いです。ただし海知は影薄地味子の宿命通り胸が薄く、周囲の女性が巨乳ばかりなので、そこにだけコンプレックスに感じています。
エステよりリラクゼーション派。服装は動きやすさとTPOを重視。仕事中はシンプルなスーツか、体裁きの邪魔にならない服装。おしゃれに関しては、全くしないわけではないが、あまり重視しません。ドレスコードがある場には和服か、エミーリオが買い与えたドレス(自分には似合わないと思ってますが、実はエミーリオの見立ては正しく、依頼人のエスコートでパーティー会場へ行った時は、影薄地味子が美女より目立ってしまう、という珍事に。この時髪を結ったりメイクしてあげたのもエミーリオ)。

上官であり、武術の達人である実父にあこがれており、実父の様に強くなりたい!と強くなることに余念がない為、休日はせっせとトレーニングをしていますが、社内で海知の相手ができる者がいませんので、ナイフの達人コヴァーチに本物のナイフを持たせて「本気で刺しに来てください!」とトレーニングに無理やり付き合わせたり、エミーリオやロゴリゴに実弾を撃たせて「蜂の巣にするつもりでお願いします!」無理やりトレーニングに付き合わせ、タケに無限投げられ役を無理やり付き合わせる、はっきり言ってバケモノofバケモノ。

性格はおとなしい方なので、トレーニングや依頼遂行以外では礼儀正しく接しますし、同僚達を弱いとは全く思っておらず、むしろ自分に付き合える優秀なエージェントである、と評価しています。自分が特別なのだという自覚は、きちんともっています。
恋愛に関しては奥手で鈍いので、好意を寄せて近づくコヴァーチを「親しい人について回る猫みたいな人。大体こんな綺麗な男性が私の様な地味女を好きになるなんてあり得ないし、勘違いしてはいけない。」と思ってますが、無意識下ではすごく喜んでおり、進展を期待しています。それについてロドリゴは「奥手で鈍い彼女でもわかる様、はっきり好意を伝えないとダメだぞ」とコヴァーチに言ってます。


最後に、社長秘書のジョゼフはプロテスタント。信仰の度合いは、日常生活に支障をきたさない程度でなので、海知と同じく信仰心は薄め。信仰より効率を重視するため、無宗教に見えます。
上位エリートさながらの洗練された生活。生活の80%は仕事。20%は可愛い娘。娘の教育の為には、金を惜しみません。天才児の娘には、高等教育を好きなだけ受けさせています。ただし情操教育の一環で受けさせてるピアノとバイオリンだけは、娘の希望もあってコヴァーチから教わってます。コヴァーチも恩人であるジョゼフの娘を可愛がっており、大事な愛弟子だと思っています。
元FBIだった為、人間観察も的確で、依頼を受ける時の人員配置には、最もトラブルが少なく成功率が高い組み合わせを、イゴールに進言しています。


スタッフの宗教が違っているので、普通はあまりうまくいかないことが多いかもしれませんが、そこは全員が理性と合理性、整合性でカバーし、互いに助け合っています。

最後になりますが、この作品はイスラム教を否定しているわけではありません。勿論、キリスト教に対してもです。主役が正教徒なので、どうしてもイスラム敵視の描写が多く出てきてしまいますが、作者である私自身は、イスラムの教えも尊重していますよ。だってスミラァァァが好きだから。
私自身は仏教徒ですが、他の宗教に対する偏見は特になく、それぞれが信仰する宗教を大切にすればいいのでは?と考えています。

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